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<サーバーメーカー座談会2016>サーバーはIoT時代のプラットフォーム クラウドとのハイブリッド環境に需要あり

2016/12/22 19:56

週刊BCN 2016年12月19日vol.1658掲載

サーバーは必要か!?「ハイブリッド」「ハイパーコンバージド」がカギ

──クラウド時代におけるサーバーのメリットをどうお考えでしょうか。

魚田 ワークロードにより外に出せるものと出せないものがあるため、ハイブリッド環境が求められています。その使い分けの一つとして、当社のクラウドBlueprintソリューションの一つとして、Microsoft Azureと連携し、必要なワークロードをプライベートクラウドに残し、同時にAzureにバックアップもできるハイブリッドシステム「DHCS(Dell EMC Hybrid Cloud System for Microsoft)」を提供しています。


 もう一つは、通信コストとシステムの応答速度の問題から、データ量が膨大だとオンプレミスが必要というニーズに対してビッグデータ/HPC BlueprintとしてHadoopやディープラーニングソリューションを提供しています。

 私たちも、クラウドとオンプレミスの二者択一ではなく、ユーザーのやりたいことに最適なソリューションでお応えするというスタンスです。当社はハード専業メーカーであるため、必要に応じて、さまざまなパートナーの方々と競合せずに協業できる点もメリットです。今も、すべてがクラウド志向ではなく、依然としてオンプレミスのニーズもあると考えています。実際、お客様の半数はサーバーの保守切れの後の対応を決めていません。

渡辺 当社では、神奈川と4月に開設した神戸のDCがあり、それぞれハウジングのエリアとクラウドのエリアを基幹ネットワークでつないで、重要度に応じた使い分けができる環境を提供しています。さらに他社クラウドやオンプレミス環境も含めたハイブリッド環境のニーズが多く、それらを一元管理できる統合運用管理機能も提供しています。

魚田 「ハイパーコンバージド」を求めるケースもあります。最近になって、ようやく帝京大学医学部附属病院様でのNutanixベースのDell EMC XCなどの公開事例が出てきたところですが、システムの運用は大変だが、クラウドには出せない制約があるユーザーの方々を中心に採用が進んでいます。

 ユーザー側で、5年間の運用を含めたトータルコストでクラウドとハイパーコンバージドを比較した結果、オンプレミスのままハイパーコンバージドを選択したほうがコストを抑えられることが判明し、採用が決まった事例が多くあります。ユーザーのサーバーに対する選択肢を広げる点でハイパーコンバージドは有力です。

渡辺 サーバーの使い方、役割が変わってきています。今後は、お客様サイドとDCで使い分けできる環境が求められるでしょうし、そうした商材を検討したいと考えています。また、お客様のクラウドの利用状況をしっかりと把握することで、次のビジネス提案につながるアクションを起こせるよう、販売パートナー様と一緒になって取り組みたいと思います。

サーバーの役割が変わるIoTのプラットフォームに

──今後のサーバービジネスをテーマに、キーワードを探っていきたいと思います。前回は、「IoT」などがカギになる可能性があるとの話が出たのですが、どう思われますか。

渡辺 セキュリティはカギになると思います。核となる一つが顔認証ですが、カメラ画像をサーバーに蓄積して自動解析することで、人物とその行動を人間に頼らず判別できるシステムを考えています。そうすれば、販売パートナー様がサーバーとセキュリティを組み合わせたソリューションを提供できる。そのための製品強化を進めています。


魚田 サーバー主導ではなくDell EMC DSSDというストレージ主導ですが、国内大手製造業様と共同で、ビルに設置した各種センサで集めたデータをディープラーニングで最適化して監視機器のメンテナンスに役立てることに取り組んでいます。このテストベッドは、IoT活用の標準化を推進する国際団体の「Industrial Internet Consortium(IIC)」に承認されています。こうしたデータ分析は、エッジで行う必要があるため、GPUを搭載したサーバーのニーズにつながると思います。

 IoTは、データの蓄積が前提で膨大なデータがないと学習ができないので、SDSを組み合わせた提案が有効なソリューションになると思います。ただ、こうしたソリューションそのものはすでに他社が手がけているので、当社はそのプラットフォームの提供を考えています。また、当社はコンシューマ製品も提供しているので、家庭内PCと家電が連携するホームIoTの提案も進めています。ビジネスとコンシューマのシナジーを発揮していきたいと考えています。

──IoTの切り口で、サーバーが分析を生かすためのプラットフォームになるということですね。

 システムの運用管理に悩みをもつお客様は少なくありません。できるだけ運用管理を楽にするため、サーバーを軸にソフトウェアを組み合わせてシンプルなインフラを提供することが目指す方向になると思います。パートナー様にとっても、導入費用が下がっても手離れがいいというメリットがあります。

魚田 IoTがもたらす膨大なデータ活用の時代に備えて、サーバーのメモリに大きな革新が起ころうとしてます。米国では、当社も積極的に設立に参画したGen-Z Consortiumなど、メモリのインターコネクト技術に関する標準化団体が10月に立ち上がり、今後2~3年で、サーバー単体としても10倍レベルのシステム高速化を実現する大容量のメモリが登場する可能性があります。IoT時代のリアルタイム処理のニーズに応えるため、サーバーは進化していくでしょう。

渡辺 IoTにおいて、エッジは不可欠ですからサーバーに一定のニーズがあるとは思います。ただ、ソフトウェアディファインド(SDx)のようにハードでなくソフトで役割を使い分ける形になっていくのではないでしょうか。そこに価値があって、われわれとしてもトライしていきます。
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『サーバーメーカー座談会2016』に関するアンケート
http://www.seminar-reg.jp/bcn/survey_servermaker2016/

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外部リンク

レノボ・ジャパン=http://www.lenovo.com/jp/ja/

NEC=http://jpn.nec.com/

デル=http://www.dell.co.jp/HybridCloud