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<セキュリティソリューション特集>セキュリティは衰えず 不況下でニーズ高まる(下)

2009/04/27 19:56

週刊BCN 2009年04月27日vol.1282掲載

トレンドマイクロ
ルーターとの機能連携で中小企業のセキュリティを強化
ヤマハとのアライアンスで事業領域を拡大

 トレンドマイクロがアライアンス強化で事業領域の拡大に踏み出した。SMB(中堅・中小企業)向けネットワーク関連製品で定評のあるヤマハと協業し、セキュリティ機能を搭載したルーターとトレンドマイクロ製品の連携を実現した。「安全」「簡単」「低価格」を武器に、販売代理店が売りやすい環境を整えることで、ユーザー企業を掘り起こしていく方針だ。ネットワーク関連製品メーカーとのパートナーシップを深めるといった今回の取り組みは、セキュリティソフトとネットワーク機器の融合を実現するものとして注目を集めそうだ。


「SRT100」に「QAC/TM」を搭載 ポリシーチェックで“うっかり防止”

 今回の提携では、ヤマハのファイアウォールルーターの「SRT100」と、トレンドマイクロの総合セキュリティソフト「ウイルスバスター コーポレートエディション」「Trend Micro ビジネスセキュリティ」を連携。両社の技術を生かして、「QAC/TM(Qualified Access Control/Trend Micro)」というポリシーチェック機能をルーターに搭載することを実現した。

 「QAC/TM」を製品化したのは、Web経由で不正侵入する「Webからの脅威」が急増するなかで、多層的なセキュリティ技術の導入が求められているためだ。セキュリティとネットワークという異なった業界のベンダーが新しい取り組みで、ユーザー企業が求めるニーズに対応したことになる。プロダクトマーケティング本部テクニカルアライアンス課マネージャーの船越洋明氏は、「『QAC/TM』は、ヤマハ様がルーターでセキュリティの課題解決を求めるユーザー企業様の声を吸い上げたことで、製品化を果たすことができました」と説明する。

 「QAC/TM」で実現することは、安全性が確実でないPCをインターネットに接続させないということ。具体的には、PCが社内LANを通じてインターネット接続を行う際に、「SRT100」がPCにインストールされている「ウイルスバスター コーポレートエディション」「Trend Micro ビジネスセキュリティ」の状況を確認して、最新の状態に保たれていない場合や、そもそもこれらの対策製品が導入されていない場合に接続を制限する。本機能により、インターネットを介して連鎖的な不正プログラムの感染を引き起こす「Webからの脅威」への対策が実施できる。専任の管理者が不在の企業でも手間をかけず、社内のセキュリティポリシーの管理、運用を実施可能。船越氏は、「ユーザー企業様の“うっかり防止”を支援します」としている。

「簡単」「安全」「低価格」がカギ 100人以下の中小企業に導入促進

 「QAC/TM」は、手間をかけずにポリシーチェックが行えるという点で、「簡単」「安全」を追求しているが、それだけがコンセプトではない。船越氏は、「加えて、『低価格』という点もポイントです」と強調する。

 「QAC/TM」搭載の「SRT100」の本体価格は7万8000円に設定している。ユーザー企業が30台のPCに対応させた場合、「Trend Micro ビジネスセキュリティ」のライセンス価格(30本)が20万4000円、ライセンスの更新価格が2年で20万4000円となる。総額では、3年間の費用が48万6000円。ルーター込みでPC1台あたり1年間わずか5400円という低価格でポリシーチェックが可能というわけだ。これは、「簡単」「安全」「低価格」の3拍子を揃えたことになる。船越氏は、「ユーザー企業様に満足を提供することで、ヤマハ様と共に拡販していきます」と意欲をみせている。

 ターゲットユーザーは、「SRT100」及び「Trend Micro ビジネスセキュリティ」の双方が主要な導入対象としている、従業員が100人以下の中小企業。この規模の企業では、セキュリティ対策専任の管理者が不在であるケースが多いためだ。

両社の製品が連携する機能の提供で新たなニーズを掘り起こす

クリックで拡大 現在のネットワーク製品及びセキュリティ製品の販売においては、「ルーターはルーター、セキュリティ製品はセキュリティ製品として、個別に提案や導入を行っていることが多い」と、船越氏はいう。そのためそれぞれの製品について、必要最低限のものを個別に導入し、かえってユーザーの運用負荷が高まることを招いているケースも見られる。

 「例えばセキュリティ製品については、家電量販店にてコンシューマ向けソフトを購入し、利用されている例が多く見られます。そのため、社内の各PCのライセンスの有効期限や、パターンファイルが適切にアップデートされているかなどの状況を一度に把握できず、余計な手間がかかることもあります」と、船越氏は訴える。

 一方で、ターゲットとしている、従業員が100人以下のユーザーへアプローチする販売代理店は、ヤマハの製品とトレンドマイクロの製品の両方を取り扱っているケースが非常に多い。そのような販売代理店にとって、今回の両社製品の機能連携は、ルーターとセキュリティ製品を一度にユーザーに提案ができ、ユーザーのセキュリティレベルの向上と、販売代理店の売上額の向上の両方に寄与できると期待している。

 船越氏は「今回のヤマハ様との協業によって生まれた『QAC/TM』は、両社の製品をご利用になっていないユーザーのみならず、ヤマハ様もしくはトレンドマイクロのどちらか一方の製品をすでに利用しているユーザーにも、メリットは大きいと考えています。ぜひこの『QAC/TM』を積極的にご利用、ご提案いただき、専任の管理者が不在の企業においても、セキュリティの向上に役立てていただきたい。」とし、「今後もヤマハ様と協力し、ユーザーの皆様及び販売代理店様の双方へより多くのメリットを提供できるような協業を推進していきたい」と意気込んでいる。


トレンドマイクロ=http://www.trendmicro.co.jp/

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