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<特集「IT統制とセキュリティ」>「コスト削減」がキーワードに

2009/01/20 19:56

週刊BCN 2009年01月19日vol.1268掲載

クオリティ
さまざまなプラットフォームで活用できるSaaS・ASP型サービス
「スリム化」推進による新たなビジネスチャンス

企業の課題は「コスト」に移行

 これまで「セキュリティ」というキーワードは、常に企業の関心の的であった。さまざまな調査会社のIT投資に関するレポートを見ると、常に「セキュリティ」関連の課題が上位を占めていた。しかしその傾向も、2008年に大きく変化した。「セキュリティ」に代わり、「コスト」面が、より重視されるようになってきたのだ。

 08年は、サブプライムローン問題に端を発する世界経済の混乱が話題となった。米大手証券会社のリーマンブラザーズが破綻したほか、黒字倒産する企業も続出したことは、まだ記憶に新しい。この影響から、多くの企業が自社の経済状態を見直し、「キャッシュフロー」を最重要視するようになった。企業の資産を「もの」ではなく「現金」で持っていなければ不安であるという企業が増えたのだ。業務全体を統制するうえで、「セキュリティ」が非常に重要だという認識については、なにも変わってはいない。しかし、「保険」に例えられるように、事業を展開する上で必ず必要というものではない。企業を存続させるための「コスト」が注目され始めたのは、こうした理由からだ。

 企業は生き残りをかけ、スリム化を推進し始めている。「派遣切り」と言われる非正規労働者の契約打ち切りが社会問題となっているが、これもスリム化のための手段の1つである。この傾向は、しばらく続くだろう。実は、情報システム部門もスリム化の対象となっている。現在、情報システム部門は人に頼っている部分が大きく、そのために社員教育などリソースを投入しているが、そのコストが問題となり始めている。こうしたことから、自社内でリソースを持つことなく必要なサービスだけを利用できるSaaS・ASP型のサービスのニーズが高まっている。

パートナーの協力によりユーザを拡大

 クオリティは、2年ほど前からセキュリティ維持管理「ISM」、セキュアドキュメントサービス「DKS Plus for ASP」などのSaaS・ASP型のサービスエンジンを提供しており、IDC/ISPを通じて、1000社を超える企業が導入している。

 これだけ多くのユーザを獲得している理由は、製品の機能だけではない。実は、ビジネスモデルも工夫されているのだ。多くの場合、SaaS・ASP型のサービスを提供する企業は、直販モデルを採用している。しかしクオリティは、SaaS・ASPのエンジンベンダーと割り切り、ISPなどのパートナー経由でエンドユーザに販売するビジネスモデルを採用している。つまり、従来の製品流通と同様の販路を使っているのだ。その結果、多くのパートナー企業がクオリティ製品に注力し、販売実績を伸ばしているのである。

 クオリティは、SaaS・ASP型のビジネスに参入して以来、対前年比110%以上の伸長を遂げている。しかも解約率は非常に低い。ストックビジネスとしても大きく期待でき、常に右肩上がりの成長を遂げているのだ。「コストカット」が重視されているが、SaaS・ASP型のサービスは、人件費の削減や運用コストの低減というメリットだけではなく、初期導入コストの削減という効果も見込める。

 パッケージ製品を導入する場合、初期導入コストは高くつく。初期導入コストを削減するという意味でも、SaaS・ASPを利用するメリットは大きい。しかし、企業によってはホスティングを活用したいというケースもある。そのような企業は、「QAW/QND Plus」のホスティングサービスも利用できる。キャッシュアウトを嫌う市場状況においてクオリティの展開は新たなビジネスチャンスを生んでいるのだ。

 SaaS・ASP型のビジネスの不安材料は、乱立するプラットフォームだ。各社からプラットフォームが提供されているが、SaaS・ASP型のサービスを考慮すると、1つのプラットフォームに統合されたほうが都合はいい。しかし、まだそういった例はない。クオリティでは、多くのプラットフォームに対応し、それぞれで均一のサービスを提供する土壌を整えた。クオリティ独自のフレームワーク上で同社のサービスを提供することで、プラットフォームの差異を吸収しているのだ。このフレームワークは、パッケージ製品にも採用しているため、クオリティ製品であれば、どのような形態であろうが、均一のサービスレベルを維持する。それだけに、幅広いビジネスも可能となる。

 SaaS・ASPというプラットフォームが立ち上がりつつある今、クオリティの展開は、販売パートナーからも注目されている。新たなビジネスチャンスを創出している同社の今後の展開に、市場から期待が集まっている。


クオリティ=http://www.quality.co.jp/

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