Special Issue

シスコがスモール ビジネス製品を本格展開! 国内メーカー中心の市場を揺るがす新たなる挑戦

2011/01/11 19:55

 ネットワーク機器最大手のシスコシステムズ(平井康文社長、以下シスコ)が今秋、スモール ビジネス向け製品を本格展開する。2010年10月、100人未満の小規模ネットワーク向けに特化した「シスコ スモール ビジネス シリーズ」を製品ラインナップに追加。第1弾として設定管理が不要な「アンマネージド スイッチ」、優れた機能と高い性能をもつ「マネージド スイッチ」、さらに「ワイヤレス アクセス ポイント」をリリースする。

従業員100人未満のスモール オフィスに最適な製品をゼロから開発

 「シスコ スモール ビジネス シリーズ」のターゲットは、小規模ネットワークを利用する従業員100人未満の企業および事業所のユーザだ。スモール ビジネス マーケティング マネージャを務める前川充氏は、「専任のIT管理者がおらず、ネットワークの設定や運用に悩みを抱えているお客様に対して、安全で確実につながるネットワーク環境の構築をサポートしていきたい」と、新シリーズ導入の理由を話す。

 シスコが国内でスモール ビジネス向け事業に本腰を入れる背景には、海外市場での成功がある。同社は2年前から英語圏でスモール ビジネス向け事業をスタートし、スイッチの販売でアメリカやドイツ、イギリスでトップシェアを獲得するなど、着実に成果を収めてきた。そこで今回、満を持して日本市場でも販売するに至ったわけだ。

 2010年10月にスイッチとワイヤレスアクセス ポイント製品を投入するのを皮切りに、2011年1月下旬からネットワークストレージ(NAS)が発売となり、ルータやセキュリティ製品を順次発売し、小規模ネットワーク構築に必要なラインナップを揃える予定だ。

 前川氏は、「既存のシスコ製品とは価格・機能ともに異なる位置づけのため、競合が起こることはない。シンプルなモデルなので、小規模の企業でも手軽に導入できる」と、メリットをアピールする。本シリーズ製品はスモール ビジネス向けを意識して、使いやすさとコストを考えながら、デザインやパッケージをゼロから検討、開発した。

専任のIT管理者がいないSOHO・小規模ユーザでも、
容易な設定・導入・運用が可能なシスコ スモール ビジネス製品。
 

パートナー戦略を重視、サポートや価格などの面でも魅力ある製品・仕組みを提示

 これまで100人以上の大規模・中規模ネットワーク ユーザを中心にセールスを展開してきたシスコにとって、100人未満の企業を対象とするスモール ビジネス向け事業は、新たなチャレンジとなる。そこで同社は、販社となるパートナー企業との連携が販売戦略上、必要不可欠と判断し、積極的にパートナーシップを結ぶ考えを明らかにしている。

 同社は以前にもスモール ビジネス向けにいくつかの製品を投入してきたが、日本語化やサポート体制が十分とはいえなかった。また、「シスコの製品は難しい」というイメージを抱いている販社も少なくない。前川氏は「今までとは気合いの入れ方がまったく違う」と強調したうえで、「欧米での実績から、日本のパートナー様にご満足いただける製品に絞り込み、完全日本語対応で提供する」と説明する。

 従業員100人未満の企業に最適な製品を最大手のシスコがゼロから開発したことは、顧客に圧倒的な安心感を与え、商談を進めやすい。そのうえ、他社製品に比べて低価格ながらも、「パートナーが得られる利益が決して少なくならないよう、シスコは工夫している」(前川氏)。

 また、サポート体制をこれまで以上に充実させており、販社からの手離れが良いのも特長だ。購入前後のサポート窓口の一本化に加え、豊富な知識をもつスモール ビジネス専任のエンジニアが販社からのプリセールスの問い合わせにも対応する体制を整えているので、販社は煩わしいサポートから解放される。このほか、販売後の製品を管理するツールの提供、トレーニングの実施などを通して、シスコがパートナーを全面支援していく。

 品質の高いシスコブランドは、顧客にとって大きな魅力だ。その日本語対応製品を低価格で提供でき、導入後のサポートも万全であるというのであれば、販社として黙って見過ごす手はないはずだ。

シスコシステムズ合同会社 マーケティング、パートナー マーケティング、
スモール ビジネス マーケティング マネージャ 前川充氏

スイッチを核にネットワーク機器の導入を促進

 10月にリリースしたスイッチ製品は「アンマネージド スイッチ」と「マネージド スイッチ」の2種類。ローエンドの「アンマネージド スイッチ」は、全モデルがファンレス設計で、電源投入後に自動で設定が開始されるプラグ アンド プレイに対応。5ポートから24ポートまで、7つのモデルを揃える。ハイエンドの「マネージド スイッチ」は、遠隔地からの設定管理も可能だ。スイッチのラインナップには、ファーストイーサ、ギガビットイーサに加え、イーサネット配線で電源を供給するPoEモデルも用意する。

 スイッチと同時発売のワイヤレス アクセス ポイントでは、最新の無線LAN規格「IEEE 802.11n」に対応。最大300MB(理論値)のパフォーマンスを実現する。PoE受電にも対応し、設置場所の自由度も高い。一方、2011年初頭に発売予定のルータは、豊富なセキュリティ機能が特長だ。SPIファイアウォールやIPS(不正侵入防御システム)、コンテンツ フィルタリングなどのセキュリティ技術を標準搭載。社内ネットワークの入り口と言えるルータで不正なアクセスを遮断しながら、高速ネットワーク構築をサポートする。

 各製品に対応した、ネットワーク接続されたデバイスを自動検知して設置管理をサポートするPCで動作する無償ネットワーク探索ユーティリティが利用できる。専任のIT技術者が不在の企業には心強い機能といえるだろう。

アンマネージド スイッチ SG100D-08-JP。スイッチ製品と共に
ワイヤレス アクセス ポイントも同時に市場投入した。

 スイッチ製品は日本市場でも多くの需要があり、スイッチを核にネットワーク機器の導入が拡大する可能性は高い。シスコは、顧客のビジネスを世界につなげるために、信頼性に優れたシスコならではの製品をパートナーとともに販売し、スモール ビジネス向け事業を拡大していく考えだ。

ファンレス設計の「アンマネージド」、
すぐれたパフォーマンスと豊富な機能の「マネージド」。
  • 1

関連記事

シスコシステムズ社長に平井副社長が就任

シスコとネットアップ、FCoEを仮想化環境向けに提供、「VMware」でDC最適化へ

シスコ、CoreOpticsを買収、高速ネットワーク提供を強化

シスコシステムズ SMB事業で2ケタ成長維持へ ディストリ拡大で全国に販社網

シスコシステムズ サーバー市場に一石を投じる

外部リンク

シスコシステムズ合同会社=http://www.cisco.com/jp/

「スモール ビジネス シリーズ」=http://www.cisco.com/jp/go/sb