レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(LES)とニデックは10月28日、AIデータセンター(DC)向けに水冷サーバーを共同でプロモーションしていくと発表した。AI活用の拡大でDCにおける消費電力の増大が問題になる中、レノボの水冷サーバーにニデックの冷却装置を組み合わせて消費電力を約40%削減できるとし、サステナビリティーを重視する企業向けに拡販を目指す。
(堀 茜)
LESは、高計算力のGPUを搭載したAI用途向けのサーバーで、独自技術である最新の次世代型水冷システム「Lenovo Neptune」を搭載した製品の開発・販売に注力している。同社によると、世界中の電力の3%がDCに利用されており、その割合は増え続ける見通し。DCの電力の4割はサーバーの冷却に使われており、水冷技術でより効率的な冷却が可能になれば、電力をコンピューティングに活用することでさらなるAIの発展が見込めるため、水冷サーバーに対する需要は高まっているという。
一方、ニデックは家電や工作機械、自動車など幅広い製品向けにモーターを提供し、サーバー向けには空冷ファンを20年以上手掛けている。近年はAIの需要の高まりを受け、DC向け水冷ソリューションに注力し、さまざまなサーバーメーカー向けに水冷用CDU(Coolant Distribution Unit=冷却液分配装置)を供給。2024年は約7000台の出荷と、CDUメーカーとして世界トップクラスの実績がある。
今回の協業では、第1弾としてニデックのIn Rack型CDUを活用。4Uラックに搭載し、米NVIDIA(エヌビディア)の「B200」や「NVL32」向けに高い冷却能力を実現した。協業による効果として、LESはサーバーのメンテナンス性が向上する点を挙げた。CDUはサーバーに水を送り込む役割を果たし、スーパーコンピューター向けで先行して発展した。冗長性よりもパフォーマンスが優先されてきたが、AI用途のサーバーでは冗長性が求められる。ニデックのCDUは、自動車向けに培った技術などを応用した堅牢性と信頼性の高さがあり、メンテナンスを最小限にし安定稼働が実現できるという。
ニデックの田中裕司・執行役員(左)とLESの張磊社長
同日会見したLESの張磊(チョウ・ライ)社長は「消費電力の課題を解決するには水冷しかない。水冷サーバーを広げるにはエコシステムの構築が最も重要で、AIを活用したいエンタープライズ向けに一緒に技術を届けていきたい」と述べた。ニデック執行役員の田中裕司・小型モータ事業本部副本部長は「レノボの水冷技術の知見に当社の製品を組み合わせることで、DCのエネルギー課題を克服し、持続可能な社会の実現に貢献したい」とした。
販売はLESが窓口となり、顧客が要望するスペックなどに合わせて、両社が共同で最適な製品を提案する。マーケティングや新規顧客の開拓でも協業する。張社長は「まずは日本のお客様に最高性能の水冷サーバーをお届けし、アジアに広げていく。日本の技術をグローバルに展開したい」と展望した。