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<クラウド特集>クラウドを伸ばすスマートデバイス SaaSとタブレット・スマートフォンをセットに

2012/10/25 19:56

週刊BCN 2012年10月22日vol.1453掲載

日本事務器
クラウド&モバイルビジネスを加速
社内導入のノウハウを付加価値に

 日本事務器(NJC)は、「民間企業」「ヘルスケア」「文教・公共機関」向けにITトータルソリューションを提供し、1万3000件を超えるシステムを構築・提供してきた実績をもつ。ここ数年、従来のオンプレミス型ビジネスに加えて、クラウドとモバイルソリューションに力を入れ、さまざまなことに取り組んでいる。今年度(2013年3月期)の下期が始まる直前の9月、これまでのクラウドとモバイルビジネスの取り組みと今後の戦略について、同社の田中啓一社長に聞いた。

●将来を見据え「変革」を推進
過去にとらわれない新事業を創出


田中啓一 社長
 田中社長は、IT市場の動向について「クラウドとモバイルソリューションに対するお客様のニーズは、急速に高まっている。とくにクラウドは、情報系システムだけでなく、基幹系にも浸透し始め、利用範囲が広がっている」と分析する。そのうえで、具体的な例として医療機関を挙げ、「病院は、一般企業よりもシステムのクラウド化は遅いとみていた。だが、いくつかの病院は電子カルテシステムをすでにクラウド化している」と説明。お客様のクラウド化は、想像した以上の速さで進んでいるという。

 こうした中、田中社長はクラウドとモバイルは常にセットと考え、これらを活用した新たなソリューションを創出する考えを示している。

 「クラウドとモバイル端末が普及すれば、ユーザーは、すべての仕事をオフィスのパソコンでこなすことが大前提ではなくなる。仕事の内容と状況に合わせて、システムにアクセスする端末を選び、いつでもどこにいても仕事ができるようになる。つまり、何かシステムにアクセスするような作業が発生したときに、その場でできるようになるため、ユーザーの業務フローは現在とは変容し、求めるITも変化するはず。ITソリューションプロバイダの私たちは、こうしたユーザーを取り巻く環境の変化に合わせて、提供するシステムを再設計する必要があるだろう」と、田中社長は示唆する。また、今後求められるシステムの設計方法について、「機能優位性よりも時代追従性を最重要ファクターと位置づけて、他のサービスを利用したタマ作りをすべき」と、システムの開発手法も見直していることも明かす。

●まず自社で先行導入
そのノウハウをソリューションに


 NJCは、数年前からクラウド事業を推進している。情報系クラウドでは、「Google Apps」をGoogle Appsの正規販売代理店として拡販し、基幹系クラウドでは、お客様の要望に合わせてプライベートクラウドを構築している。今年度(2013年3月期)の上期までで「着実に実績を積み上げている」(田中社長)が、下期以降は複数のクラウド製品を体系立てて、お客様にわかりやすく提案することに注力するという。

 また、複数の新製品を投入する計画だ。医療機関向け製品・サービスでは、シーエスアイとの共同開発により、今年4月に販売開始した電子カルテシステム「MI・RA・Is(ミライズ)シリーズ」のスマートデバイス対応システムをバージョンアップする。従来、スマートデバイスでは、診療情報や検査結果、画像などのデータ閲覧のみだったが、バージョンアップ版では診療データなどの入力も含めてできるようになる。

 医療分野以外では、今年4月に発売した中堅・中小企業(SMB)向け統合業務システム「CORE Plus NEO(コアプラスネオ)」は「つながる」をキーワードにスマートデバイスや他のクラウドシステムとの連携機能を追加し、2013年1月に新バージョンとして発売する予定だ。今年8月に発表したクラウド型運用支援サービス「Ezharness(イージーハーネス)」ではラインアップを強化し、事業継続計画(BCP)を実現するための関連サービスや、お客様の情報システムをデータセンター(DC)で預かり、運用を代行するという開発・構築・導入・運用支援をしている当社ならではのサービスを追加する。文教・公共機関向けソリューションでは、大学/図書館向けのITサービスのラインアップを一新する計画もあり、新製品・サービスを続々とリリースする。

 クラウドとモバイル関連事業を強化するにあたり、NJCが大切にしているのが「自社導入・利用する」ことだ。田中社長は「この種の商品は、機能・性能の良し悪しやスムーズな導入だけでなく、普及・定着するまでが導入成功の大きなポイント。試行錯誤しながら導入から定着までの課題解決策を見いだしている。こうした体験をベースに、当社が半年かかったようなことでも、お客様へは2週間で実現できるようなソリューションを提供していきたい」と意気込みを話す。例えば2009年に「iPhone」、10年に「Google Apps」、11年に「Salesforce Chatter」を導入し、すでに商品化している。

 NJCは、「『良い道具』を『役に立つ道具』へ」をキーワードに自社利用で得たノウハウもお客様に提供することで、唯一無二のソリューションを提供しようとしている。それを、田中社長は、「『ラストワンマイルの付加価値』と呼び、当社は、IT業界のバリューチェーンの最後、お客様と直接関われる立場にいるからこそ実現できる付加価値をお客様に提供していく」と強みを話す。

 こうした強みを活かし、従来型のSIビジネスを維持しながらも、それに固執せずに新たな領域に挑戦しているNJC。将来を見据えた取り組みと戦略に今後も注目していきたい。

(写真/横関一浩)

●「第3回 クラウドコンピューティングEXPO 秋 」に出展

 NJCは、「『良い道具』を『役に立つ道具』へ」をコンセプトに、リード エグジビション ジャパンが10月24~26日に開く「第3回 クラウドコンピューティングEXPO【秋】」(幕張メッセ)に出展します。NJCブースでは、創業88年の老舗企業が変身したクラウド実践ノウハウを、展示とセミナーでご紹介します。ブースナンバーは「3-36」。ぜひお立ち寄りください。

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外部リンク

日本事務器=http://www.njc.co.jp/