「BCN AWARD」の通信ソフト部門を13年連続で制したインターコム。パソコンFAXの「まいと~く FAX」、リモートコントロールソフトの「LAPLINK」を核に、前年と比べて販売本数シェアがアップ。67.3%という圧倒的なシェアを獲得した。2012年6月に創立30周年を迎えたインターコムの高橋啓介社長は、スマートフォンやタブレットなどの「モバイル機器」と「クラウド」を今後のビジネス展開のキーワードに据え、全商品を対応させる方針を示している。
根強いFAXソフト需要 通信ソフトには大きな可能性
「BCN AWARD 2013」の通信ソフト部門No.1に貢献した製品は、累計で314万本以上を出荷しているパソコンFAXの「まいと~く FAX」とリモートコントロールソフトの「LAPLINK」だ。
「まいと~く FAX」は、家庭向けの「9 Home」と法人向けの「9 Pro」を店頭市場に提供。とくにSMB(中堅・中小企業)は受発注業務にFAXを使用するケースが多く、根強い需要があるという。一方の「LAPLINK」は、インターネット経由で遠隔地のパソコンを操作できるソフトだ。社内外のサーバーのメンテナンスや社員のパソコンのトラブル対応に活用でき、時間やコストの削減などシステム担当者の負担を減らすことに貢献する。
高橋社長は、「通信ソフトは、売上高が前年から17%伸びている。とくに『LAPLINK』の伸びが目立つ」という。そして今後の見通しを、「タブレット端末の普及で、需要はさらに拡大するだろう。『LAPLINK』なら、ヘルプデスクから直接端末を操作してサポートできるからだ。さらにモバイル端末が進化したことで、例えばタクシーにAndroid端末を設置して車両位置を把握するなど、新しい用途も出てきて、大きな可能性がある」と説明する。インターコムは、2012年11月にクラウド型のリモートサポートソフト「LAPLINK ヘルプデスク」のオプションとして、MacやAndroid端末向けのリモートサポート製品を発売。WindowsとMacが混在するユーザーの操作支援や保守など、幅広いニーズに応えている。
「もはやパソコンではない」 新ソリューションで需要創出

代表取締役社長
高橋啓介 氏 高橋社長は、「今後のビジネスの核は、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル端末。もはやパソコンの時代ではない」という。ただし、「パソコンに置き換えるのではなく、両者を組み合わせて新しい用途を創造する」と強調する。
もう一つ、高橋社長がキーワードに挙げる「クラウド」への対応では、情報漏えい対策・資産管理ソフト「MaLion 3」の機能をクラウドサービス化した「MaLion Cloud」の提供を2012年10月に開始した。EDI製品でも、サトーが9月より提供を開始した流通BMSのデータ共通化サービス「RetailComPass」について、サトー、インテックとともに共同開発を行った。高橋社長は、「当社の全製品をモバイル端末とクラウドに対応させる」と宣言する。
インターコムの売上構成比は、現在、パッケージソフトなどのオンプレミス型が約7割でサポートサービスが約2割、残り1割がクラウド。クラウドはまだ小さいが収益率は高い。高橋社長は、「将来は、オンプレミス型で提供している機能のほとんどをクラウドサービスに置き換えていく」という。また店頭市場についても「個人向けの店頭販売は厳しさを増しているが、お客様の認知度・理解度を上げるという役割は大きい。活性化を模索する」という。
インターコムは、2012年、省エネプロジェクト「東大グリーンICTプロジェクト」(GUTP)が実施したIEEE1888対応機器の相互接続試験に参加して成功を収めた。今後は、消費電力量などオフィスの消費エネルギーを一元管理できるシステムを商品化し、「新ソリューションで需要を創出したい」と強い意欲をみせている。

(写真左から)まいと~く FAX 9 Pro、まいと~く FAX 9 Home、LAPLINK 13【Analyst Comment】
パソコン通信から始まり、FAXソフトや遠隔管理ソフトなどへと広がってきた通信ソフト市場。スマートフォンやタブレット端末が急拡大している昨今では、通信はソフトにとって必須の機能だ。クラウドを活用したソフトや、アプリにも注目が集まっており、こうした技術背景をもつ企業にとっては大きなチャンスといえる。(BCNアナリスト・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。