SAPジャパンは、次世代ERP「SAP S/4HANA」を中核としたデジタルコアの成果を発表した。今回の成果のキーワードは「製造業に新しい競争軸を加える」。製造業ユーザーが、SAP HANAなどSAPが提供する最新のデジタルテクノロジーを駆使することで、より多くの顧客接点やサービス要素を組み入れ、売り上げや利益の増加につなげている。具体的にはどのようなビジネス革新を行ったのかを、SAPジャパンの内藤崇・パートナー本部パートナー営業部パートナービジネスマネージャーのプレゼンテーションをもとにレポートする。

欧州を中心とした成功事例“ビッグお手洗いデータ”を開発

内藤 崇
パートナー本部
パートナー営業部
パートナービジネスマネージャー

 「ユーザーのビジネスに新しい競争軸を採り入れ、競争力を高めるプラットフォームとなるのが、SAP HANAである。製造業であれば工場の外側にあるプロセスと連携し、従来の競争軸に新しい競争軸を付け加えることで、ゲームのルールを変えることにある」と内藤マネージャーは切り出した。

 まず、わかりやすい成功事例としてあげられるのが、欧州を中心にペーパータオルなどの製造・販売を手がけるオーストリアのハグレイトナー(HAGLEITNER)だ。

 ペーパータオルのユーザーであるオフィスビルや病院、スタジアムなどの施設のお手洗いに各種のセンサを取り付け、ペーパータオルやトイレットペーパー、石けんなどの消耗品を遠隔で監視。さらに利用者数から汚れ具合を予測して清掃サービスまで手がけるサービス事業を立ち上げた。

 お手洗いから上がってくる各種データはSAP HANAを基盤とするクラウドプラットフォーム「SAP HANA Cloud Platform」で収集、分析しており、同社ではビッグデータをもじって「ビッグお手洗いデータ」として活用。ペーパータオルを製造して販売する従来ビジネスを続けながら、継続課金型のサービスビジネスを新たにつくり出したわけだ。IoTを適切に活用し、データを分析することで、お手洗いの清掃領域で競合するライバル他社よりもすばやく、低コストでサービスを提供することに成功している。

好みのパーツを組み合わせる世界に1台の「俺だけのバイク」

 オートバイメーカーの米ハーレーダビッドソンは、ユーザーの好みのパーツを組み合わせるカスタマイズに対応している。従来は、ハーレーの工場で標準品を製造してバイクの販売店でカスタマイズしていたが、SAPのデジタルテクノロジーによって工場内でカスタマイズできるようにした。

 具体的には、ディーラー経由で寄せられたカスタマイズ情報を工場やサプライヤ(部品メーカー)とSAPシステムで共有し、工場からオートバイを出荷する時点で、「すでにカスタマイズされた世界に1台の『俺だけのバイク』に仕上げる」(内藤マネージャー)仕組みである。SAPのプラットフォーム上でERPや生産管理システム、販売店からの受注、部品メーカーへの発注などを統合することから、「IoP(インターネット・オブ・プラットフォーム)」と呼んでいる。

 SAPプラットフォームによるIoPによって、オートバイのカスタマイズに必要な生産リードタイムを従来の約21日から最短6時間に短縮。単なる「カスタマイズ」から「マス・カスタマイゼーション(量産カスタマイズ)」へと進化させた。リードタイムの短縮によって、生産コストも7%ほど削減できたという。

 伝統的なオートバイメーカーの強みは、代理店網の大きさ、交換パーツの流通量、ブランド力があげられるが、デジタル時代の強みは顧客との接点の大きさや、マス・カスタマイゼーションの実現、リードタイム短縮によるコスト削減が新しい価値として加わってくる。伝統的な部分での強みは維持したうえで、IoPによる“新しい競争軸”を加えることで、自身の価値をより高めることにつながる。

安定して供給するモデル「圧縮空気アズ・ア・サービス」

 三つ目の事例が、ドイツのコンプレッサ機器メーカーのケーザー・コンプレッサーだ。自社のコンプレッサ機器から集めたデータを、SAP HANA Cloud Platform上で分析し、コンプレッサの不具合を事前に予測して、ユーザーがいつでも安心してコンプレッサによる圧縮空気を利用できるようにした。使用状況や、メーカー側が予期していない使い方をした場合の故障予知をビッグデータ分析することで、以前よりも正確な不具合予測を可能にしている。

 ユーザーが必要としているのは「圧縮空気の安定供給」であることを重視。伝統的なコンプレッサ機器の製造・販売から一歩踏み出し、圧縮空気を安定して供給するサービス型モデルという「競争軸」を新たに加えている。前述のペーパータオルのハグレイトナー、オートバイのハーレーダビッドソンでも同様で、SAPのプラットフォームを活用して、伝統的な製造業に「新しい競争軸を加える」(内藤マネージャー)ことでビジネス革新を成し遂げている事例といえる。