Special Issue

<日本事務器 座談会>主要部門のキーマンが集結 展望を語る

2009/10/29 19:56

週刊BCN 2009年10月26日vol.1306掲載

 中堅・中小企業やヘルスケア、文教市場を得意とする創業85年の老舗SIer、日本事務器(NJC)。陣頭指揮を執る田中啓一社長は厳しい環境下でも前年度比プラス成長を見込み、「攻めの経営」を推進する。今回、BCNではその積極経営を支える事業推進本部のキーパーソン4人に集まって頂き、座談会を開催。攻めの経営を具現化するための施策・戦略を聞いた。

【参加者】
佐々木哲夫
事業推進本部 業務ソリューション事業推進部部長
岡山公彦
事業推進本部 医療・公共ソリューション事業推進部部長
林利也
事業推進本部 業種ソリューション事業推進部部長
平山宏
事業推進本部 プラットフォーム事業推進部部長


厳しい環境でもプラス成長を具現化する

 ──まずは、担当されている事業推進部門の役割を教えて頂ければと思います。

 岡山公彦
 担当は「医療・公共ソリューション事業推進部」、医療および公共機関向けビジネスです。医療分野は医療機関と介護福祉、保健機関、民間企業向けの健康関連システムの提供で、公共は主に学校向けソリューションの事業推進を統括しています。

 平山宏 「プラットフォーム事業推進部」では、基幹業務システムや情報システムを稼動させるIT基盤(プラットフォーム)をソリューションとして企画・販売するのがミッションです。サーバーやミドルウェア、ネットワーク、そして情報セキュリティなどハードとソフト問わず、多岐にわたっています。

 佐々木哲夫 私が担当する「業務ソリューション事業推進部」は、民間企業向けで業種・業界共通のソリューション提供を手がけています。販売、財務、給与システムのほか、グループウェアや文書管理などの情報系ソリューションなどが主な担当分野になります。加えて、全社的に力を注ぐSaaS型サービスの取りまとめ役も担っています。

 林利也 「業種ソリューション事業推進部」では、佐々木部長の部署とは対照的で、各業界独特のニーズに応えるための、業種に特化したソリューションの戦略立案を担当しています。なかでも、今力を注ぐのが食品業界で「COREPlus qbic Food(コアプラス・キュービック・フード)」というERPパッケージを中核に、食品業の業務にマッチした製品・サービスを展開しています。

上期の重点施策とその成果 SaaSに本腰、医療では新製品投入

 ──今年度も上期が終了しました。IT業界を取り巻く環境は厳しかったと思いますが、それでも田中社長はプラス成長を見込んでおられます。伸ばすための具体的な策は何だったのでしょうか。各事業推進部門で進めた戦略・施策を教えてください。

 林
 お客様は、景気後退の影響でIT投資を縮小する傾向が強いと思います。そのような中、食品業は急速にIT投資を増やしているわけではありませんが、落ち込みもそれほどないと感じています。他業種に比べて、環境には恵まれているのかな、と。

 上期は、生産や販売管理などの基幹システムを提案してもなかなか受け入れられないことが多かったので、「周辺から攻める」と言いますか、基幹システムに連携するソリューションの提案に力を注いできました。食品の衛生管理機能などが代表例です。「食の安全・安心」に対するお客様の関心は高いですから、上期の柱に据えて提案活動を推進しました。

 そしてもう一つのトピックスが、食品業向けだけではありませんが、今年4月にリリースした入出荷検品システム「COREPlus qbic ePick(コアプラス・キュービック・イーピック)」です。無線のハンディターミナル端末を活用して、入出荷検品やピッキング、棚卸など物流倉庫内の作業効率化に貢献するソリューションです。上期はこの新製品の告知・PR活動も重要な施策で、セミナーを勢力的に開催しました。好調で手ごたえを感じています。

 佐々木 業種・業界共通の業務ソリューションでは、主軸は財務や給与システムになりますから、この厳しい環境でもお客様にITのメリットを感じてもらえるような提案に知恵を絞りました。単純なシステム提案は通用しません。「システムを売る」という印象を与えないように努め、お客様の経営を支援する具体的なメリットを強く押し出してきました。

佐々木哲夫 事業推進本部 業務ソリューション事業推進部部長

 「利益創造セミナー」「コスト削減セミナー」「決算短縮セミナー」といった形でお客様が悩んでおられるような具体的なテーマでセミナーを積極的に開催。経営を改善するために財務システムがあるという打ち出し方をしました。かなり好評で、多くのお客様に集まっていただきました。それと、来年4月に「労働基準法」が改正されますので、給与システムでそれにフォーカスした告知・提案活動も進めてきました。その一方で、全社プロジェクトになっているSaaS型サービスでは、今年5月にグーグルのパートナーになり、オンラインアプリケーションサービス「Google Apps」を事業化、NJC独自のサービスを付加してどのように競争力あるサービスに仕立て上げるかを考えてきました。

 平山 当社はSIerですので、プラットフォーム製品機能にフォーカスするのではなく、お客様の課題解決にはどのようなソリューションが必要で、それを実現するために、どのようなプラットフォーム製品がそれを満足させるのかを考え、提案活動を進めています。

 上期は、「ICTによるコスト削減」というテーマで提案活動を推進してきました。シンクライアント、サーバー統合、FMCやWeb会議システムといったソリューションを活用することより、ICTコストをどの程度削減できるかを提案するわけです。

 岡山 上期はさまざまなトピックスがありました。まず医療向けビジネスでは、主力商品である医療事務システム「MAPSIBARS(マップスアイバース)」と、新総合健康管理システム「CARNAS(カルナス)」を刷新し、発売しました。「MAPSIBARS」は、NECさんと初めて共同開発した製品で、急性期と慢性期、精神科の患者様などを複合的に治療・診察するケアミックス向けの新機能を加えました。一方、「CARNAS」では大・中規模の健診施設でもご利用いただけるように、データ収集の迅速化や巡回健診業務の支援機能を追加しました。

岡山公彦 事業推進本部 医療・公共ソリューション事業推進部部長

 このほか医療では、NECさんと医療機関向けパッケージ開発を得意とするシーエスアイ(CSI)さんとの共同開発による「地域医療連携ネットワークサービス(ID-Link)」の販売を開始。複数の診療所や病院がもつ医療情報を共有できるサービスで、このサービスを取り扱い開始できたのも上期の大きな成果です。

 そして、新たに市場参入したのが、民間企業向けのヘルスケア市場です。ある大手の流通・小売業では、ご来店のお客様向けに健康相談や生活改善の提案、健康情報の提供を新サービスとして展開しています。そして、それを支えるITインフラの構築も含めてNJCが担当させていただきました。新たな市場にも進出でき、下期には小売・流通業だけでなく、薬局やドラッグストア市場に横展開する計画です。

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