Special Issue

<フューチャーグループ特集>中堅・中小企業向けビジネス戦略

2009/04/30 19:56

週刊BCN 2009年04月27日vol.1282掲載

 フューチャーアーキテクト(金丸恭文会長CEO、安延申社長COO)の中堅・中小企業向けビジネス戦略の全貌が明らかになった。大企業に強い旧フューチャーシステムコンサルティングと、中堅・中小企業を得意分野とする旧ウッドランドが経営統合して3年目。両社の強みを生かしたビジネスが本格的に動き始めている。経営統合の当初の目標である“中小から大手までフルレンジをカバー”する総合ITカンパニーとして、ビジネスを拡大させる。

“フルレンジをカバー”本格始動へ 経営統合の相乗効果生きる

「統合」の技術シナジーを最大化 中堅・準大手を射程内に

 フューチャーアーキテクトは、三つの事業体から構成されるユニークな企業である。一つは大企業向けのITを核とした戦略コンサルティングおよびオープン系のシステム構築を得意とする「ITコンサルティング事業」。金丸恭文会長が立ち上げた旧フューチャーシステムコンサルティングを母体とする事業集団だ。

 二つ目は、中堅・中小企業市場をターゲットとした業務ソリューションや、セキュリティ・ネットワーク関連の製品やサービスを展開する「パッケージ&サービス事業」で、旧ウッドランドグループがベースになっている。三つ目が「企業活性化・新事業開拓事業」。これはグループ会社で新潟の食品スーパーマーケット・魚栄(うおえい)商店やインターネットメディア事業を手がけるザクラを通じて、ITを活用した地域経済の活性化や新事業の創出を推進するものである。

 多様な事業を展開する同社だが、課題もあった。2007年1月に旧フューチャーシステムコンサルティングと旧ウッドランドが経営統合して今のフューチャーアーキテクトが発足。旧フューチャーは年商1000億円以上の大企業を主なターゲットとしていたのに対して、旧ウッドランドグループは主に小企業から年商100億円前後の企業を得意領域としていた。つまり、年商数百億円から1000億円未満までの顧客層は“空白地帯”となっていたのである。

 経営統合では、両社のノウハウや強みを持ち寄り、相乗効果を高めることでこの空白地帯に攻め入ることを大きな経営目標と位置づけた。ここへきて、いよいよ中堅~準大手領域へ本格的に進出する体制が整い、すでに中堅領域でのビジネス案件が増え始めている。  本特集では、フューチャーアーキテクトの安延申社長の巻頭インタビュー、パッケージ&サービス事業担当の田原了・取締役執行役員、主力ERP製品担当役員、グループ会社トップへのインタビュー通じて、同社の中堅・中小向けビジネス戦略の全貌を明らかにする。

営業利益は3倍余りに

 ──中堅から準大手企業の市場をどう捉えていますか。

 安延
 当社では「ミドルビジネスソリューション(MBS)」と呼んでいますが、年商100億円から1000億円といった企業の場合、単純なパッケージソフトの導入では業務上満足できないし、かと言って、高価な海外製ソフトを導入したり、フルにカスタムメイドするには投資余力が十分でないという、ジレンマが存在していたと思います。

 ──経営統合から丸2年が過ぎ、その市場を攻略する戦略の鍵は何なのでしょうか?

 安延
 経営統合後は、旧ウッドランドグループが中小企業向けビジネスで培ったパッケージソフト群と、旧フューチャーシステムコンサルティングが持つ大容量・リアルタイムなデータ処理といった技術力を連携させることを重点課題に位置づけ、両グループの人的交流、技術の摺り合わせを行ってきました。その結果、このミドルレンジ市場のユーザーの要望には、十分に応えられる体制ができつつあります。昨年度(2008年12月期)は、パッケージ&サービス事業で、年商100億円を超える中堅・準大手向けのプロジェクトを複数件こなし、同事業の営業利益は前年度比で3倍余りに増えるなど、収益力も確実に高まっています。

待ったなしの改革

 ──経済環境は依然として厳しい状態が続く見通しです。基幹業務へのIT投資が鈍ることも考えられます。

クリックで拡大 安延
 だからこそチャンスでもあると思っています。ユーザー企業は収益力を伸ばすため、待ったなしの改革を推し進めていますし、業界再編も活発化しています。そうなると、経営効率を高めるためのシステム需要も高まるでしょうし、M&Aが活発になれば、システム統合は極めて優先度が高い経営課題になります。

 ──フューチャーグループでは、どのようなソリューションを持っているのですか。

 安延
 業務アプリケーションの開発基盤である「RRR(トリプルアール)」をベースとして会計をコアにしたERPパッケージ「NewRRR(ニュートリプルアール)」や統合業務システムである「SOLViT(ソルビット)」「REX」などを持っています。RRRのOEM供給先なども含めた過去10年の累計販売本数は7000社に達するなど、業界トップクラスの実績がある製品群です。これに年商1000億円以上の大企業向けコンサルで培った技術力の中堅企業向けへの応用を進めていきます。

経営システムの目線重要

 ──具体的にはどうシステムを変えるべきだと考えておられますか。

 安延
 例えば、好況期には、販売や生産部門などバラバラにシステムを導入したり、高価なシステムを使い続けても、それなりに収益が確保されていました。ところが不況下では、システムの無駄や高コストを許容する余裕はなくなります。「経営」の目線からシステムの最適化を図ることが、今こそ求められていると考えています。このタイミングで、これまで手薄だった中堅・準大手企業への領域へ進出することにより、向こう数年内にミドルレンジ市場の業務アプリケーションで業界トップの座を目指す意気込みです。

技術的優位性をテコに 「RRR」シリーズで需要掴む

 フューチャーグループが持つ業務パッケージ群の優位性を支えるのは、その開発基盤の「RRR」だと言っても過言ではない。「RRR」とはソフトウェアをコンポーネント(部品)化し、顧客の需要に応じて自在に組み合わせられる。かつ、その上で統合システムの特徴であるデータベースの一元管理が可能である点に最大の特徴がある。

 次ページ以降、「RRR」を基盤としたフューチャーグループのビジネス戦略について詳しく分析する。

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