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<システム・テクノロジー・アイ特集>伸び盛りの「LMS」を大幅強化 積極投資でシェアトップを狙う

2009/03/19 19:56

週刊BCN 2009年03月16日vol.1276掲載

 学習管理システム(LMS)の国内市場は、コンプライアンス(法令遵守)意識の高まりを受け、ここ数年急成長を続けている。国内外の大手LMS提供ベンダー十数社がシェア争いを繰り広げるなか、ITエンジニアを中心にした学習教材やLMSなどを開発・販売するシステム・テクノロジー・アイは、独立系ソフトウェアベンダーの身軽さを生かしユーザー・ニーズに合致した機能をいち早く取り入れ、シェア上位に浮上。来年度(2009年3月期)は人気のコンテンツ作成ツールを再構築するなど積極的な開発投資を行うことでシェアトップを狙う計画だ。

松岡秀紀
代表取締役社長兼
最高執行役
機能強化を積極化 コンテンツ作成、OEM供給へ

 システム・テクノロジー・アイは、ITエンジニアを中心にしたeラーニング学習教材「iStudyシリーズ」やスキル診断、受講状況管理、人材育成計画、eラーニングなどの機能を搭載する学習管理システム(LMS)「iStudy Enterprise Server」といった製品・サービスを提供している。昨年8月には、オンデマンド型のLMS「iStudy OnDemand」に加え、SaaS型で提供する「iStudy OnDemand SaaS Edition」を発売するなど、ITエンジニア向けに限らず医療機関や製造業などさまざまな業種に利用されるようになった。現在までに84社/92システムを導入し、利用者は約45万人に及んでいる。

 調査会社ITRによれば、04年頃からの企業におけるコンプライアンス(法令遵守)意識の高まりを受け、国内LMS市場は年率20%程度で成長中。来年度(09年4月~2010年3月)は不況下にありながら10%を超える成長が見込まれると予測する。システム・テクノロジー・アイは、「LMSの機能の一部であるコンテンツ作成ツール『iStudy Creator NX』などの組み合わせ販売がけん引している」(松岡社長)状況で、今年度(09年3月期)は通期予想を上方修正した。この「勢い」をバネに、同社は来年度に向けて飛躍をすることを期して「積極的な開発投資」を行っている。

 利用者に人気を博している「iStudy Creator NX」や簡単ビデオ教材作成ツール「iStudy Presenter」のコンテンツ作成機能を強化するほか、同社が主導し国内のLMSベンダーで共同で策定した研修コース情報に関する標準フォーマット「Learning─XML」を利用した機能を搭載し「iStudy Enterprise Server」自体も強化、SaaS型のLMS「iStudy OnDemand SaaS Edition」を地方展開するなど、「より簡単によりリッチな学習コンテンツを作成できるツールを提供し、これまで以上に幅広い層へ当社製品を売り込む」(松岡社長)としており、「iStudy Creator NX」を別のLMS提供ベンダーへOEM(相手先ブランドによる生産)供給することも視野に入れている。

 SaaS型のLMS「iStudy OnDemand SaaS Edition」の新規展開としては、「まずは地方の有力SIerに導入してもらい、その『使い勝手』を検証したうえで、地場の企業へ導入する販社になってもらうスキームも検討している」(松岡社長)と、地域SIerや地域SIerなどのデータセンターから自社LMSを展開することを構想している。


映像コンテンツを簡単に作成 Office2007にも対応

 同社の製品戦略としては、既存のサーバー製品やツール類などを機能強化する。まずは3月1日に、「iStudy Creator NX 3.0.5」をリリースした。

 「これまでアドビシステムズの『Flash Player 8』や『同9』以降のバージョンに対応したアクションを展開していた」(松岡社長)が、同3.0.5では3次元変換や高度なオーディオ処理などの新機能を搭載した「Flash Player 10」に対応する。松岡社長は「よりリッチで高速な研修コンテンツを簡単に作成できるようになる」と胸を張る。また、同3.0.5では、オプション提供している「iStudy Creator NX Voice Converter」に、複数の「話者」の音声を作成し容易に組み込めるようにしている。

 続けて4月には、マイクロソフトの「Microsoft Office 2007」に対応したバージョンアップ版「iStudy Creator NX 3.1」を発売するほか、「Learning─XML」のEDIに対応した「同3.2」を来年度中にリリースし、他のLMSと連携した研修情報や申し込み状況などのデータを使えるようにする計画だ。「既存のオーサリングツールでは、技術力が乏しく高度なコンテンツを作成できなかったユーザーに、使い慣れたOfficeで高度なコンテンツを作成できる環境を提供する」(同)と語る。このほかでも、簡単ビデオ教材作成ツール「iStudy Presenter」の「Web 2.0」対応を進めるほか、同ツールのメジャーバージョンアップ版「同2.0」では「Microsoft Office 2007」に対応するなど、競合他社に対抗するために積極的な強化策を打つ。

 また、「iStudy Creator NX」は、東芝ソリューションにOEM供給し、同社の人財管理ソリューション「Generalist」向けツール「iStudy Creator NX for Generalist/LM」という名称で同社から販売されることが決まった。松岡社長は「今後も同じようなアプリケーションを持つベンダーに対し、『iStudy Creator NX』をOEM供給する」として、これまでにないチャネルを利用した戦略を活発化させるという。

 企業向けeラーニングは、00年頃に普及が始まり、外資系ベンダーが相次ぎLMSを国内に投入した。さらに、国内の大手ITメーカーでもLMSの売り込みを活発化させている。この不況下では「人材に投資をし、次の成長に備える」傾向が顕著になり、LMS市場を盛り上げる機運が生まれている。そのなかで「当社製品は、ユーザー視点に立った『使い勝手』を追求しているので、実際に使えばその優秀性を実感してもらえる」(松岡社長)と、自信のほどを表している。

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