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クラウディアン クラウド・ビッグデータ時代の最適解 アプライアンスの投入で企業への浸透を狙う

2014/06/26 19:55

週刊BCN 2014年06月23日vol.1535掲載

 プライベートクラウドの構築とビッグデータの活用が進むなかで、「オブジェクトストレージ」が注目を集めている。この分野のリーダーであるクラウディアンが提供するサーバーソフトウェア「Cloudian」は、国内外の大手サービスプロバイダのストレージ基盤に採用されている。グローバル市場では、今年の第1四半期(1~3月)だけで昨年1年間の販売数に並ぶほど、販売が好調だ。クラウディアンは、「Cloudian」を拡販するために、さまざまな企業を対象としたアプライアンスモデルを投入して販売体制を強化していく。


さまざまなストレージ環境でのハイブリッド運用を低コストで

本橋信也
取締役
経営企画室長
 ビッグデータの活用に向けて、企業内に蓄積されるデータが増加している。とくに増加しているのは、オフィス文書や各種ログ、画像などの非構造化データだ。ビッグデータの分析は、こういった膨大な非構造化データや、その相関関係、さらには10年分のデータを経年分析するというケースもある。ところが、こうしたデータはテープなどに保管されていることが多く、すぐには利用できない。これらを低コストで保存し、すばやくオンライン上で利用できれば、ビッグデータの活用はいっそう広がっていくだろう。

 クラウディアンの「Cloudian」は、オブジェクトストレージ技術を使って企業のデータを効率的に活用できるストレージシステムを構築するサーバーソフトウェアだ。経営企画室長の本橋信也取締役は、「複数のサーバーにインストールすると、分散処理技術によって各サーバーの内蔵ディスクを仮想的に統合・制御できる。安価な汎用サーバーを使用して、複数のユーザーが同時に共有できる一つの高性能なシステムが構成できる」とメリットを語る。

 一般的に、更新頻度の高いデータはSANやNASなどの高速ストレージに、アーカイブデータはテープなどに保管される。低コストで大量に保管したい非構造化データについては、フォルダのような階層構造ではなく、データをフラットに格納するオブジェクトストレージが適している。データの格納場所に制約がないことに加え、物理的な場所に縛られることなく、容易にデータを呼び出すことができるからだ。

 当然だが、ファイル/ブロックストレージとオブジェクトストレージは、それぞれにメリットとデメリットがある。本橋取締役は、「二つのストレージは対立する関係ではなく、データの種類や用途に応じて使い分ける補完関係にある」と指摘する。具体的には、基幹システムなど高速ネットワークに接続されている更新頻度の高いデータにはファイル/ブロックストレージ、インターネットなど広域網を経由した更新頻度の少ない大量データの保存にはオブジェクストレージが適している。とくに「Cloudian」であれば、独自開発の「HyperStore」を実装しており、大量で小さなデータはNoSQL(Not only SQL)データベース、大きなデータはファイルシステムに自動的に保管することができ、さまざまなデータサイズに応じてデータの読み書き性能を最適化している。

 「Cloudian」のもう一つの強みは、クラウドストレージサービス、Amazon S3のAPIに完全準拠していること。これによって、対応するデータ管理ツールやアプライアンスなどがそのまま利用できる。Amazon S3に接続するインターフェースを備えた企業向けアプリケーションやサービスはすでに数百種類あるが、「Cloudian」はその多くから互換性を公式認定されている。この高い互換性により、一つのAmazon S3対応アプリケーションで、機密情報や個人情報など、社外に出したくない情報を従来のオンプレミスに残し、それ以外のデータをクラウドで保管するというハイブリッド環境での運用も可能になる。

業種・業務や用途に特化したソリューションを強化

 「Cloudian」は、NTTコミュニケーションズやニフティなどの大手サービスプロバイダを中心に、サービス事業者のストレージ基盤に採用されている。しかし、「Cloudian」は決して大規模ユーザー限定の製品ではない。規模の大小を問わず、さまざまな企業で柔軟に利用できるのだ。ほかのオブジェクトストレージ製品の多くは、ペタバイト級の大規模システムを基本に設計されているので、大企業やサービス事業者以外での導入は難しい。本橋取締役は、「『Cloudian』は、サーバー2台構成からのスモールスタートに対応し、データ量の増加とともに、数ペタバイトといったウェブスケール(クラウドスケール)にまで対応できる高い拡張性がある」と説明する。

 クラウディアンは、「グローバル」と「エンタープライズ」市場で販売強化を打ち出している。グローバルでは、「今年の第1四半期だけで、昨年の1年分の販売数に並んだ」(本橋取締役)というほど、販売は好調だ。

 エンタープライズ市場に向けては、業種や用途に特化したソリューションを強化している。具体的には、医療など高解像度の画像データを使うユーザー向けのホスティングサービスや、複数拠点でのファイル共有など開発者向けのシステム、BC(事業継続)/DR(災害復旧)やバックアップソリューションへの活用を提案している。

 本橋取締役は、「国内外でお客様に密着したサービス事業者のストレージ基盤として導入される例が増えている。これらの事業者は業種・業務や用途に特化したソリューションで付加価値を提供することで、価格競争に陥らずに利益を確保している」とアピールする。

安価で簡単な初期設定だけで使えるアプライアンス

 クラウディアンは、「Cloudian」を容易に導入できるハードウェア・アプライアンスのラインアップを、7月にパートナーとともに揃える。あらかじめ「Cloudian」がインストールされ、最適設定されているので、Amazon S3対応のアプリケーションを簡単な設定だけですぐに使用できる。

 また、バックアップやファイルの同期・共有というアプリケーションをパッケージにしたソリューションもあわせて提供する予定だ。特定のハードを使用したいというニーズに対しては、パートナーを通じてリファレンスモデルを提供する。同時に、全国対応の24時間サポートができるパートナーを増やしていく。

 「さらに簡単、便利な製品とし、より多くのお客様に活用していただきたい」と、本橋取締役は意気込む。
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外部リンク

クラウディアン=http://www.cloudian.jp/