神戸製鋼グループの神商精密器材(蘇州)(福元崇史総経理)は、金属ターゲット材や、液晶パネル製造装置向けの大型部品、アルミ板素材の加工・製造・販売を手がけている。同社は、少量多品種の生産を特徴としており、製品品目が増加するにつれて、人手によるExcelでの情報管理に限界がみえてきた。そこで、浦楽熙普信息科技(上海)=プロシップ(上海)が提供する現物管理ソリューション「ProPlus Pit」を活用し、原材料を調達してから製品として出荷するまでの状況を一元的に管理できるシステム環境を整備した。
原材料の複雑な現物管理にも、柔軟性に
富んだ「ProPlus Pit」は容易に対応できた
●人手によるExcel管理に限界 神商精密器材(蘇州)は、液晶パネルメーカー向け金属ターゲット材の加工・販売や、液晶パネル製造装置向け大型部品の製造、神戸製鋼が生産するアルミ板素材の中国企業向けの加工・卸売を事業に据えている。強みは、少量多品種の製品を生産していること。一品目を一定数量単位で生産するロット生産方式ではなく、顧客の要望に応じて、個別の製品を柔軟に生産する体制をとっている。製品によっては、一点ものの生産もある。
2010年末の設立以来、1万点超の品目を生産してきたが、製品品目が増えるにつれて、情報の管理にかかる手間も増えてきた。これまでは、各製品の原材料の調達や、加工・製造・生産、出荷の進捗状況について、営業や生産、品質管理の各担当者が、個々のPCのExcel上で管理していた。しかし、情報をスムーズに共有できないうえに、入力ミスのリスクも大きい。そこで、福元崇史総経理は、原材料の調達から製品化後の出荷までの状況を、ITを活用して管理することを検討した。
ところが、神商精密器材(蘇州)は従業員数70人規模の中小企業だ。情報システムの専任者はいない。福元総経理は、「本来ならば、いろいろなIT製品を検討したいが、IT要員はいない、マネジメント層も本業が多忙で時間をかけられない。さらに、神戸製鋼グループの一員であるとはいえ、独立採算方式であることから、多額のIT予算をかけられないというネックがあった」と当時を振り返る。
そのため、大規模な業務システムをスクラッチ開発するという選択肢は、当初から除外。まずは、社内のファイルサーバー上に、各人が管理しているExcelファイルを共有することを試みた。しかし、「実際には、Excelファイルのフォーマットが統一されておらず、今、原材料がどの状況にあるのかを読み取りにくかった。また、全体の生産状況を把握して、生産計画を練ることも困難だった」。そこで、比較的安価に導入できる汎用的なパッケージソフトウェアを活用できないかと考えた。
●現物管理の機能を拡張
浦楽熙普信息科技(上海)
渋谷翔太
営業部担当 そんな矢先、浦楽熙普信息科技(上海)からクラウド型の現物管理ソリューション、ProPlus Pitの提案を受けた。ProPlus Pitは、企業が保有する資産や備品などの物品にラベルを貼り付け、これをスマートフォンのバーコードリーダでスキャンすることで、現物管理を実現するもの。一般的に、現物固定資産の管理に活用されるケースが多いが、福元総経理は、「固定資産ではなく現物を原材料に当てはめて、入荷の記録や、現在の保管の状態、製品化の進捗、出荷予定などの情報までを含めて一元的に管理できないかと考えた」。パッケージ製品への項目追加および設定の変更であれば、スクラッチ開発と比べて開発費はかからない。また、ProPlus Pitはクラウド型の提供なので、初期投資を抑えて月額制でサービス利用できる。実際、浦楽熙普信息科技(上海)の渋谷翔太・営業部担当は、「ProPlus Pitは、柔軟性が高く、お客様の要望に応じた設定が行える。神商精密器材(蘇州)のご要望は、標準機能としてつくり込める範囲のものだった」という。
神商精密器材(蘇州)は、2014年末にProPlus Pitの本格稼働を開始。すでに利用開始から8か月が経過したが、福元総経理は、「リアルタイムで、一つひとつの原材料の状況を把握することができるようになった」と笑顔を見せる。例えば、顧客から納品の前倒しを依頼された際には、ProPlus Pit上で瞬時に原材料の状態や生産状況を把握して、わざわざ各部門の担当者に確認を取ることなく、すばやく回答できるようになった。このことは、顧客満足度の向上にもつながっている。ProPlus Pit上のデータは、統一したフォーマット形式なので、レポート・グラフ化によって全体の生産状況を把握し、今後の計画を練ることも容易になった。また、従業員は、作業現場で迅速に原材料の状況を入力・更新できるので、Excelファイルに入力する手間が省け、生産性の向上につながっている。
福元総経理は、「システムのおかげで、今年度の事業は計画通りに進んでいる。もし、現在もExcelで管理していたかと思うと、ぞっとする」と語っている。