バブル崩壊以降の長期間にわたる景気の低迷やリーマン・ショック、東日本大震災などの影響によって、設備投資をしたくても実行できない企業が多かった。しかしここ数年、震災からの復興需要が本格化するなどの追い風を受け、大規模企業を中心として設備投資に踏み切る企業が増えている。昨今は、政府の景気刺激策も奏功し始めており、市場が大きく変化する兆しがある。この特集では、IT市場の現状や予測などを交えて、今後のITビジネスについて考察した。

 調査会社のIDC Japanが公開している「国内産業分野別企業規模別IT支出動向および予測」の「国内IT市場 企業規模別 前年比成長率の予測」による2012年のIT支出額を企業規模でみると、小規模企業(100人未満)が対前年比1.4%%減の1兆1491億円、中小規模企業(100~499人)が同0.5%増の1兆5663億円、中堅企業(500~999人)が同0.5%増の8533億円、大規模企業(1000人以上)が同1.7%増の6兆720億円と予測している。経営体力のある大規模企業から、IT支出が増えている状況がこのデータからもうかがえる。

 現在、回復傾向にあるIT市場だが、その市場をけん引しているのがITサービスといえる。IDC Japanの「国内ITサービス市場予測」によると、2012年の国内ITサービス市場は前年比1.9%増の4兆9369億円となっており、2008年以来4年ぶりのプラス成長となっている。このプラス成長の要因を「世界的な景気の後退や震災などで延伸されていた支出が再開されたため」と分析している。企業の景況感は、決して順風満帆とはいえないかもしれないが、電力問題や震災対応などの緊急時対応が一段落し、通常の業務に集中できる環境が整い始めていることから、これまで繰り延べていた投資計画が実行に移され始めていることが推測できる。

 なお今回の調査では、システムインテグレーションなどのプロジェクトベース市場が伸びている。しかし、この傾向は続かず、今後のけん引役はアウトソーシングや金融業に移っていくと予測されている。今後のビジネスを考慮すると、「アウトソーシング」がキーワードになりそうだ。

 アウトソーシングは、「コスト削減」のために利用される手法だ。開発や管理など何らかの業務をアウトソーシングするだけではなく、ITシステムをアウトソーシングするクラウドサービスなども活用され始めている。クラウドを活用すれば、サーバーなどの運用管理業務からも解放され、保守費用も不要になることから、利用する企業が増えている。

 調査会社のミック経済研究所の「クラウドサービス市場の現状と展望2012」によると、クラウドサービスの市場規模は毎年伸びており、2020年度には2010年度比で257%伸長すると予測している。IT市場のなかでも大きく伸びる市場だと予測しているのだ。今後のIT市場は「クラウドサービス」頼みとなることは、これらの調査会社のデータからも明らかになっている。

 このように伸長が予測されているクラウドサービス市場だが、この市場で成功するのは容易ではない。一時期、クラウドサービスに多くのベンダーが参入した時期があったが、サービスインから数年で終了したプロダクトも少なくない。

 サービス構築に費やした投資を回収するまでに時間がかかることや、思うようにユーザーが集まらないことなどのほか、これまでパートナービジネスを展開し拡販してきたベンダーがクラウドサービスを提供したとたんに、直販のノウハウがないまま新たなサービスを運営してしまい、拡販しきれていないというケースも目立つ。

 一方、クラウドサービスで成功しているケースをみると、いくつかの傾向がある。以前からクラウドサービスを提供していて実績があるベンダーや、パートナー企業の強みを生かせるサービスをもつベンダー。また、パソコンだけではなく、スマートデバイスなど新しい端末にもサービスが対応していたり、生産系向上や業務効率改善という課題解決だけではなくBCP対策など、いざというときにも活用できる柔軟性があるサービスをもつベンダーなどだ。

 これからクラウドビジネスに参入しようとする場合、一からサービスを構築するよりも、実績のあるクラウドサービスを活用して、自社の強みとして販売するほうがビジネスチャンスは大きいだろう。この特集では、今後のビジネスの種となりそうな新しいサービスを紹介していく。