法人市場で、情報セキュリティに対する投資意欲が高まっている。巧妙化する外部脅威やコンプライアンス対策に向けた内部統制の強化がいっそう求められているからだ。リーマン・ショック以降の大不況によって、2009年は厳しい状況が続いた。今もその余波は残ってはいるものの、情報セキュリティ関連のシステム・サービスを導入する必要性を認識している企業は多いようだ。こうした需要を取り込もうと、ITベンダー各社はパッケージの機能やサービスの強化を追求。ここにきて、続々と新製品が登場し始めている。

ベンダー各社、新製品続々と

 調査会社のIDC Japanが実施した国内企業817社を対象とする情報セキュリティ分野の実態調査によれば、2010年の同分野に対する投資意欲は、前年と比べて高まっている。情報セキュリティ関連投資の増減率見込みを調査した結果、「増加する」と回答したのは全体の9%。09年は7.9%だった。「減少する」と答えた企業は20.3%とまだまだ多いものの、09年が22.4%。情報セキュリティに関していえば、徐々にではあるが投資抑制が“雪解け”を迎えているという傾向が現れている。

 今回、IDC Japanでは、脅威管理、アイデンティティ/アクセス管理、セキュアコンテンツ管理など13項目の情報セキュリティ対策について導入状況を調べた。そのなかで、顕著に現れたのは、アンチウイルス対策やファイアウォール/VPNなど外部からの脅威への対策の導入が進んでいるという実態だった。クライアントPCの無料アンチウイルスソフトウェアについては、従業員規模にかかわらず1~2割程度の企業が利用しているという。

 一方、無料アンチウイルスソフトウェアについて「導入を検討しない」「利用しない」企業は、「ウイルス検知率が低いから」「ベンダーのサポートが受けられないから」などを理由に挙げており、従業員規模が大きくなるにつれて比率が高まるようだ。従業員規模250人以上の企業では「利用しない」が半数を占めている。ウイルス対策は、ITベンダーによるSaaS提供などによって低価格化が進んでいる。無料ソフトウェアの利用が拡大することで一段と価格低下が進行し、価格戦略の見直しが必要になる、とIDCでは分析している。また、導入を検討しているセキュリティ対策については、13項目すべての対策で1割程度の企業が検討しているという。

 08年9月のリーマン・ショック以降の先行き不透明な市況感でIT投資への抑制が強まるなか、コスト削減を目的としたシステム統合化によって企業のIT環境は急激に変化を遂げている。その一方で、企業には外部脅威への対抗策や内部統制の強化が求められている。情報セキュリティの脅威は、コンピュータウイルスの巧妙化や感染経路・情報漏えい経路の拡大化によって増大。企業が必要に応じたセキュリティ対策を求め始めている、とIDCはみている。

 このような状況の下、情報セキュリティ関連のシステム・サービスを提供するメーカーのなかで、パッケージソフトのバージョンアップやサービス強化などが相次いでいる。クライアント端末の管理を中心とした資産管理関連では、管理するIT機器を広げるといった機能強化や、クライアント端末のセキュリティを強化するインテルの「vProテクノロジー」に対応したソフトの発売などがある。また、改ざん防止に向けてPDFの利用を促す動きが出てきた。さらに、高機能なUSBメモリにウイルス対策を施すことができる製品や、マルウェア対策を実現するルータが市場に投入されている。使いやすくて適正価格の電子証明書の提供もある。安心して事業継続ができるストレージサービスのクラウド化も進んでいる。なかには、新組織の設置で事業拡大を図ろうとしているメーカーもみられる。

 情報セキュリティ関連のシステム・サービスを売る販社にとっては、新規顧客を開拓できる可能性が高まっているということになる。メーカーとSIerなど、ITベンダーにとっては、情報セキュリティを切り口にしたビジネスチャンスが広がっているといえそうだ。

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