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<NEC事例特集> セゾン情報システムズ ナレッジを活用し、新しい付加価値を創出

2007/09/17 19:56

週刊BCN 2007年09月17日vol.1203掲載

『HULFT』をソリューションとして提案できる『WebSAM』との連携とは

 ファイル転送ツール市場でデファクトスタンダード(業界標準)として知られている『HULFT』(セゾン情報システムズ)と中小規模システムの効率的な運用管理を実現する『WebSAM System Navigator』(以下、System Navigator)が連携を強化し、『HULFT』障害時の対応方法(ナレッジ)が提供される。障害発生時に対処方法や対処履歴を参照することで、ユーザーのスキルに頼らず、迅速な対処が可能になる。新しいソリューションを提供する両社の活動についてセゾン情報システムズに聞いた。


■オープン化の潮流 異機種間データ連携に注目

 セゾン情報システムズは、1970年、西武流通グループ(当時)の情報処理機能の統合と新しい情報サービス業の創造を目的として設立された西武情報センターを起源とし、情報処理サービス事業、ソフトウェア開発事業を展開してきた。同社が提供している『HULFT(ハルフト)』は企業内のデータ連携はもちろんのこと、企業間でのシステム連携にかかわるソリューションとして利用されており、デファクトスタンダードとして認知されている。

 「1992年、『HULFT』は西武百貨店の販売時点情報管理(POS)システムの刷新に伴い開発されました。当時の西武百貨店は、ミニコンとメインフレームを使ってPOSデータのやり取りをしていましたが、オープン化の流れに伴いUNIXシステムの導入を決めました。そこで、必要となるTCP/IPを使ったデータ連携の仕組みを作ったのがきっかけです」とセゾン情報システムズ・営業本部・HULFT営業部・営業支援課の玉田徹課長は当時を振り返る。

 『HULFT』の初期バージョンが開発された当時、UNIXなどのオープン系システムは登場したばかりで、その後の躍進は想像できない状況ではあったが、セゾン情報システムズは「西武百貨店が採用するのであれば、業務の中で汎用化できるのではないか」(玉田課長)と考え、メインフレーム、UNIX間での双方向通信を実現した『HULFT』V2.0を開発。このバージョンから外販を行うようになった。

 オープン系のシステムは、レガシー環境と同じデータベース(DB)容量、MIPS値でありながら、初期投資の額が全く異なっていた。そのため、多くの企業がオープン系システムの採用を決めていった。いわゆる「オープン化」の潮流である。2000年にはY2K問題などもあり、オープンシステムの採用が進み、企業システムのマルチベンダー化も加速していった。

■信頼性が高くデファクトスタンダードに

 「当時を振り返ると、企業システムのすべてが同一メーカーの機器で統一されていたため、異機種間での“データ連携”という発想そのものがありませんでした。しかし、オープンシステムの登場で、マルチベンダー化が進みました。当社のような“メーカーに依存しない”企業にとって、そこがマーケットでした。『HULFT』は、市場ニーズに応えながらバージョンアップを繰り返し、今では『HULFT6』となっています」(玉田課長)とのことだ。

photo 『HULFT6』は、LAN/WAN接続はもとより、SAN(Storage Area Network)接続、公衆回線接続、インターネット接続など、あらゆるネットワーク環境において、メインフレーム、ミッドレンジ・コンピュータ、UNIX、Linux、Windowsといった複数の異なるプラットフォーム間でTCP/IPプロトコルを用いたファイル転送をトリガーとし、自動でシステム間連携を行うソフトウェア。

 企業内・企業間のあらゆる業務システムに組み込み、データ連携を自動化する信頼性の高い集配信システムとして、流通業、製造業、情報・通信業、サービス業、金融業、公共/団体/公企業、運輸業、建設業など5300社を超える企業が導入している。ファイルをインターフェースとし、お互いのシステムに依存しないシステム構築が可能で、確実な送達確認・暗号化機能により、安全・確実なデータ転送を実現している。

 「『HULFT』は、“こうすれば、工数が減るのではないか”“こういった機能が欲しい”といったお客様の声や技術的なトレンドを取り入れ、機能強化を続けてきました。運用に関するノウハウも蓄積されています」と、セゾン情報システムズ・HULFT開発センター・商品開発一部・プロダクト推進課の木幡匡行氏は語る。

 一般論として、外資系のソフトウェアの場合は日本国内のニーズが伝わりにくく、製品に反映されたとしても、それまでに膨大な時間がかかる。国内ベンダーの場合、国内ニーズにすばやく応えることができ、より現場で運用しやすいソリューションを提供できる。顧客の声を聞き、機能強化を繰り返している『HULFT』は、この好例と言えるだろう。

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■運用・管理ニーズに応えるWebSAMシリーズ

 現場では「運用・管理」という部分がフォーカスされ始めている。導入コストをいくら低く抑えられても、運用・管理に工数やコストがかかってしまっては、そのシステムは破たんしてしまう。また、運用に時間をとられてしまっては、本来やるべき業務も滞り、生産性の低下を招くだろう。そこで、効率的な運用管理を実現するソリューションに注目が集まっている。

 NECでは、『WebSAM』ブランドとしてサーバの単体管理を行う『WebSAMオフィス』からマルチプラットフォーム環境の統合管理まで対応する幅広いラインアップを用意しており、あらゆる顧客に最適なソリューションを提供している。

 また、IDC Japanの調査(出典:「国内インフラストラクチャマネージメントソフトウェア市場 2006年の分析と2007年~2011年の予測」(J7310108)2007年7月)によると、運用管理ツール市場の2005年から2006年の成長率が8.4%というなか、NECの成長率は10.4%の高成長率を保ち、シェアを拡大している。

■中小規模システムに『System Navigator』が最適

 『WebSAM』シリーズの中で、中小規模システムの効率的な運用管理には『System Navigator』が利用される。『System Navigator』は手軽に導入・運用できるオールインワン製品で、1台から数十台規模のサーバを統合監視できる。業務ごとに構築したサーバのログや動作状況を一元管理できるようになり、サーバごとの対応要員や運用工数を大幅に削減し、システム全体の運用コストを大幅に下げる。障害の発生や予兆を検出するほか、障害発生箇所を特定できるため、ユーザーに的確な復旧情報を伝えることができる。また「ナレッジ」を活用することで、ITの専門知識やノウハウを共有・活用でき、障害発生時には「何が起きたか」という監視メッセージを表示するだけではなく、「何をすべきか」までサポートし、障害への迅速な対処・復旧を可能とする。

 「通常の運用監視ソフトでは、何か問題があったときに検出することがメインとなりますが、『WebSAM』は“何をすべきか”という部分に着目しているため、ナレッジという仕組みを持たせています」とNEC第一システムソフトウェア事業部(マーケティング・販促グループ) 兼 ITプラットフォーム販売推進本部・ソフトウェア販売促進統括部の藤田朋生シニアマネージャーは語る。『System Navigator』は、「ナレッジ」による復旧支援により、従来の運用ツールの枠組みを超えた統合運用管理を実現している。

■『WebSAM WORKS』を使い、連携をすすめる両社

 「NEC様との取り組みとして『HULFT』に障害が発生したときに、対処方法や対処履歴を参照する“標準ナレッジ”を共同開発しています。エラーコードではわからない対処方法まで表示されるため、新しい付加価値として高く評価しています。提供開始はWindows版が9月末、UNIX/Linux版は、11月末を予定しております。また、『HULFT』監視テンプレートも合わせて提供することで、既存の環境に簡単にアドオンすることが可能です」(木幡氏)。

 システムインテグレーターにとって、ファイル転送ツールや運用監視ツールは、企業システムを構築する上で必要な部品として利用される。そのためハンドリングしやすいツールを組み合わせ、システム構築されるケースが多い。『WebSAM』-『HULFT』のように連携し、新しい付加価値を提供することで、エンドユーザーのニーズに応えることはもちろん、システムインテグレーターに対しての訴求力も増すことになる。「『HULFT』と運用監視ツールの組み合わせでご利用いただいている事例は、たくさんあります。その中でも“ナレッジ”を活用できる『WebSAM』は、非常に画期的だと思います。現場では、エラーコードを知りたいのではなく、一刻も早くシステムを復旧できることが何よりも重要なのです。また、『WebSAM』との連携で『HULFT』をソリューションカットでお届けできるようにもなります。この連携には、非常に期待しています」(玉田課長)とのことだ。

 『WebSAM』は、セゾン情報システムズを始めとする26社31製品(2007年8月時点)との連携を実現しており『WebSAM WORKS』というパートナー制度の中で新しい展開を行っている。『WebSAM WORKS』により、ISV/IHV各社の製品やソリューションと『WebSAM』の連携が実現し、新しいソリューションとしてマーケットニーズに応えている。今後、NECとセゾン情報システムズは、共催セミナーなどのプロモーションを共同で行い、ユーザーへの認知を獲得していく予定だ。パートナーと共に運用管理市場のすそ野を広げ、新しい付加価値を提供しているNECの展開への注目も高い。新しい運用監視市場を創出している活動に期待が高まっている。(週刊BCN 2007年9月17日号掲載)
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外部リンク

WebSAM=http://www.nec.co.jp/WebSAM/