Special Issue

中堅、中小企業のネットワークセキュリティを強化 新たなビジネスチャンスを創出

2008/09/29 19:55

週刊BCN 2008年09月29日vol.1253掲載

 企業におけるセキュリティの脅威が大きな課題となる中、Webアクセスを管理するURLフィルタリングが注目を浴びている。そこで、2007年からルータ組み込み型フィルタリングサービスを開始し、9月からセンチュリー・システムズの中小規模法人向けビジネスルータに対応したフィルタリングサービスの販売を開始したネットスターの営業マーケティング本部サービス事業推進部課長高岸英明氏と、ルータメーカーおよびフィルタリングサービスの代理店であるセンチュリー・システムズの営業部グループマネージャー川嶋進司氏に、製品サービスの有効性、販売にかける思いを伺った。

ルータにURLフィルタリング機能を搭載

高精度のURLリストが高評価「サイトアンパイア」を提供

 センチュリー・システムズ製の中堅・中小企業向けルータ「FutureNet XR-540/C」に対応したネットスターの「サイトアンパイア」は、ルータ上で動作するフィルタリングサービスだ。

 ネットスターのサービス事業推進部・高岸英明課長は、「大企業では導入が進んでいるWebアクセス管理ですが、中堅・中小企業では、担当者の手間、運用コストへの懸念からまだ一部でしか対応がなされていません。しかし、最近は閲覧だけでウイルス感染してしまったり、サイト経由で情報漏えいを起こす事例も見られます。こうした課題を解決するために、中堅・中小企業でも活用できるフィルタリングサービスの開発、提供に取り組みました」と、サービスのポイントを挙げる。

 同社は2001年の設立以来、フィルタリングに特化して事業を展開してきた。世界中のWebサイトを探索し、リスクコンテンツを分類した同社のデータベースは、現在ではすべての国内携帯キャリアで採用されるなど、法人市場で40%以上のシェアを獲得している。

 そのURLフィルタリングのナンバーワンサービスの原動力となっているのが高精度のURLリストだ。国内最大級のリサーチセンターを設け、東京、仙台、中国で専任のリサーチャーが365日URLを収集。自動クローラによる収集だけでなく、多彩なデータリソースで問題化しているサイトを登録し、収集したURLは人による目視確認でカテゴリ分類、インデックス登録を行っている。こうしたノウハウを元に、同社はルータ組み込み型フィルタリングサービス「サイトアンパイア」の提供を2007年から開始した。

 「専用サーバを構築する従来のWebアクセス管理に対し、サイトアンパイアは、ルータ上で稼働するサービスなのでゲートウェイサーバの導入にかかる手間、運用コストを大幅に削減できます。ルータ1台に1ライセンスを付与し、ルータに接続する全端末にフィルタリング機能を提供します」と、高岸氏は導入効果を強調する。

 サイトアンパイアは、端末からのURLリクエストをネットスターのURLリストに問い合わせ、接続要求先のカテゴリ番号をルータに返す。返ってきた番号と設定したカテゴリ番号との照会により接続の可否を判断する。シンプルな仕組みのため、ネットワークにも負荷が少なく、71の詳細なカテゴリ分類で企業ごとに柔軟なポリシー設定が行える。さらに、業務形態にあわせ6つのデフォルトルール(企業、官公庁、大学、高校、中学校、小学校)を用意しており、簡単にルール設定が可能だ。ほかにもホワイトリスト/ブラックリスト設定やIPアドレスの直接指定など多彩な機能を備えている。

センチュリー製ルータに対応 機能拡張に強力アイテムを追加

クリックで拡大 サイトアンパイアは、公共施設や企業、学校、ネットカフェなどに多数導入されてきたが、これまではヤマハ製ルータ「SRT-100」「RT107e」「RTX1100」「RTX3000」で活用できるサービスだった。しかし、2008年9月、センチュリー・システムズの「FutureNet XR-540/C」に対応した。

 センチュリー・システムズは、TCP/IPやルーティングプロトコルの開発などネットワークに軸足を置き、用途に応じて受託開発、製品提供を行ってきた。その技術力を活かしたオリジナル製品「FutureNet」シリーズは、ルータやLinuxマイクロアプライアンスサーバなど約30アイテムにのぼり、カスタマイズ、OEM供給など企業の要望に応えている。

 営業部・川嶋進司グループマネージャーは、「中小規模向けのFutureNet XR-540/Cは、セキュアな通信環境の構築に向けて、ファイアウォールやIPSec VPNなどの機能を搭載する高機能、高性能ブロードバンドルータです。近年、ルータの機能拡張、UTMの低価格化が進んでいますが、2008年春、攻撃を検知してダイナミックにフィルタリングする『アクティブファイアウォール』機能を実装しました。中小企業でも、セキュリティが今後ますます重要になることから、さらなる機能強化を目指し、ネットスターのURLフィルタリングサービスを導入しました」と、サービス導入の狙いを明かす。

 高岸氏も「実績のあるセンチュリー製ルータにサービスを提供できたことで、これまで開拓できなかった企業にルータと一緒に当社のサービスが使われていくことを期待しています」と、相乗効果に期待を寄せる。

代理店としての販路拡大にも期待

 また、センチュリー・システムズは、今回、サイトアンパイアの一次代理店となった。

 「ルータの機能を他社から購入するケースもありますが、中小企業では選定が難しい問題です。売れるためにはすべて1台で解決できることが重要で、代理店になった理由もそこにあります。当社製品は、一部の直販を除いて、販社やSIerなどを通じて販売されていますが、ルータの販売、保守に加え、サービスのライセンスといった新たなビジネスチャンスが提供されます。初年度はチャレンジでもありますので、まずは年間何案件取れるか、その結果をみて、対応ルータの拡充を検討したいと思います」(川嶋氏)。

 一方、ネットスターの高岸氏も「センチュリー製ルータという選択肢が増え、従来の一次代理店、取扱店とは違った新たな販路を通じて、当社のWebフィルタリングサービスへの思い、重要性が、多くの中小企業に伝わればと思います」と抱負を熱く語る。

 インターネットの活用は不可欠だが、その一方でウイルス、情報漏洩などリスクも増大している。中小企業のWebアクセス管理を実現する製品、サービスの今後の動向に注目だ。
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