コンビニエンスストアチェーンを手がけるローソンは、中国国内に約600店舗を構えている。2012年5月に設立した中国統括会社の羅森(中国)投資(ローソン中国、三宅示修総経理)は、これまで上海、重慶、大連、北京にある各事業会社が個別に構築してきた業務システムの統合を進めてきた。しかし、先行して店舗システムや受発注システムなどのシステム統合を進めてきた一方、店舗の什器など「モノ」の管理に関わるシステム化は遅れをとっていた。そこで、恩梯梯数据英特瑪軟件系統(上海)(大利秀幸総経理)が提供するシステム共通基盤「intra-mart」を活用し、資産管理システムを構築。資産の見える化と業務の効率化に成功した。
羅森(中国)投資有限公司所在地 上海市黄浦区淮海中路283号香港広場2703-08室
設立 2012年5月3日
業種 小売業
店舗数 597店舗(2015年10月末日時点)
事業内容 中国におけるコンビニエンスストア
「羅森(LAWSON)」のチェーン展開
URL http://www.chinalawson.com.cn 紙ベースの資産管理が負担に

石田剛彦IT総部総監 ローソン中国では、これまで、各事業会社が抱える資産の管理をすべて紙ベースで行っていた。しかし、店舗数の拡大に伴い、店舗に設置する什器などの資産は増加。棚卸忘れや記入間違いなどの人的ミスも起こるようになってきた。
例えば、資産の転用時だ。コンビニエンスストアチェーンは、新規店舗の開店と、不採算店舗の閉店を繰り返すスクラップ・アンド・ビルド型のビジネスであることから、資産は店舗間で転用されるケースが多い。しかし、IT総部の石田剛彦氏は、「従来の紙ベースの管理では、A店にあるはずの資産が、B店で転用されているにもかかわらず、台帳に記載されていなかったり、二重に記入されていたりといった事態が生じていた」と説明する。ローソン中国では、毎年、年度末の12月に資産の棚卸を行い、現物と台帳の照らし合わせを行っているが、資産の紛失などによって結果が一致しない事態も起きていた。また、こうした現物と台帳の突き合わせ作業は紙ベースで行うため、5人のスタッフが朝から晩まで、2週間をかけて行わなければ終わらず、本来の業務に集中することを妨げていた。資産の状況を見える化して、適切なコスト管理を行うとともに、業務の効率化を実現することは、ローソン中国にとって不可欠な課題となっていたのだ。
また、「店舗数が少ない時から、しっかりした資産管理の仕組みを構築しなければ、規模が拡大してからでは間に合わない」という危機感がローソン中国にはあった。
低コスト・短納期での導入に期待
そこで、資産管理のシステム化を検討し、要望をまとめたRFP(提案依頼書)を複数のベンダーに提出。石田氏の狙いは、第一に、既存の財務システムを有効活用し、財務や建設、運営、総務、IT部門など担当者が、開店や閉店する店舗の稟議書作成時など、必要な時に最新の資産管理情報を把握できるようにすること。第二に、店舗マスタなど既存システムとのデータ連携を行い、資産管理のシステムと二重の運用をしないですむようにすること。第三に、現場の作業員の負担を増やさないために、モバイルデバイスを用いた棚卸の機能や、稟議書向けの明細作成機能を搭載して、作業の効率化を実現することだった。
最終的に選択したのは、システム共通基盤「intra-mart」を活用した資産管理システムの構築だ。「intra-mart」は、短期間でシステムを開発できる特性をもち、モックアップを用いた要件定義で手戻りがなく、低コスト・短納期での導入を実現できる。実際、「intra-mart」を提案した新日鉄住金軟件(上海)(NSSOL上海)の見積もり金額は、当初予算を大幅に下回った。もちろん、他社ベンダーよりも安い。
また、NSSOL上海の提案内容も充実していた。要望通り、スマートデバイスのバーコードリーダを活用して、簡単に棚卸を行うことができる機能や、システム上の資産管理情報を活用して、稟議書向けの明細作成を簡易化できる帳票機能を提案したほか、コスト管理につなげられる資産管理情報の分析機能も提案内容に含まれた。
その後、2014年5月にシステム構築のプロジェクトを開始し、わずか6か月後の11月には、稼働に漕ぎつけることに成功。石田氏は、「実際に使ってみて、UI(ユーザーインターフェース)が非常に使いやすい」と語る。14年末の資産棚卸では、現物と台帳の一致率が急上昇し、差額をほぼ解消することができた。以前は5人で時間をかけて行っていた突き合わせ作業も、1人が1日かければ終えられるようになった。
石田氏は、「結果として非常に満足。すでにシステムを活用した資産管理は、業務プロセスの一環として社内に浸透している」と語る。現在は、見える化した各事業会社の資産状況を分析・比較して、よいところを他社に応用させたり、将来は日本や海外の他の拠点に対しても、今回の成功例を広めていくことを検討している。