Special Issue

<SaaS/ASP特集>多様化するビジネス環境に対応

2008/04/21 19:56

週刊BCN 2008年04月21日vol.1232掲載

 ビジネス環境が多様化し、モバイルワーク(テレワーク)へのニーズが高まっている。NTTPCコミュニケーションズは携帯電話やPDA、社外PCなどから、さまざまな業務アプリケーションが利用できる『Master'sONEモバイルオフィスサービス』を提供。セキュアな環境で生産性を向上させるSaaS(Software as a Service)を展開する。SaaSによってモバイルワークを支援する同社の取り組みについて話を聞いた。

NTTPCコミュニケーションズ
高セキュリティと利便性を備えた
モバイルオフィスサービス

社外からのアクセスも高いセキュリティ環境で

 NTTPCコミュニケーションズでは、堅牢なネットワークの構築・運用からクライアント端末まで、一連のビジネスソリューションをワンストップで行う『Master'sONE』を提供している。なかでも、高まるモバイルワークのニーズに応えたのが『Master'sONEモバイルオフィスサービス』。携帯電話やPDA、社外のPCなどから、さまざまな業務アプリケーションが利用できるサービスだ。「SaaSは、システム構築に時間がかからず低コストで利用できます。当社が特に力を入れているのは、セキュリティの部分。お客様のデータを預かり、安心してご利用いただける環境を作り上げることが必要です」と語るのは、ネットワーク事業部ビジネスソリューション部の齋藤壽勝部長。

 高いセキュリティを確保するため、社外からのアクセスは「モバイルオフィスゲートウェイ」を採用。「モバイルオフィスゲートウェイ」は、携帯電話機の機体番号による認証を行う(ドコモのみ)「個体端末認証」、PC・携帯電話からのアクセスに対応したトークン(ハードウェア)を利用しない「ワンタイムパスワード」、ユーザー単位またはグループ単位にサーバーへのアクセス権限が設定できる「アクセス制御」、会社のメールアドレスにメールが着信したことを知らせる「メール通知」などによって、社外からのアクセスもセキュアな環境で利用できる。

  「特に好評なのは“メール通知”です。最近は、情報漏えいという観点から、会社のメールを携帯電話に転送することを禁じる企業もあります。“メール通知”はあらかじめ設定した条件に合う“メールを着信した”という知らせだけが自分の携帯電話に届くので、メールの内容自体は端末に残らず、情報漏えいの問題もありません。メールの確認はWebメールで行うだけです」。また、今後は「“モバイルオフィスゲートウェイ”の新しいサービスとして、NGN対応の機能を盛り込む予定。早ければ、9月までには提供したい」とのことだ。

作業効率を向上させるSaaS

 「モバイルオフィスゲートウェイ」と組み合わせて利用するのが「SaaS」だ。サーバーの構築から運用・管理まで自社で行う必要がないため、コスト削減や運用にかかる負荷が軽減できる。また、「SaaS」はインターネット網ではなくVPN経由で接続するため、セキュアな環境で利用可能だ。

 「SaaS」の機能では「グループウェア」「Web会議」「営業日報(SFA・CRM)」などが用意されている。「グループウェア」のファイル共有機能を利用することで、セキュリティレベルの高い環境でファイル交換・転送を行うことができ、情報漏えい対策として効果が高い。そのほか、共有フォルダ内のファイルをPDFに自動変換して改ざんすることを防止する「PDF変換」、会議に召集した場合にメール通知する「会議召集(スケジューラ)」も備えている。

 また、「Web会議」は、アプリケーションをインストールする必要がなく、高水準の音声と画像ですべての参加者が1つのデータを共有しながら各々のデスクトップ上から参照、編集することが可能だ。会議後はクライアントにファイルを残さないため、セキュリティも高い。「当社も拠点間で商品説明会を行うときはこのWeb会議を利用しています。非常に便利な機能ですね」。

営業記録を把握するビジネス向けSNS

 ビジネス環境が多様化し「社外から業務を行いたい」というモバイルワークの需要が増えている。そこで、営業活動を把握し効率よくビジネス活動を進めるため、同社は「営業日報」を展開している。「営業日報」は、各営業担当者がWebベースで日々の日報を入力することで、訪問した顧客先を時系列で管理できるツール。検索機能によって、顧客との商談履歴も参照できる。また、案件情報を管理することは、営業活動を進める上で重要になる。「営業日報」では、案件情報を自動集計することで一元的に管理。受注確度別など、案件の見込み管理も可能だ。そのため「当社で“営業日報”を導入したところ、以前案件のみを管理していた場合に比べ、実際の案件は営業担当の報告よりも多いことが分かりました」という。

 そのほか、日報閲覧者はコメントを書き込むことができ、情報共有を容易にする。営業日報を見た閲覧者はリスト表示されるため、「誰がいつ見たのか」ということが明確になる。これらについて、齋藤部長は「顧客をキーにしたビジネス向けSNS」と表現する。

 「SNSもブログも、見てくれる人がいないと書く楽しみがありませんよね。これとまったく同じことが“営業日報”でも言えます。営業担当のモチベーションを向上させるとともに、社内の情報共有によって、チームセリングを促進させる。営業は1人でも、バックヤード全体で情報共有することで、顧客に対してどうやって売り込んでいくかというアイデアが集まります」。

 「営業日報」は、携帯電話、PDA、PCというそれぞれの機器に合わせた画面を用意している。外出先で「営業日報」を閲覧したり、社内に戻ってPCで詳しく書き込むなど、利用シーンに応じた使い方が可能だ。場所を選ばず利用できるため「私自身、当社の営業担当が書いている日報を携帯電話でチェックしています。電車内でもチェックできるので、課題があれば迅速に対応できます」とのことだ。

内部統制も視野に入れた新たな取り組み

 今後同社では、新たな「SaaS」として、eファイリングサービスと社内のワークフロー・決裁サービスを提供する予定だ。

 「内部統制への対応が企業課題となっているなか、監査の際にすぐに書類を提出できないのが実情だと思います。『eファイリングサービス』は、ファイリングした書類、イメージデータなどを簡単に検索できるだけでなく、書類の世代管理やアクセス管理などができ、監査に対応できるファイリングサービスです」と齋藤部長。提供開始は、第1-2四半期を予定している。そして、社内のワークフロー・決裁サービスについては「出張旅費の計算など、人事・総務関係の業務サービスを提供します。お客様のなかには紙ベースで業務を行っている場合も少なくないと思うので、ニーズは高いと考えています」とのことだ。

 高いセキュリティと利便性を備えた『Master'sONEモバイルオフィスサービス』。モバイルワークが普及することで、より注目が集まるのは間違いないだろう。新しい取り組みとともに、同社の今後の展開に目が離せない。

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