カテゴリー7の発売、プロフェッショナルサポートセンター「ネットヘルプ」の設置など、常に一歩先行くネットワーク事業を展開するサンワサプライ。しかし、昨年後半から続く不況の影響は決して小さくはない。そこで、5月下旬(予定)から、大容量・高速なネットワーク環境を実現するギガビットへの対応ととともに「コスト削減」を目指し、光ケーブルのDIYの販売を開始する。同社のDIYの機器選定やサポートを手がけるベガシステムズの若尾和正社長に、今回のネットワークDIYの意図とユーザーメリットを聞いた。

サンワサプライ ギガビット対応とコスト削減を同時に実現
光なんて簡単!既存製品でここまでできる『DIY』

光ネットワークを自社でコスト削減を実現する「DIY」

 ネットワークの高速化、本格化するギガビット時代に伴って、最近ではデータ送信量(フレーム)を大容量に分割する「ジャンボフレーム」を活用する動きも出始めている。

 しかし、ジャンボフレームを活用するためには、相互に機器やネットワーク環境が必要なため、コストやノウハウなどが導入の大きなネックとなっていた。

 そうしたなか、「カテゴリー7(Cat7)」の量産化をはじめ、生産拠点である中国工場の選定からケーブルの素材(銅)に対する検査、営業の育成、プロフェショナルサポートの設置など「開発、生産、営業、サポート」の一貫体制を築いてきたサンワサプライが、2009年5月下旬(予定)から、「ネットワーク構築DIY(Do It Yourself)セット」の販売を開始する。

 サンワサプライのサポートを担当するベガシステムズの若尾社長は、「これまで同社はネットワークの高速化に伴って、業界でも先行して光製品の取り扱いを増やし、構築のノウハウを蓄積してきました。企業自らがネットワークを構築する今回の『DIY』の普及は、コスト削減につながると確信していきます」と、新たな商品に確かな手応えをつかんでいる。

 満を持してスタートを切る光ネットワークのDIYは、光ケーブルまでもすべて既製品を使って行うため、安く、早くできるという大きな特長がある。

 また、従来のネットワーク構築は、ルータを経由してSwitch(以下Hub)の下に、メタルケーブルでHubをつなぐといった考え方だった。この場合、光を使用する場合には高額な光用のHubで分配しなければならず、施工費は勿論、機器自体が高額となっていたが、DIYは機器の配置、配線方式を刷新。幹線を引き込んでルータを経由するまでは同じだが、複数の光ポートを利用して多くのHubをカバーする。さらに、Hubから光ケーブルを接続して、別のフロアや部屋にHubをデェイジーでつなぐことにより、高速なネットワーク環境が安価に構築できる。(図参照)

 「従来のメタルケーブルは余長を束にして巻くのはご法度でした。しかし、光ケーブルは問題ありません。ノイズに強く、しかも細いので、機器の配置によって左右されるネットワークが自由にレイアウトでき、壁やフロアに沿った取り付けも容易です。また、価格面でも、既製品は安価なため、導入、運用コストが大幅に削減できます。コストは勿論、施工時間の短縮と簡易性は驚くばかりです」と若尾氏はメリットを説明する。

 DIYは、ユーザー企業に負荷がかかると思われがちだが、決してそんなことはない。ネットワークをより簡単に、メンテナンスフリーにしたいという思いを実現できる製品サービスだ。

先を見据えた布石 理にかなった提案に高い評価

 この光ネットワークのDIYのアイデアは、一朝一夕に生まれたものではない。構想はすでに4年前、サンワサプライの新社屋(全6階)で行ったネットワーク工事から始まっている。

 当時としては珍しかった自社独自で光ネットワークの工事を施工。同社の営業担当者と若尾氏で、わずか2日で終えた。そのとき、「既製品を使えば、ネットワーク構築は短期間で、しかも安価にできる」と、自信は確信に変わったという。

 以来、サンワサプライは、光ネットワーク機器の発掘や検証を行う一方、品揃え、構築ノウハウの習得に着々と取り組んできた。

 その過程では、堅牢なHubを軸に提案する大手SIerとのコンペも経験している。

 高価なHubとメタルケーブルで構成する従来型の提案は、冗長性やネットワークのダウンタイムの極小化など様々なメリットがある反面、故障時の対応やコストなどがネックとなった。また、無線LANを使った提案も、セキュリティ面に不安を抱えていた。

 一方、既製品による光ネットワークのDIYの提案は、既製品ゆえ機器の代替えも容易で、故障時の対応が迅速に行える。また、工事が容易なため、組織改編やレイアウト変更などにも柔軟に対応できる。コストも他社の提案の半額以下と、理にかなった提案は、この時のクライアントから高く評価された。

 ユーザーのニーズを十分に満たす内容だったことで、サンワサプライの提案を採用したクライアントは、現在でも光ネットワークをフル活用しているという。

 「以前は、ケーブルを加工するという方法でアプローチしてきましたが、既製品を使って、さらに光製品を使ってやろうというのがコンセプトです。単体売りからトータルソリューションへ、サンワサプライの提案に従えば、自分自身でネットワークの構築ができるようになります。もともと、ネットワーク工事は資格も、免許も要りません。特に、初期導入コストの負担が大きいネットワークですが、この方法を使えば従来のコストを大幅に削減することができます。まさに光ネットワークのDIYは、時代にマッチした提案といえるでしょう」(若尾氏)。

 昨年からの未曾有の不況で、企業ではコスト削減が命題となっているが、自らの体験と時代をリードする先取の姿勢が、他の追随を許さない同社の強さといえる。

「ネットヘルプ」がバックアップ SIerの提案、価格競争力にも貢献

クリックで拡大 しかし、ネットワーク工事をこれまで請け負っていた企業にすれば、「そんなに簡単にネットワークのDIYができるはずはない」と、疑問視する声もあるだろう。

 若尾氏は、「光機器の選定や設置、構築などについて分からなければ、プロフェッショナルサポート『ネットヘルプ』が導入前の相談窓口になります。もちろん、導入後のサポートも行うので、初めての方でも安心してDIYに取り組むことができます。ネットワークをすでに構築している企業でも、今あるものを組み合わせて何ができるか、組み合わせ方にノウハウがあるのです。DIYの実現には、製品とサポートの連携が重要です。その仕組みがサンワサプライにはあります」と、サンワサプライの体制が成功の鍵と強調する。

 また、これまでのネットワーク構築についても触れ、「ネットワーク工事は、受注したSIerとは別の工事業者が請け負うケースが一般的でした。分業は効率化というメリットがある一方で、コストの増大、ノウハウの流失、トラブルへの対応の遅れなどのデメリットもあります。仮に、SIerが自らネットワーク構築できるようになれば、工事費を削減できる分、弾力的な運用と価格競争力を身に付けることができるのではないでしょうか」と語る。

 このように、用意周到に準備された光ネットワークのDIYは、企業にも、SIerにも大きなメリットをもたらすものになる。

新たなサービスへチャレンジ VLAN設定をパターン化

 もうひとつ、DIYを後押ししているのが、これから注力する製品であったことだ。すでに、ネットワーク構築の手法が確立してしまっている場合、既存の工事施工業者が、製品知識やノウハウに乏しい新しい製品を利用するのはリスクが大きい。

 しかし、同社は今回、光ネットワークのDIYに伴って、VLANの設定など、あらかじめパターンを用意して提供するサービスもラインアップしている。

 インテリジェントなSwitch-Hub(L2/L3)にはコンフィグレーションファイル(設定ファイル)があるが、通常はユーザーごとに合わせて設定する必要があり、メーカ毎に仕様も異なるため、初期導入時にそれなり時間が割かなければならなかった。

 「実はVLAN機能を備えたHubを購入した企業のほとんどが、面倒くさくて満足に設定していないというのが実情です。動くからいいやというのではなく、セキュリティを強化する意味でも、VLAN機能を使用してほしいと思います。そのために、あらかじめ設定ファイルのパターンをいくつも用意し、導入企業にダウンロードしてもらうことにしました。本来なら設定費用をいただくところですが、サンワサプライでは無料で配布します」(若尾氏)。

 こうした思い切った策が打てるのも、製販一体で取り組むことができるサンワサプライの強さを物語っている。

普及促進を支援 もっと気楽にネットワークを

 今回のDIYでカバーできる規模は、600台くらいまでを想定しており、家庭やSOHO、中小企業のほか、大企業、中堅企業の部門などがターゲットになる。

 若尾氏は、「“ネットワークを自ら構築する”と大上段に構えないで、もっと気楽にネットワークをとらえてほしいですね。日本は安全なケースを見過ぎており、それでいながら肝心のところが欠落しているケースが往々にしてあります。ネットワークも固定観念にとらわれる必要はないのです。安全、安心をうたうあまり、導入企業にコスト面の負担を強いるのは決していいことではありません」と、DIYの推進はネットワークを根本から見直すいい機会と語る。

 また、メーカー自身も、機器を中心とした市場金額の向上に注力するだけでなく、ネットワークの普及を先に考える必要性を説く。

 「ネットワークに興味を持ってもらい、通線の方法や光ファイバーの知識を吸収してほしい。それが、ネットワークをより簡単に、わかりやすくするために必要なことです。ネットワーク機器自体、どんどん進化していきます。乱暴な言い方かもしれませんが、Hubやケーブルが壊れたらその都度、買い替えや修理すればいいわけですし、インターネットやサーバーが止まるといった故障がなくなるわけでもありません。メンテナンスしやすく、コストを追求していくのも、これからのネットワークのあり方ではないでしょうか」と、若尾氏は今後のネットワークのあり方を示唆する。メタルから光への移行は、高速、大容量を実現でき、施工も柔軟かつ容易になる。サンワサプライでは、DIYの製品群をより充実させ、利便性の高い製品群や技術のリクルーティングに力を注ぐ構えだ。

 光ネットワークのDIYは、今夏からの開始を予定していたが、昨年後半から続く景気の低迷を見据えて前倒しした。不況を逆に追い風にし、DIYの「簡単」「便利」「安価」というメリットがはっきりアピールできることで、成功の青写真は出来上がった。

 「5月下旬から開始を予定しているDIYを楽しみにしています。大きな反響を呼ぶことは間違いありませんが、企業やSIerにとってネットワークがより身近になってくれることを期待します。将来的にネットワークがもっと普及し、一般化してくれば、東急ハンズやホームセンターなどで取り扱えるようにしていくのもいいですね。その第一歩となるように、しっかりサポートしていきます」(若尾氏)。

 光を使ったネットワークのDIY。そこに行き着くまでには、サポートや製品、構築ノウハウなど、シナリオを一つ一つ紡いできたサンワサプライの戦略と努力を見逃すことはできない。新しい提案がネットワークに新風を起こすか、その動向から目が離せなくなってきた。