ビジネス用途では、これまでモノクロレーザープリンタがメインだった。モノクロレーザープリンタは、高速印刷が可能で、耐久性が高いという特長がある。また比較的小型なので、設置場所を選ばず導入できる点が魅力だった。基幹システムからの情報はモノクロレーザープリンタで印刷されることが多く、「帳票」などはほとんどレーザープリンタで出力されてきた。現在、プリントニーズが多様化しているが、そのニーズに応えた高付加価値のプリンタが拡充され、話題になっている。

新たな提案を実現する 製品・ソリューションを拡充

市場のすそ野を広げるビジネスインクジェットの台頭

 オフィスには、上長の決裁待ちの文書や請求書などの帳票、顧客への提案資料など、さまざまな「紙」があふれている。社内外を問わず、ビジネスでのやり取りに「紙」を使うケースは非常に多い。

 業務効率や生産性の向上という観点から、情報そのものが「紙」からデジタルデータに置き換わる部分が増えている。また、「ペーパーレス」を意識する企業も増え、一見「紙」のニーズは減っているようにも見えるが、ふたをあけてみると、まだまだ情報伝達手段として「紙」を使っている企業は多いようだ。「紙」を使ったビジネス自体は、今後も消えることはないだろう。

 情報システムにあるデータを「紙」に印刷するのが、「プリンタ」の役割だ。実際、情報システムからの情報を「紙」に出力し、活用している企業は非常に多い。最近では、オフィスのカラーニーズが顕著化しており、カラープリンタやカラー印刷できるMFPが拡充されている。さらに、薬袋や薬事情報印刷、流通系などの業務現場などでも、カラープリンタの導入が進んでいる。プリンタメーカーに話を聞くと、コンサルティングを含めた提案が実を結ぶケースが非常に多いとのことだ。

 これはつまり、ユーザーがプリンタを求めているのではなく、プリンタを含めたソリューションを求めているということの現れである。そこで、付加価値の高いプリンタが注目を集めているというのだ。

 最近のトレンドとしては、「ビジネスインクジェットプリンタ」が市場でも注目を集めているようだ。その理由はいくつかあるが、最も注目されているのは、本体サイズがコンパクトであるため、設置面積が少なくてすむという点だろう。このサイズであれば、窓口業務や流通業のバックヤードなどでも設置できることから、新しい市場開拓にも貢献している。また、基本性能が向上していて、ページプリンタと同等の高速印刷を実現した機種も提供されるようになったことも大きい。ページプリンタ同様の生産性を実現しはじめたため、ビジネスに使えるインクジェットプリンタとして認知されるようになったのだろう。

 また、インクジェットプリンタは、その名前からもわかるように「インク」を用紙に吹き付ける印刷方式であるため、チラシや厚紙印刷、薬袋といったようなページプリンタでは対応が難しいメディアにも柔軟に対応できる。このように、ビジネスインクジェットプリンタを活用することで、顧客への提案の幅を広げ、プリンタ市場のすそ野を広げることにもなる。

 トナーを定着させるため発熱を余儀なくされるページプリンタと比べると、ビジネスインクジェットプリンタの場合、消費電力を数分の1から数十分の1程度まで低減できるというメリットもある。現在、IT業界は「グリーンIT」がキーワードとなっている。先日のサミットでも話題になったが、地球環境保全という観点から「省エネ」「グリーンIT」へ取り組まなければならない状況となりつつある。実際、東京都などは大規模事業所を中心に二酸化炭素の排出量削減を義務づけはじめている。「グリーンIT」は、地球環境保全のために不可避である。現在でも大企業や官公庁などでは取り組みが進んでおり、機器のリプレース時などには、省エネ対応の製品が活用されるケースが増えてきている。その中でも、「ビジネスインクジェットプリンタ」の訴求力は大きい。もちろん、用途によってはページプリンタのほうが適している場合もあるだろうが、オフィスでの利用なら、ビジネスインクジェットプリンタでも十分活用できる。また、メディアへの対応力など、ビジネスインクジェットプリンタならではのメリットも大きい。

止まらない「紙」からの情報漏えい
セキュリティニーズにも応える


 もう1つのキーワードが「セキュリティ」だ。「紙」には、顧客情報や機密情報など、企業のさまざまな情報が出力される。これを持ち運ぶ際、印刷された紙から情報が漏えいするケースは非常に多い。実際、情報漏えい件数の半数近くが「紙」によるものだ。

 そこで、「紙」のセキュリティを高めたいというニーズが高まり、この声に応えるプリンティングソリューションが拡充されている。例えば、書類の放置や盗み見を防止するため、非接触ICカードやパスワードなどで「認証」し印刷する「認証印刷」が人気だ。この方法は、これまでの印刷のワークフローを変えることなく、印刷時のセキュリティを高めることができる。

 また、印刷データを守るためのソリューションも拡充されている。印刷データはジョブとしてプリンタに送られるが、ここからの情報漏えいを防止するため、印刷ジョブを暗号化してネットワーク上で転送するというソリューションがある。また、プリンタ側でスプールするときにも「暗号化」するソリューションもあり、万が一、プリンタに内蔵されているハードディスクを盗まれたとしても、情報が漏えいしないような工夫を施しているものもある。

 これまで、このような高度なセキュリティ機能は、ハイエンドマシンに搭載されることが多かった。そのため、センタープリンタでセキュアな印刷を実現しても、部門プリンタなどのセキュリティを高めることができないというジレンマに陥っていた企業も少なくない。最近、高度なセキュリティ機能でも部門プリンタなどで導入できるクラスの製品に搭載されはじめており、企業のプリンティング全体でセキュリティを向上させることができるようになった。プリンタの最適配置という提案に加え、すべてのプリンタでセキュアな印刷環境を構築できるようになれば、これまで以上に提案の幅を広げることができる。

 プリンタは、実は差別化が難しい商材である。ユーザーにとっては、必要な印刷ができれば製品の指定は特にはしないからだ。しかし、ここで紹介したような付加価値の高いプリンタが登場することにより、製品の差別化が明確になり、ユーザーからの指名による導入も増えていくことは容易に考えられる。

 今後のプリンタ市場において、ますます付加価値プリンタが拡充されていくことだろう。それは、ユーザーにとっても、また市場にとってもメリットが多い。プリンタ市場の活性化を後押しする付加価値プリンタは、大きなビジネスチャンスを創出している。

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