──2024年を振り返ってどうか。マルチプロダクト戦略の中で、人事労務以外の領域にも参入した。
23年ごろからマルチプロダクト戦略を社内外に掲げているが、プロダクトのリリースに関して大きく進捗した1年だった。労務とタレントマネジメントという従来の主戦場に限らず、いろいろな領域に踏み出していくことができた。会社の中では、(SaaS業界における)自分たちのポジションへの認識が変わりつつある。まいていた種が実ってきているとの意味では非常に良かった。
芹澤雅人
代表取締役CEO
──具体的に、どのようにポジションが変化したのか。
24年は情報システム領域に踏み込んだID管理のプロダクトなど、人事労務にとどまらないラインアップを増やした。これにより、人事労務からバックオフィスSaaSへと少しずつ認識が変わってきている。ただ、これはあくまで社内の認識であり、世の中には価値がきちんと浸透しきれていない。おそらく、多くの人にとってSmartHRといえば労務のプロダクトとのイメージが強いので、さらに訴求を強化していかなければならない。
──反省点はあるか。
プロダクトを多くつくった結果、全てのプロダクトが想定のクオリティーを満たしているかというと必ずしもそうではなく、複数並列してプロダクトをつくることの難しさを痛感させられた1年でもあった。加えて、きちんとマーケットに浸透させていくプロセスにおいても、特定の領域のプロダクトだけを売ることと、複数のプロダクトを複合的に売っていくことには大きな違いがあると感じた。
難しさを克服する1年に
──25年に強化するポイントは。
24年はとにかくたくさんプロダクトを増やせた。25年は、一つ一つのプロダクトの質を高めることや、プロダクト同士のシナジーを生むこと、そしてそれらを一連のソリューションとして売っていくことの難しさを克服する1年になるだろう。セールスや開発の体制自体の強化も考えられるが、達成したい目標の共通認識化によって、全社が一丸となれるかどうかが大切になる。
また、AIにも注目している。顧客データは当然センシティブなデータのため、何を活用できるかについては慎重に考えていかなければいけないが、企業内のデータやSmartHRが持っているデータを分析し、業務の効率化や提案などができないかについて模索していきたい。
──今後の抱負を。
バックオフィスを幅広く効率化し、新しい働き方をつくっていく武器が、いよいよそろってきた感覚がある。プロダクトを自社の中でももっと活用して、私たち自身の働き方を効率化していきたい。自社で使ってみるからこそ、顧客に対しても自信を持って提供することができる。