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<Agoop特集>ソフトバンクグループを下支えする有力ITベンチャー GIS、GPSを活用した唯一無二の独自ソリューション展開

2010/06/24 19:55

週刊BCN 2010年06月21日vol.1338掲載

 2009年設立のITベンチャーで、ソフトバンクグループのAgoop(アグープ)。創業して1年程度の若い企業だが、競合が存在しない唯一無二のソリューションをもち、誰もが目を瞠る実績を誇る。同社の「アグープモバイル」はGIS(地理情報システム)を活用した業務支援のモバイルサービスで、「アグープデータ」は電子地図上で人口流動を把握できるデータ製品。急成長するベンチャー企業の主力サービスはどこがどう優れているのか――。

ソフトバンクグループで活用

柴山和久 取締役
 「アグープモバイル」は、スマートフォンなどのモバイル情報端末機器を経由して、営業担当者やサポートサービス担当者などの業務効率化を図るテレワーク支援サービスだ。GPS(全地球測位システム)とGISを活用し、営業や作業現場で迅速に情報を入力、共有することで現場の作業効率とオフィスでの管理効率を高めることができる。

 例えば、営業担当者はモバイル機器を操作して、今いる地点から訪問できそうな営業先を、モバイル機器の地図画面で瞬時に把握する。そして、商談の後、その活動報告をその場で入力できる。また、サポートサービス担当者も同様に利用でき、業務を大幅に効率化することができる。出退勤の入力や顧客情報の閲覧なども可能で、外出先でもオフィスと同じ環境で仕事をこなすことができる。先進のGPSタイムカード機能を備え、オフィスでは外勤者の位置と状況を把握しながら、柔軟なスケジュール調整が行える。ASP/SaaS型サービスで、初期コストは数十万円で導入障壁も低い。情報はモバイル機器に保存しないため、セキュリティ面も安心だ。

 このサービスは、実はソフトバンクモバイルで有効活用されている。同社のメンテナンスサービス担当者は、電波回線を安定的に稼働させるために、全国で保守業務を展開する。効率的なサービス提供体制を模索するなかで、「アグープモバイル」を採用した。効果はすぐに現れ、従来は1日に3件しか作業できなかったサービスマンの業務が8件にまで急増したのだ。

 「アグープモバイル」は、多様なモバイル情報端末プラットフォームをサポートする。「iPhone」はもちろん、「Windows Mobile」「Android」といった主要なスマートフォンのOSをすべてカバー。また、5月に国内で発売された「iPad」への早期対応も計画しており、この最新の先進環境でも近々に利用可能になる。柴山和久・取締役は、「単純なモバイルGISソリューションはたくさんあるが、『アグープモバイル』は携帯電話の特性を生かし、ムダなデータ通信を省く技術や、GPSの特性を生かした機能などを豊富に盛り込んでいる。モバイルネットワークの特性を熟知したソフトバンクグループの当社だからこそ実現できている」と説明している。

「アグープモバイル」の操作画面。地図上で、自分のいる場所周辺の顧客情報、また訪問顧客のオフィスをひと目で把握可能なほか、作業報告もその場で行える

流動する人口を的確に把握

 もう一つの主力商材「アグープデータ」は、ひと言で言えば「流動性人口推定データ」である。「本当に人が集まる場所はどこか」、「そこに人が集まる時間帯は何時頃か」を全国規模で把握できるデータだ。国勢調査など、国や民間の調査会社が実施する調査によって、「居住者、就業者などが何人いるか」を把握することは可能だ。しかし、買い物客や観光客などの人数までは分からない。また、朝か夜か、春か夏か、平日なのか休日なのかなど、時期帯や時間によってその場所での人口は違うが、それを把握することもできない。

 「アグープデータ」は、これら静的情報では分からない、時間ごとに変化する流動的な人口分布の実態を、電子地図上のコンテンツとしてひと目で把握できるようにする。

 流動人口を把握できるメリットは大きい。例えば、小売店であれば、流動する人口に合わせた出店計画や営業時間の設定、マーケティング施策の立案が可能になる。ホテルや観光業を営む企業では、いつが繁忙期になるかを的確に掴んで人員配置できる。

 システムインテグレータ(SIer)などのITベンダーにとってもビジネスでの利用価値は高い。同データを活用したマーケティングシステムの構築を容易に始められるからだ。柴山取締役は、「他社にはない唯一のデータ」とその独自性を強調する。

 「アグープデータ」は、さまざまな企業や公共団体に利用されているが、なかでもビッグユーザーはソフトバンクグループだ。実は、「アグープデータ」はソフトバンクモバイルの携帯電話基地局を効率的に設置するために考案されたデータなのだ。

 「ソフトバンクモバイルは、競合他社よりも短期間で効率的に基地局を設置する必要があった。静的な情報だけでは、ある地域では電波が余剰になったり、不足したりするケースがあるため、実態人口を把握できる『アグープデータ』を開発した」と、ソフトバンクモバイルの設備エンジニアリング本部エリア情報企画部部長を兼務する柴山取締役は語る。

 「アグープデータ」は、基地局を建設・運用するために、人の流れを読むノウハウ、土地利用状況などから人口を推定するノウハウ、そしてランドマーク・イベント情報などの地道なリサーチ結果をベースにして作成されている。他社が容易に参入できる分野ではなく、Agoopの優位性は高い。



 ソフトバンクモバイルを中心に、グループのインフラと業務効率化を下支えしてきたAgoop。その有力ITベンチャーが、満を持して投入したジオメディアサービスは、ユーザー企業のソリューションとして、またITベンダーの商材として活用する価値は十二分にある。ソフトバンクグループから、また存在感を高めそうなITベンチャーが登場してきた。

Agoop=http://www.agoop.co.jp/
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