Special Issue

<東芝情報機器>組織体制の再編で「ワンストップソリューション」を加速

2009/05/26 19:56

週刊BCN 2009年05月25日vol.1285掲載

東芝情報機器 座談会
ソリューションの創出へ 事業部連携による付加価値ビジネスの推進

 東芝グループのIT中核企業として、BtoB市場に向けて、ハードウェア、ソフトウェアをはじめ、システムソリューション、サポート&サービスを一貫して提供する東芝情報機器。企業コンセプトとして掲げる「One-Stop Solution Company(ワンストップソリューションカンパニー)」を具現化し、さらに強化していくため、4月からサーバ・ネットワーク開発推進部、マーケットクリエーション部、カスタマサポート推進部、システムソリューション事業部の4部門が連携し、新たなビジネスモデルの創出を目指している。東芝PCという強力なブランドを有する強みを軸に、いかに付加価値ビジネスを展開していくのか、4部門が連携した狙いと戦略、販売店とのパートナーシップ、具体的なソリューションについて、各事業部の責任者に集まってもらい座談会形式で話を聞いた。

カスタマサポート推進部長 小栗基照氏
サーバ・ネットワーク開発推進部長 原田茂義氏
マーケットクリエーション部長 金沢良男氏
システムソリューション事業部長 藤野雅憲氏

複数のソリューションを一気通貫で提供

 ──今回、4部門が連携した狙いを教えてください。

 金沢氏
 当社は国内の東芝ビジネスパソコンの総販売元ですが、昨今のパソコン価格の大幅な下落、経済状況の激変などから、ビジネスを取り巻く状況は大きく様変わりしています。

 それに伴い、量から質へビジネスの転換を強く迫られています。しかし、以前はPC事業部、システムソリューション事業部、カスタマサポート事業部がそれぞれ垂直型のビジネスを展開していたため、横の展開、つまり事業部連携のソリューションが不足していました。

 また、SaaS(Software as a Service)、WiMAX(高速無線通信技術)、クラウドコンピューティングなどの大きな技術トレンドによって、IT事業は大きな変革を迎えつつあります。その環境下において、東芝製品に加えて当社が持つソリューションを一気通貫で提供し、お客様に満足いただける新たなソリューションを提供する体制が急務となりました。それが、今回の組織変更の最大の狙いです。

 具体的には、ストックビジネスの拡大のため、私が担当するマーケットクリエーション部では外部のベンダー様と連携した商品開発を進め、そのサポート内容をカスタマサポート推進部が担当します。また、当社が扱うプロダクト、IAサーバの「MAGNIA」、統合セキュリティシステム「PC運用上手」シリーズなどを中心としたストックビジネスの展開を支援するサーバ・ネットワーク開発推進部を新設しました。この部隊が作り上げたものをPC事業部やシステムソリューション事業に向けてプロモーションするとともに、われわれが持つ販売網に対してソリューションの展開を支援していくこともマーケットクリエーション部の役割です。端的に言えば、事業部間の縦横関係を創り上げる、面の展開を支援するポジションとなります。

事業部連携により新しいソリューションを創出

 ──事業部連携による具体的な戦略について教えてください。

 金沢氏
 一つはストックビジネスを可視化して、いかに積み上げていくか、つまり“足し算のビジネス”に繋げるかという戦略です。前述のようにPCだけの販売は、今後、ますます厳しくなるのは避けられません。そこで現在、目指しているのは、運用管理の提案をすることによるビジネスの拡大です。適切な運用管理でコストダウンが可能となり、この製品を使うことで成長性に貢献し、CO2削減など、エコにもつながるというような発展的なシナリオを提案すること。それが激化する競争を勝ち抜くためには不可欠だと考えています。

 これは当社のパートナーにおいても同様で、自社の顧客からいかにリターンをもらうかという点で同じ悩みをもたれています。パートナーとの連携もより強化して、新しいソリューションの提供を目指します。

 ──ストックビジネスの積み上げについて、どの程度にまで高めていく計画ですか?

 小栗氏
 3年後に全社売上の30%を占めるまでに成長させたいと考えています。ストックビジネスの積み上げにおいて、我々スタッフの役割は重要です。カスタマサポート部門は保守などのアフターだけでなく、ビフォアに当たるシステム提案まで幅広く行っています。

 機器だけの販売では積み上げに限界があり、いかにプラスαを加えるかが重要です。例えば、サーバを中心としたシステム提案を行う場合、内訳としては、サーバが3分の1、PCやプリンタ、ネットワーク機器が3分の1、ネットワーク構築などのカスタマサポートが3分の1という配分となります。

 全社売上の30%ということは、これまで機器だけの販売で終わっていたお客様に対しても、当社のサービスを加えていただくような提案をすることです。その意味でも、バイネーム(指名)のお客様すべてに、機器販売だけでなく、魅力あるサービス・サポートをいかに提案していくかが鍵となります。それが実現すれば自ずと全社売上の30%はクリアできると思います。

 同時に、こうしたワンストップ・ソリューションの提供により、お客様のネットワークインフラにしっかりと食い込んで、さらなる付加価値を生む提案を行うことも可能です。

付加価値としてのネットワーク・プラットフォーム

──現在、進めている事業展開について教えてください。

 藤野氏
 システムソリューション事業は、大きくプラットフォーム(本体、ミドルウェア、パッケージ製品の一部)と、業種・業務系、情報系のシステム構築やサービス・サポートなどのソリューションとに分かれ、その比率は4対6となっています。このうちソリューションの比率をさらに高めるため、今回の部門連携によって新しいソリューションの創出を強く推進していきます。その方策の一つとして、システムソリューション推進部の中にNS-PJ(New Solution Project)という営業と技術からなる専任の部門を新設しました。この部隊がサーバ系ソリューションや業務・業種別ソリューションの開発を担当します。

 システムソリューション事業では、お客様ごとに様々なシステムやサポートの導入状況をデータベース化していますが、その中で未導入の部分に対するソリューション、特に複数の未導入部分を串刺ししするようなソリューションを創出していきたいと考えています。

 金沢氏 ビジネスの拡大でもう一つ、注視しているのがマイクロソフトおよびインテルとの連携です。クラウドやデータ管理に対して、マイクロソフトがどのようなアプローチを行っていくのか、インテルのvProテクノロジーの世界がどうなるのか、当社にとっても重要な問題です。両社との窓口をそれぞれ決めて、しっかりと連携をとっていく体制を整えており、マイクロソフトとは5月下旬に合同セミナーの開催が決まっています。

 藤野氏 システムソリューション事業では、本体を含むシステム全体のサポートまでワンストップ・ソリューションを行っています。従来の開発を中心としたシステムソリューションの範囲にとらわれず、今後新たな強化ポイントとして、ネットワーク・プラットフォーム、システム運用管理、セキュリティ対策、事業継続などシステム安定稼働に向けたトータルソリューション。その基盤をしっかりと創ることで、付加価値のビジネスが展開できます。

 原田氏 パートナーとの連携も非常に重要で、東芝のPCやサーバを提供するだけでなく、付加価値としてのネットワーク・プラットフォームをいかに提供するかが命題だと考えています。

 サーバ・ネットワーク推進部は、東芝製品の上にいかにプラスαを付けていくかをテーマとしており、そのために東芝に製品開発のリクエストを行うこともあります。一方、マーケットクリエーション推進部は東芝製品にこだわらず、アライアンス先の他社製品も含めたソリューションを提供しています。システムソリューション事業は、自分達が開発したパッケージ製品もラインアップし、それらを含めてトータルのソリューションを提供しています。

 当社が東芝製品を中心としたビジネスを強く推進しているのは、単に東芝のグループ企業として、冠を付けているからだけでなく、東芝PCという強力なブランドを有する強みが発揮できるためです。その信頼をベースにすることで、ネットワーク・プラットフォームにおけるインフラ部分のビジネスを図っていく強力な武器となります。こうしたビジネス展開がイコール、お客様に向けた最適なソリューションの提供につながると確信しています。

 小栗氏 今回の組織改革では、本部の強化とともにビジネスの前線である各拠点の強化も同時に図っています。カスタマサポート推進部には保守の部隊だけでなく、営業と一体となってシステム提案を行っている技術のスペシャリストを配置しており、今回、そのスペシャリストとPC事業部の技術部隊とが一体となりました。これにともない、機器本体の販売に付随するサポート・サービス中心のビジネスから、新しいシステム運用など、より強力な提案型のビジネスを推進していく体制が整いました。

「PC運用上手」シリーズを拡充 シンクライアント対抗ソリューションもリリース

 ──今後の具体的な商品展開について教えてください。

 原田氏
 具体的な商品展開の一つとして、すでに多くの実績を持つ統合セキュリティシステム「PC運用上手」シリーズの拡充、さらに東芝の独自技術を駆使したソリューション製品の展開を図っていきます。現在、「PC運用上手」シリーズには、「PC運用上手」と東芝が独自開発したPC仮想化エンジン「vRAS」を搭載し、小規模企業や部門でサーバレス運用を可能にした「PC運用上手SS」があります。これに加えて、シンクライアントの運用上のデメリットを克服する、リッチクライアントのままシンクライアント同様のセキュリティ対策を実現できるソリューションを提供する予定です。

 「vRAS」はインテルvProテクノロジーを搭載するCPU上で稼動するエンジンで、インテルとの共同開発で誕生しました。その「vRAS」エンジンを用いて商品化する第二弾が、シンクライアント対抗ソリューション「SV-PC」(Virtual Style PC)です。シンクライアントの場合、クライアントが専用端末となり、大規模なサーバも必要になります。さらに、既存の環境を全面的に切り替えることになるため、初期投資が膨らみます。この結果、全社導入よりも部門導入が主流となっているのが現状です。

 「SV-PC」は、こうした従来のシステム資産の無駄を抑えるため、通常のPCをシンクライアントのように利用し、ネットワークから切り離すとローカルディスク内のデータもアクセス不可にできます。さらに、管理者が発行した有期限のセキュリティ・キーを使うと、外出先のネットワークにアクセスできない場所でもローカルのデータに一定時間アクセスすることが可能です。このためセキュリティを保ちながら、安心してデータの持ち出しが可能となり、外出先での業務やプレゼンなどに活用できます。

 また、「PC運用上手」の商品力強化については中小規模の企業に最適なセキュリティ機能の提供だけでなく、PCシステムの運用管理を向上するソリューションを盛り込んでいく計画です。例えば、ソフトウェアの一括配布や各クライアントの省電力設定などを一括で実行する機能など、管理者の負荷を軽減し、エコに貢献する機能を強化します。

 競争力のある東芝製品をコアとしたソリューションの魅力をアップさせることで、当社システム製品を取り扱ってくれる販社を増やし、販売チャネルのさらなる拡大を積極的に行っていきます。その一環として、東芝グループでMFP販売を手掛ける東芝テックビジネスソリューション(TTBS)との連携も強化していく予定です。

 小栗氏 提供する商品がより多機能となり、複雑化してネットワーク・プラットフォームのインフラ部分と密接に関わるとなると、ITソリューションからサポートまで、確実に対応していくことがこれまで以上に求められます。そうしたなかで、CSが果たす役割もさらに重要になります。

 そこで、専門性をより高め、必要に応じてそれぞれの部門と融合することで、コンサルティングをはじめ、お客様の問題解決と計画実現に向けて最適なソリューションを提供していきます。ぜひ、今後の当社の取り組みに期待してもらいたいですね。

 ──顧客視点の新しい付加価値ビジネスの実現へ、より柔軟に、より強力になった事業部連携による組織力に期待しています。本日は皆様ありがとうございました。