Special Issue

エレコム ユーザーに伝え続ける姿勢を貫く

2010/01/28 19:55

週刊BCN 2010年01月25日vol.1318掲載

 便利な機能やユニークなデザインを採用したPC周辺機器を展開するエレコム。2010年のBCN AWARDでは8部門でトップを獲得。マウス部門とUSB部門は10年、キーボード部門が8年、スピーカ部門は7年、ゲームコントローラ部門と10キーボード部門は6年と、それぞれ連続で首位獲得という高い支持につながっている。今年はさらにPCカメラ部門も加わった。競合がひしめく市場でトップシェアを維持できる秘訣は何か。福良卓二・商品開発部部長代理に聞いた。

マウス部門 USB部門
スピーカ部門 PCカメラ部門 キーボード部門
ゲームコントローラ部門 10キーボード部門
携帯オーディオアクセサリ部門

「提案力」がトップ獲得のキーワード

PC周辺機器の常識を覆すアプローチで
ユーザーの支持を集める


商品開発部部長代理
福良 卓二 氏
 「機能のアピールに偏りがちなPC周辺機器にあって、当社は『デザイン』と『使い方』でお客様に常に新しい提案をし、常識を覆そうと努力してきました。この“提案力”がトップシェアの獲得につながったのだと思います」と福良部長代理は説明する。

 エレコムの提案力を象徴する製品が10年連続で首位を維持する「マウス」と「USB」だ。マウスのけん引役となったのは「グラストシリーズ」。1997年に第一弾が発売されて以来、同社のマウス製品では主軸になっているシリーズだ。

 最新モデル「MICRO GRAST」は2.4GHzを利用した5ボタンのワイヤレスマウス。大きさが1円玉ほどの超小型レシーバーが最大の特徴だ。豊富なカラーバリエーションも揃える。

 「デザインはもちろん、ノートPCで使った場合にレシーバーをつけたままで持ち運んだり保管できるという、ユーザーにとっての利点がすぐ分かる」(福良部長代理)ことで人気を集めた。

 デザインマウスでは卵形フォルムのマウス「エッグマウス」も「『かわいい!』と思ってもらえる形で女性から支持されたことがシェア獲得につながった」(福良部長代理)という。

EGG MOUSE mini

 一方、USB部門で原動力となったのが「U2H-SL4B」シリーズ。ポップなカラーと輸入雑貨を思わせる、かわいらしいデザインのUSBハブだ。

U2H-SL4Bシリーズ

 「パソコンが一般の人にも広く普及し、生活用品のようになってきています。であるなら、周辺機器も同じにしてしまおうというのが商品企画の出発点です。USBハブは従来、デザインの違いはあまりありませんでした。そこで、当社では遊び心のある、おしゃれな文房具というデザインコンセプトでお客様に提案したわけです」(福良部長代理)。

 09年11月にはトイブロックをイメージした「USBハブ トイブリック」、正方形型の「キューブハブ」、板チョコレートがモチーフの「ショコ」と、デザインにこだわったUSBハブを次々と発売。これらのシリーズも「U2H-SL4B」とともにトップシェア獲得を後押しした格好だ。

パッケージもわかりやすさを追求
今後も幅広い製品で提案を続ける


マウス部門
USB部門
 エレコムでは、製品だけではなく、パッケージのデザインにも力を入れている。

 「製品が店頭に並べられた際に、お客様にその製品の魅力や使った時の便利さをすぐに分かっていただく」(福良部長代理)という狙いからだ。

 例えば、「MICRO GRAST」の場合、パッケージの表面に印刷する機能の説明は必要最小限に抑えた。その代わりに超小型レシーバーをパッケージ上面に目立つように配置した。「小型レシーバーという最大の特徴と便利さがすぐ分かるように工夫しました。スペックなどをあれこれと書くよりもシンプルに示したほうが、お客様にメリットが伝わりやすい」(福良部長代理)という理由からだ。

 PC周辺機器は機能的な差異化が難しくなる一方、低価格化が進み、メーカーにとっては厳しい市場になりつつある。しかし、そういう環境だからこそ、ビジネスチャンスは広がると福良部長代理は強調する。

 「機能や価格だけに目を奪われると、確かに厳しい市場ですが、メーカーの取り組み次第で、市場を拡大していくことは可能だと思います。われわれは『デザイン』を軸に『機能』や『使い方』『遊び心』を加えて、『この製品を使うとこんなに楽しいですよ』と、お客様に常に提案してきました。だからこそ、多くの人に支持されたのだと思います。そういう意味では当社はPC周辺機器メーカーというだけではなく、マーケティングカンパニーにもなりつつあると感じています」。

 コモディティ化したとみられているPC周辺機器で、エレコムは、独自のアプローチで付加価値の高い製品を開発してきた。これからもその考えは変わらない。今後も差異化が難しいといわれるカテゴリの製品にも取り組んでいく意向だ。

 「ケーブルや用紙・ラベルといった消耗品で新しいことができないかと考えています。今は具体的なアイデアはありませんが、こうした違いを出すのが難しい分野でも、われわれなら使って楽しかったり、面白いとお客様に思ってもらえるような製品を作ることができると思っています」(福良部長代理)。

 一方で、既存製品の商品開発も加速する。たとえ首位のマウスでも決して現状で満足しているわけではないという。

 「09年はおかげさまでトップシェアを獲得できましたが、一方で『コレだ!』と思えるような製品は出せませんでした。10年はお客様に高い価値を感じていただけて、当社にとってもけん引役となるような製品を新たな発想で取り組んでいきたいと思っています」(福良部長代理)。

 成熟したといわれているPC周辺機器市場で、デザインや使い方の提案を武器に、新しい付加価値を持つ製品を生み出し続けるエレコム。次はどんな驚きや楽しみのある製品をユーザーに届けてくれるのか、楽しみだ。
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外部リンク

エレコム=http://www.elecom.co.jp/