Special Issue

<セキュリティソリューション特集>経費を削減しつつ、売り上げの最大化に寄与する提案を

2008/11/12 19:56

週刊BCN 2008年11月10日vol.1259掲載

 生産性を向上させるため、グループウェアを導入する企業は少なくない。新製品の発売が刺激となり、グループウェア市場が活性化しているなか、新たな付加価値として、利便性や生産性を落とさない「セキュリティ」をグループウェアと組み合わせたり、TCOを削減する機能を備えた製品などが登場し、注目を集め始めている。

「生産性の向上とコラボレーション」の基盤となるセキュリティ

グループウェア市場が活性化しセキュリティ課題も表面化

 2008年9月、社内の生産性向上に役立つグループウェア「IBM Lotus Notes/Domino 8」(日本語版)が提供された。「Notes/Domino」は、1989年にファーストバージョンを開発・リリースされて以来、歴史に裏打ちされた信頼と実績を重ね、多くのユーザーに支持されている。08年第2四半期には、新興市場を中心に急成長を遂げた。

 グループウェアは、社内での情報交換や共有をスムーズにし、業務の効率化を実現するソリューションだ。IBMだけではなく、マイクロソフトやサイボウズ、ネオジャパンなどが激しい争いを繰り広げている市場である。

 グループウェアは、たしかに導入の効果は高いが、課題もある。情報共有を進めるためには、情報を容易に扱えるようにしなければならない。しかし、有益な情報がグループウェアに集中すると、その分「情報漏えいリスク」も高くなる。また、ほかの業務アプリケーションと違って社員全員が活用するため、情報へアクセスできる権限を適切に管理・運用する必要がある。つまり、便利になればなるほど強固なセキュリティが必要になるということだ。

 そこで注目されているのが、ID管理基盤の構築だ。例えば、IDを適切に管理していない場合、「なりすまし」による情報漏えいリスクが高まる。企業には多くの業務システムが導入されているが、ユーザーID/パスワードなどで認証しているケースが多い。このユーザーID/パスワードの管理がずさんで、誰もが機密情報にアクセスできる場合、いつ情報漏えい事故が起きてもおかしくない。

 数年前、不正アクセスによって大手通信キャリアの顧客情報を違法に取得し、それと引き換えに金銭を要求する恐喝事件が発生した。このケースでは、数百万件の個人情報が漏えいしてしまい、企業としての信頼が低下したばかりか、多額の賠償金の支払いや、システム強化によるさらなるIT投資を余儀なくされるという結果になった。

 しかし、情報の漏えいを防ごうとするあまり、情報へのアクセスを限定しすぎると、業務効率は極端に落ちる。機密情報の管理を徹底しながらも、可能な限り情報を有効に活用し、業務効率を向上させなければならない。そのための基盤として、ID管理は必須なのだ。

 情報共有を進めたいという市場はすそ野を広げており、小規模企業でのニーズも顕著となってきた。いわゆるSMB市場では、管理者がほかの業務と兼務していることが多い。これまでもニーズはあったものの、情報システムの管理・運用に時間と手間を割くことができないため、最適なソリューションが登場しなかった。しかし最近では、「グループウェア」「コミュニケーション」「ワークレポート」「セキュリティ」「資産管理」など、パソコンとネットワークを有効活用するために必要な機能を網羅し、ワンパッケージで提供するベンダーも登場した。複数のソリューションを導入している場合、それぞれ個別に運用・管理しなければならないが、それらも統合的に管理できるため、運用負荷を大幅に軽減できる。さらに、ソリューションがきちんと稼働するかどうかを検証する必要もない。導入・運用・管理と、個々のフェーズでTCOの削減にも寄与する。このような提案は、市場でも浸透しつつあるようだ。

フィッシング対策は必須「電子署名」が有効な手段

 ネットを介した「コミュニケーション」は、業務効率を向上する重要なキーワードだ。現在は、ビジネス上のコミュニケーションツールとして電子メールが活用されている。取引先や顧客との連絡にも一般的に活用されている。

 その一方で、「フィッシング」などの犯罪行為も横行し始めている。「フィッシング」とは、顧客に「なりすましメール」を送付し、「なりすましサイト」に誘導して不正に個人情報を搾取するという犯罪だ。米国を中心に猛威を振るっているが、国内でもその被害が出始めている。こうした犯罪に巻き込まれないため、電子メールの信頼性を高める「電子署名」に注目が集まっている。電子署名とは、誰がメールを送信したのかを明確にする技術で、一般的なメーラーには「電子署名」に対応しているものが多い。

 「フィッシング対策協議会」が公開している「フィッシング対策ガイドライン」でも金融機関やサービス事業者によるフィッシング対策は急務とされており、「電子署名」の利用を推奨している。最近では、既存環境にあまり手を加えなくても「電子署名」を付加できるソリューションが登場し、手軽に「フィッシング対策」を実現できるようになった。

 最近では世界経済が不安定になりつつあり、企業経営も少なからず影響を受け始めている。今後、効率を上げて無駄を省いていくという企業はより増加すると考えられる。社内の生産性向上とコスト削減を支援するソリューションは、さらに伸長していくはずだ。それらのソリューションを軸としながらも、周辺の市場を開拓すれば、新たなビジネスチャンスが生まれるだろう。

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