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<NEC WebSAM WORKS 特集>トップ座談会 NEC×ウイングアーク テクノロジーズ

2009/02/17 19:55

週刊BCN 2009年02月16日vol.1272掲載

 NECの統合運用管理ソフトウェア「WebSAM」のパートナー制度である「WebSAM WORKS」。国内ISVとの着実な協業が成果として現れており、なかでもウイングアーク テクノロジーズとの協業は、他社と比べて一歩先を行く実績を上げている。「WebSAM WORKS」の現状や国内シェアNo.1同士の協業の意義、そして、不況下での取り組みなどを語る2社の対談を追った。



「帳票システムを支える舞台裏」高い生産性と信頼性を追求する両社の取り組みを語る

堅調な実績を上げる「WebSAM WORKS」
シェアNo.1製品の組み合わせが不況下のIT業界に活力を与える


WebSAM WORKSで両社が協業する意義とは

■ではまず、「WebSAM WORKS」の現状や両社協業の意義を教えてください。

【森】
 WebSAM WORKSは、統合運用管理ソフトウェア「WebSAM」のパートナー制度です。おかげさまで、立ち上げより着実に成果が現れており、ウイングアーク テクノロジーズ様をはじめ、多くのパートナー様と「Win-Win」の関係を築いています。

 WebSAM WORKSを展開する目的の1つに「チャネル拡大」がありますが、パートナー様の持つさまざまなチャネルを活用して当社製品をご案内いただいたり、当社のチャネルを通じ、パートナー様の製品を流通させることで、市場が活性化すると考えています。

 現在の経済状況は「未曾有の危機」と言われていますが、パートナー様とのこのような密接な連携で、その危機を少しでも和らげられると思っています。

 ウイングアーク テクノロジーズ様とは、資本提携を含む協業といった会社としての強いつながりもあり、実務レベルやマネジメントレベルでフォローしあう関係となっています。両社製品連携の事前評価に加えて開発協業も進めており、帳票基盤ソリューション「Super Visual Formade(SVF)」と「WebSAM」の関係強化を図っています。開発の現場で、エンジニア同士が突っ込んだ議論をすることも多いですね。

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【内野】 ウイングアーク テクノロジーズは設立から5年目に入りますが、ここ数年、当社の帳票基盤ソリューション「Super Visual Formade(SVF)」の適応範囲が大きく変わってきており、従来、汎用機などが行ってきた基幹系のエリアにも、「SVF」が導入されています。

 例えば、帳票の出力が止まると、業務が停止してしまい、結果として出荷できないという事態が考えられます。こうなってくると大きな問題になり、社会問題まで発展しかねません。このようなミッションクリティカルな業務にも、「SVF」が活用され始めています。

 こういった導入のなかには、汎用機と同等程度の信頼性を求められることも少なくありません。しかし、当社だけで汎用機と同等のサービスレベルまで信頼性を高めるのは非常に難しく、NEC様の「WebSAM」のような「運用監視」を受け持つソフトウェアとの連携が必須となります。

 従来、このような連携は、SIer様が検証・導入してきましたが、NEC様とは、開発協業により強い連携が実現できていますので、SIer様の工数が削減でき、サービスレベルが向上できます。この意義はとても大きいと思います。

【山崎】 汎用機の時代はシングルベンダーでしたが、オープンの世界では、異なるベンダーのIT機器を採用するケースも多く、そのなかで信頼性を確保するためのノウハウは、汎用機の時代とは大きく異なります。

 「SVFが正しく稼働しているか」という監視だけではなく、「サーバーのディスク状態はどうか」「ほかのソフトウェアとの関連で問題が発生していないか」「ネットワークの状態はどうか」など、総合的にシステムを監視するノウハウが不可欠です。ウイングアーク テクノロジーズ様との協業により、帳票ソフトに「どのような監視が適しているのか」ということを「WebSAM」に投入し、マルチベンダ環境下での障害監視の精度を高めることに成功しています。

【有延】 当社製品は、基幹系システムのなかでもSAPを基盤としたシステムで活用される事例が増えています。日本には「罫線の文化」があるので、SAPのように海外ベンダーのソフトでは対応できず、SVFと合わせて利用されるケースが多いようです。基幹系システムでは信頼性の確保は、お客様にとって最も重要なテーマです。そういった観点から見ても、当社とNEC様の関係は、非常に大きな意味があると考えています。

「No.1製品」同士の組み合わせによる強み

■ところで、「SVF+WebSAM」の顧客からの評価はいかがでしょうか?

【森】
 WebSAMとSVFは、それぞれの分野でトップシェアを誇るソリューションです。これらの組み合わせで、事前検証がすんでおり導入実績があるということは、お客様にとって大きなメリットになるでしょう。また、売り手の立場で考えると、すでに実績があることを訴求できるため、お客様に対し「売りやすい商材」として提案できます。

【内野】 オープンの世界では、さまざまなものが絡んで、非常に複雑になりがちです。トップシェアということは、その分野で最も多くのパターンを経験しているということを意味しています。当然、「WebSAM」は多くのナレッジを蓄積しているため、障害時にもすばやく対応することができます。お客様に安心感を与えられるという点で、本当に頼もしく感じています。

【山崎】 2008年6月にリリースした「SVF」で行う大量印刷処理を「WebSAM」で監視する連携ソリューションについては、まだ日は浅いですが、政府系や流通、製造業界などのお客様を中心に、着実に導入実績を増やしており、現在検討中の案件も数十件ほどあります。なかには、1日あたり50万枚の帳票を出力しているケースもあり、不意のトラブルを未然に防げるという点で、お客様から高い評価をいただいています。

 また、これらのシステムを構築するSIer様には、検証済みの監視ソリューションを活用することで工期が短縮できるという点についても評価が高く、大きなメリットだと考えていただいているようです。いずれも信頼性の高いソリューションを構築できるという点が大きな魅力となっているのは間違いありません。

コスト削減につながる取り組みを展開

■厳しい経済状況が続いていますが、こうしたなかで、両社は今後どのように取り組んでいくお考えでしょうか。

【山崎】
 正直、不況の影響で投資が難しいという企業も少なくないと思います。しかし、システムの信頼性を低下させるわけにはいきません。お客様自身、その点はよくご存知です。

 「ダウンタイムの最小化」は、お客様にとって大きな課題です。万が一、障害が発生した場合、すばやい復旧が求められます。そのため、「WebSAM」のナレッジをお客様に説明すると、納得していただけるケースが多いですね。

【内野】 「不況で投資が難しい」という話が出ましたが、レガシーで動いているシステムをオープン化すれば、生産性を上げつつ、トータルコストも削減できます。多くの企業は、レガシーシステムの維持管理に投資を余儀なくされています。当然、プリンタの運用も出費となっているはずです。これをリーズナブルなオープン系の仕組みで運用しつつ「帳票」も見直し、紙への出力を減らすという提案をしています。

【有延】 1000種類以上の帳票を活用している企業も多いと聞いています。しかし、帳票に印刷しなくていいケースも数多く含まれているため、定期的な報告などであれば、電子化し、ディスプレイで確認する方法もあります。

 そこで当社では、BIツールである「Dr.Sum EA」を含めた提案を行っています。「Dr.Sum EA」によって、最終的に半分以下に帳票を抑えることが可能です。「Dr.Sum EA」は、NEC様の「InfoFrame」ブランドで提供しており、協業によってブランド力の強化も実現しています。また、ペーパーレス化は、「グリーンIT」にも寄与します。「○○円の削減」というコスト削減効果に加え、「東京ドーム○個分の排出量削減」といったCO2削減効果を示した提案は、非常にインパクトがあると考えています。

【森】 「帳票」など、これまでメスが入っていない分野の「無駄」を紐解き、コスト削減に導きます。今後は、具体的なコスト削減手法をいかにお客様に訴えていくかという点が重要になると思います。

 「WebSAM」の領域である、「監視」の部分についても同様です。例えば、データセンターなどで“熱だまり”が生じた場合、余分な冷却コストが発生します。そこで当社では、熱だまりが生じないようにWebSAMが仮想化技術を利用して業務負荷に応じて集約し、余剰サーバーの電源を落とすことで冷房効率を上げるソリューションも「REAL IT COOL PROJECT」のもとで用意しています。

 万が一、障害が発生した場合でも、ナレッジによってオペレータが対応できるため、結果的に管理工数の削減につながります。また、それらの障害対応に追われてきた熟練の管理者が本来業務に集中でき、生産性の向上にも寄与するでしょう。人件費を含めたコスト削減がご提案できると思います。

【山崎】 この不況下で、より一層、基幹システムの信頼性を高めることが不可欠と言えます。「WebSAM」は、これまでシステム停止が社会問題になるようなミッションクリティカルなシステムでご利用いただいており、厳しい環境で鍛えられてきた製品です。このノウハウを、お客様の企業規模やニーズに合わせて提供しているのがWebSAMシリーズです。情報系のシステムにおいてもそのノウハウが注入され、他社優位性を高めているのです。

 また、「ミッションクリティカルに対応」といっても、そのノウハウはフルレンジで対応できます。「WebSAMオフィス」のようなSMB向けパッケージ製品にもノウハウがつぎ込まれているのです。

提案の幅を広げ、新たなマーケットを開拓

■最後に、今後の予定や期待する点などをお願いします。

【内野】
 NEC様には、思った以上にストレートなご支援をいただいています。これまで同様、今後も技術的なご支援をお願い申し上げます。

 現在、「クラウドコンピューティング」が話題となっていますが、中堅やSMB、フロント系のシステム発展に「クラウドコンピューティング」が寄与することも十分に考えられます。NEC様とは、ともに協力し合いながら、新しいマーケットを開拓していきたいと強く願っております。09年には、海外への取組みも強化する予定です。海外進出は、自社だけではとても難しいのですが、NEC様のご協力のもと、必ず実現していきたいと考えています。

【有延】 今後は、共同で提案できる機会を増やしていきたいですね。機能的に足りない部分は当然、補強して解消していくので、「いつでもお声がけください」というのが、私からNEC様へのメッセージです。

【森】 当社がリーチできないマーケットがあるので、ウイングアーク テクノロジーズ様が持っているチャネルなどを利用して、さらに提案を拡大していきたいと思います。これからも、ともに協力しつつ、シナジー効果を生んでいきたいと思います。

【山崎】 「SVF」や「Dr.Sum EA」など、ウイングアーク テクノロジーズ様の製品は、トップシェアを占めているという実績もさることながら、製品自体とても魅力的です。これからも、より一層この魅力をブラッシュアップしていただき、さらに高度なソリューションを一緒にお客様へ提供していきたいと考えております。

 WORKSという枠組みを活用した両社の協業は、商品の付加価値を高めると同時に、顧客満足度を高めることにもつながった。今後、不況の影響が危ぶまれているIT業界だが、今回の協業のような取組みが広がっていけば、市場全体に活力を与えることになるだろう。
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