NECパーソナルコンピュータ（NEC PC）は7月30日、法人向けPCの事業戦略説明会を開いた。NEC本体からの販売機能の移管による、製造と販売の一体化を足掛かりに市場シェアの向上を目指す。販売パートナーの支援や製品力強化を図る。檜山太郎社長は「ユーザーやパートナーの使い勝手、ニーズをしっかり受け止めながら提供していく」と意気込みを語った。
（春菜孝明）
 
　NEC PCが製造した「Mate」や「VersaPro」などの企業向けラインアップは、NEC本体が販売を担ってきた。販売機能をNEC PCに移して4月から新体制となった。執行役員の飯田陽一郎・コマーシャル営業推進本部長は、これまでのセールスやマーケティングについて「（NECにとって法人向けPCは）多くあるポートフォリオの一つだった。PC事業としてやるべき当たり前というところが、なかなか難しかったり、できないこともあったりした」と指摘した。NEC PCでは戦略を練り直し、パートナー経由で拡大のきっかけを得たい考えだ。

　NEC本体と契約していたパートナーとは販売店契約を締結して販売網を引き継いだ。その上でパートナープログラムや販促支援策を用意し、社内でパートナー担当制を敷いて窓口を一本化するなど、「顔の見える営業体制」を確立する。パートナーと協業で進める戦略案件に積極的に投資。バリューチェーンがシンプルになったことで価格の適正化も進める。飯田執行役員は「どこよりも密に、誠実にコミュニケーションさせていただきたい」とパートナー重視の姿勢を打ち出す。

　強みとして、生産施設の米沢事業場（山形県）や修理拠点の群馬事業所を挙げ、顧客に近い距離で需要を満たし、アフターサポートまでカバーする利点も強調。「グローバルなブランドには難しい対応も日本のお客様に向けてやっていきたい」と話した。製品開発では、エッジAIによるデータ処理を強化していく。AIエージェント同士のコミュニケーションによってデータ通信量が増加することを予測し、デバイス側の運用効率を上げる。こうした総合的な取り組みを通してブランドの再強化を図る。

フラッグシップAI PCも発表

　同日、フラッグシップモデルとなるAI PC「VersaPro UltraLite タイプVY」も発表した。重量1キログラム未満で、法人向けモバイルノートとして「世界最長」の駆動時間をうたう。「Copilot＋ PC」のAI機能に加え、バッテリーの劣化を抑えるための充電抑制や、サポートボットアプリ、ミーティングツールなどで独自のAI機能を搭載した。

　同社では個人向けPC事業も担う中、森部浩至・商品企画本部長は「ビジネス向けPCは継続性や安定性を優先して守りの製品づくりだったが、これからは（個人向けと同様に）攻めていく」と意欲を示した。