システムソリューションの提案から、サーバ・周辺機器を含めたシステムの販売・構築まで幅広く手がける日本事務器。1924年の創業から85年以上の歴史があり、中堅・中小企業に強いSIerとして高い知名度を誇る同社は、「医療・福祉」「公共・文教」「民間企業」の3分野を中心に事業を展開している。IT業界全体でクラウドサービスやSaaSサービスが注目を集めるなか、いち早く構造改革に取り組み、「サービス化」の方針を打ち出して、本格的な取り組みを始めている。そこで、田中啓一社長に2010年後半の事業戦略について話を聞いた。&

「“作らざる開発”を推進することで、コア技術を進化させる」
収益構造を再構築し、業績向上を目指す

田中啓一 代表取締役社長

サービスビジネスの強化を推進

 日本事務器は、2010年の初頭から事業戦略の重点項目を「サービス化へのシフト」に置いている。現在もその方針に変わりはなく、2010年下期もサービスビジネスの強化を推進していく考えだ。

 田中社長は、「2004年7月にIP電話サービスからスタートしたIPソリューションサービスが7年目を迎え、堅調に成長していることから、2010年4月にサービスビジネス部隊を新設しました。現在、SaaSサービス「recipe(リサイプ)」等の情報系ソリューションを強化する一方で、基幹系パッケージのクラウド化も進めています。マーケットの状況をみながら、パッケージのSaaS化、または特定コンポーネントのクラウド化、データのクラウド化など、お客様のニーズと市場の状況に合わせて提供していきます」と方針を明らかにする。

 また、競争力強化のためには「オープン化が必須」(田中社長)と考えており、キーワードに「オープンスタンダード」を挙げた。「社内では“作らざる開発”と呼んでいます。コア技術となるエッセンスの開発にリソースを集中し、周辺領域はオープン技術を採用することでムダを排除するとともに、サービス提供のスピードを加速化することが目的です」(田中社長)。

Google Appsのアカウント数を拡大

 田中社長が掲げる「オープンスタンダード」の典型例として挙げられるのが、「Google Apps」だ。Google Appsは、メールやスケジュール管理、ドキュメントの共有など、業務に必要な複数のアプリケーションをインターネット経由で活用できるクラウドサービスである。Google Appsを導入すれば、アプリケーションを全てゼロから開発する作業が省けるうえ、お客様は慣れ親しんだ操作方法で使うことができる。Web経由で提供されるため、ハードウェアやソフトウェアの保守・運用も不要だ。

 日本事務器は、2009年5月にGoogle Appsの開発パートナー認定を取得し、同年12月に「Google Apps Premier Edition」の正規販売代理店となった。1アカウントあたり年間6000円で販売する「Premier Edition」のほか、50アカウントまで無料の機能限定版「Standard Edition」、教育機関向けの「Education Edition」の3エディションを用意し、導入支援サービスや、活用方法などをサポートするアドバイザリサービスと組み合わせて販売している。

 「第一の目標は、Google Appsのアカウント数を増やすことです。ただし、アカウント数を増やすだけでは、当社に大きなメリットはありません。そこで、私たちはGoogle Appsに付加するサービスやアプリケーションを開発してお客様に提供するビジネスで収益をあげていきます。『Education Edition』を教育機関に売っても利益は出ませんが、万単位のアカウントに複数の小口サービスを付加すればスケールメリットが出せます。このように、お客様の“困った”を解決するサービスを開発する土壌を作ることが本年最大のミッションです」と田中社長は方針を語る。

得意領域に製品・サービスを集中

 主力事業のソリューション部門では、強みとする「医療・福祉機関」「公共・文教機関」「民間企業」の3カテゴリに製品・サービスを集中させることで、企業規模の拡大を図る。

 「医療・福祉機関向けビジネスでは、『保健・医療・福祉』の3分野の情報を共有化するトータルヘルスケアソリューションを提供していきます。医療機関の複合化が進み、医療施設と介護施設の垣根を越えたシステムが必要となっています。そこで当社は、2010年2月に介護系ソリューションの開発を手がけるNDソフトウェアと協業の基本合意を行いました。お互いの得意分野を活かすことで、お客様のニーズに対応した医療系ソリューションとの連携が図れる新介護システムを開発し、市場に提供していきます」。

 公共・文教機関向けビジネスでは、教学系システム、図書館情報システム、Google Appsの三つを軸にサービスのバージョンアップを図る考えだ。

 民間企業向けビジネスでは、食品業界にターゲットを絞って統合業務ソリューション「CORE Plus qbic(コアプラスキュービック)」の販売体制を強化する一方、好調な通信販売市場に向けて成長戦略の基盤となるシステムを提案し、インフラを含めたトータルサポートを提案していく。

 現在、上記のソリューションに加え、仮想化等によるインフラ構築サービスが牽引し、プラットフォームビジネスが好調な日本事務器。サービスの強化によって、収益構造がどのように変化していくか、今後の動向に注目したい。