2025年下期は、AIや、それを支える新たなコンピューティング技術の定着と発展に向けた動きが各所で見られた。また、重大なサイバー攻撃事件が重なったことで、企業の成長基盤となるセキュリティーを見直す流れが加速。週刊BCN編集部が注目するニュースを通じて、未来に向けた取り組みの一例を紹介する。
 

富士通と米NVIDIA　AIの社会実装を進める大型協業

　富士通は10月3日、AIエージェントを統合したフルスタックAIインフラストラクチャーの構築を目指し、米NVIDIA（エヌビディア）との戦略的協業を拡大すると発表した。富士通の時田隆仁社長CEOは、▽自律的に進化するAIプラットフォーム▽次世代コンピューティング基盤▽カスタマーエンゲージメント─の三つを構築することに重点を置き、30年までにAIインフラを社会基盤として確立することを目指す方針を示した。エコシステム拡大のため、両社共同でパートナープログラムも立ち上げる。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、「AIによる産業革命はすでに始まっているが、日本における社会実装はまだ進んでいない」としながらも、「日本の才能と産業、革新の精神なら、AIで世界をリードできる」と力を込めた。26年度に開発を計画している量子コンピューターの領域でも「両社の技術を掛け合わせれば、社会への貢献が飛躍的に進むものと確信している」（時田社長）と、期待を込めた。
（10月13日・2078号）
 

キヤノンS＆S　「セキュリティ対策評価」に注目

　サプライチェーンに起因するセキュリティーインシデントを背景に、企業の枠を超えたセキュリティー対策の強化が求められている。しかし、受注企業は取引先ごとに異なる対策水準を要求され、発注側は外部から取引先の対策状況を判断することが難しいという課題がある。こうした課題を解決するため、経済産業省は、満たすべき各企業の対策を提示しながら、対策状況を可視化する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」の構築を進めている。26年10月から本格運用される見通しだ。これに向けて、キヤノンシステムアンドサポート（キヤノンS＆S）は、同評価制度の三つ星（★3）取得を目指す中小企業向けに、支援サービスを26年1月13日から開始する。石井雄太・ITソリューション推進本部インフラソリューション推進部部長は、★3は「企業間取引のサプライチェーンを構成する一員として最低限実装すべき対策」で、中小企業がまず取得を推奨されるレベルと説明した。
（10月27日・2080号）
 

LESとニデック　水冷サーバーで省電力を推進

　レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ（LES）とニデックは10月28日、AIデータセンター（DC）向けに水冷サーバーを共同でプロモーションしていくと発表した。AI活用の拡大でDCにおける消費電力の増大が問題になる中、レノボの水冷サーバーにニデックの冷却装置を組み合わせて消費電力を約40％削減できるとし、サステナビリティーを重視する企業向けに拡販を目指す。協業の第一弾としてニデックのIn Rack型CDU（Coolant Distribution Unit＝冷却液分配ユニット）を活用する。販売はLESが窓口となり、顧客が要望するスペックなどに合わせて、両社が共同で最適な製品を提案する。マーケティングや新規顧客の開拓でも協業する。LESの張磊（チョウ・ライ）社長は、最高性能の水冷サーバーをまずは日本に供給し、アジア、グローバルに展開すると展望した。ニデックは他のサーバーメーカーやデータセンター事業者とも協業を進め、水冷市場での存在感を高めている。
（11月3日・2081号）
 

NECパーソナルコンピュータ　体制変更で法人ビジネス強化

　25年10月14日に「Windows 10」のサポートが終了し、IT業界はPCのリプレース需要への対応に追われたが、事業体制に大きな動きを見せるメーカーがあった。NECパーソナルコンピュータ（NEC PC）は4月、法人向けPCの販売機能をNEC本体から移管され新体制となった。NECと契約していた販売パートナーとはNEC PCが新たに販売店契約を結んで販売網を引き継いだ。その上で、パートナープログラムや販促支援策を用意し、社内でパートナー担当制を敷いて窓口を一本化するなど、「顔の見える営業体制」を確立する。24年11月にノジマによる買収が発表されたVAIOも、今年1月に手続きが完了しノジマ傘下での事業が本格始動している。12月1日には新社長による経営体制の変更も行われ、1996年に当時のソニーがVAIO事業部門を立ち上げたときからのメンバーである、取締役執行役員常務だった糸岡健・社長室・品質保証管掌が執行役員社長に就任した。
（8月11日・2071号）