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<畔上編集長が今、いちばん気になるHCI>連載 第13回 徹底分析 ネットワールドは開拓者だ! HCIチャンピオンは君だ!

2017/11/16 09:00

週刊BCN 2017年11月13日vol.1702掲載

HCIエキスパート育成プロジェクト「VxRailチャンピオンクラブ」が発足

 サーバーとストレージ、仮想化を一つのアプライアンスにまとめたハイパーコンバージドインフラ(HCI)。設計がシンプルで簡単に運用できると好評で、HCI市場は急激に拡大してきている。ところが、同じHCIでもメーカーによって注力ポイントが大きく異なるため、さまざまな情報が錯綜しているのが現状だ。そこでネットワールドは、同社が最も注力するHCI製品「Dell EMC VxRail」を対象に、Dell EMCとヴイエムウェアの協力のもと、ネットワールドパートナー限定の会員制コミュニティ「VxRailチャンピオンクラブ」を設立した。

急成長を続けるHCI市場

 VxRailチャンピオンクラブは、ネットワールドのパートナー限定の会員制コミュニティである。Dell EMCのHCI製品である「VxRail」について学び、情報交換を行う場とし、VxRail販売拡大を目指す。

 HCIは、仮想デスクトップ(VDI)やプライベートクラウドの構築に最適なインフラとして採用が進んでいる。また、複雑なストレージの設定から解放されるなど、設定や運用が容易なことから、パブリッククラウドと同等の扱いやすさがユーザーから評価、支持されている。
 

(写真左から)ヴイエムウェア佐賀文宣ゼネラルビジネス営業本部副本部長パートナービジネス担当、
ネットワールド黒川拓生執行役員マーケティング本部本部長、
Dell EMC(EMCジャパン)渡部洋史執行役員パートナー営業本部長

 「2016年の国内HCI市場は78億円で、5年で300億円に成長するといわれている。サポートやサービスなどを含めると、もっと大きな市場となる。実際、昨年くらいからユーザー企業からの引き合いが多くなっている」と、ヴイエムウェアの佐賀文宣・ゼネラルビジネス営業本部副本部長パートナービジネス担当は、HCI市場の状況について説明する。

 HCI市場には、さまざまなメーカーの参入が現在も続いていて、覇権争いはまだ始まったばかり。情報が錯綜していて、「HCIは複雑で扱いにくい」といった間違った認識をされることもある。また、ストレージと仮想化でバラバラな情報が飛び交っていて、これらを集約する場も求められている。VxRailチャンピオンクラブが発足したのは、そうしたニーズに応えるためだ。

HCI市場を牽引するVxRail

 ではなぜ、VxRailなのか。市場にはさまざまなHCI製品が投入されており、VxRailチャンピオンクラブを運営する各社も、他のHCI製品を扱っている。
   「VxRailは、当社とヴイエムウェアが共同で開発した製品。それぞれの強みを色濃く反映しており、当社のHCI製品のなかでも、差異化ができる製品としてVxRailにはとくに注力している。今年の7月からは、ネットワールドも加えた3社一体によるVxRailのサポート体制を実現した。サポート面でも顧客満足度も高い」と、Dell EMC(EMCジャパン)の渡部洋史・執行役員パートナー営業本部長は、VxRailに注力する背景を説明する。VxRailの国内シェアは2017年第2四半期が売上ベースで約31%、出荷台数は約43%。渡部執行役員は、売上ベースのシェアで50%を目指すとしている。

 ネットワールドの黒川拓生・執行役員マーケティング本部本部長は、VxRailに注力する理由として「自社で使ってきていて、社内に多くのノウハウが溜まっている。多くの販売実績もあり、VxRailのよさを一番把握しているのは、当社だと自負している」と説明する。VxRailチャンピオンクラブでは、ネットワールドのノウハウを会員に提供していく。そして、会員からのフィードバックを得ることで、さらに有益な情報に変えていく場とすることを期待している。

 ネットワールドは単なるVxRailのディストリビュータとしてだけでなく、販売した製品の出荷前にシステムの物理検証を行うための検証施設「プリ・インテグレーション・センター(PIC)」がある。
PICでは、導入前の検証などに活用できるようユーザーが自由にVxRailを使える環境の準備を進めているとのこと。今後は、VxRailチャンピオンクラブの会員とともに、PICのさらなる活用方法を模索していく予定である。

HCI市場を牽引するVxRail

 シンプルで扱いやすいHCI製品。なかでも、VxRailはネットワークの仮想化も視野に入れてコンバージドしているのが特徴である。サーバーとストレージだけでなく、ネットワークの3層を仮想化することで、柔軟性が高く、運用しやすい環境を提供する。また、拡張性にもすぐれていて、ノードごとの追加が可能になっている。

 「HCI市場が立ち上がったのは、ここ数年。まだ初期段階にあるが、確実に成長していく市場である。さらに、VxRailチャンピオンクラブをHCI市場の開拓者やリーダーが集まる場とすることで、市場拡大の勢いは間違いなく加速していく」と、Dell EMCの渡部執行役員は期待している。

 ヴイエムウェアの佐賀副本部長は、「これからの10年は、間違いなくHCIが中心となる。VxRailチャンピオンクラブは、そのHCI市場を牽引するエリート集団としたい」とし、キャリアアップの場としても活用してほしいと考えている。

 活動期間は、2017年10月12日から翌9月までの1年間を予定しているが、ネットワールドの黒川執行役員は「まずは1年としているが、基本的には、2年目、3年目と継続していくことを目指している」としている。HCI市場の盛り上がりと将来性を思えば、10年、20年と続くクラブになりそうだ。

HCI市場のリーダーが集結
VxRailチャンピオンクラブ発足セミナー開催

  VxRailチャンピオンクラブは10月12日、クラブの参加者を対象に記念すべき第1回目のイベント「VxRailチャンピオンクラブ発足セミナー」を開催した。同セミナーでは、会員規約や特典の説明のほか、HCIの市場動向やVxRailを扱うにあたってのポイントなどのセッションを用意。参加者からはVxRailの導入に関する実体験をもとにした質問が出るなど、チャンピオンクラブの名にふさわしい盛り上がりとなった。

4種類の会員ランクを用意

 セミナーの冒頭では、「チャンピオンクラブ発足について」と題し、Dell EMCの渡部執行役員が、同クラブを主催するDell EMCとヴイエムウェア、ネットワールドの3社の関係や、VxRailチャンピオンクラブのミッションなどを説明した。
 

渡部洋史
Dell EMC
(EMCジャパン)
執行役員
パートナー営業本部長

 「Dell EMCとヴイエムウェアは、同じグループ企業。ネットワールドは、(VxRailの前バージョン)VSPEX BLUEの時代からファーストランナーとして支えてくれている。その3社によって、VxRailチャンピオンクラブを発足した」。また、3社によるVxRailの販売スキームが確立しており、年末には日本で24時間サポートをスタートさせると説明した。

 VxRailについては、HCI市場が急拡大しているなかで、売上ベースの国内シェアが約31%であり、グローバルでは1万社以上の利用実績があるとし、「このコミュニティでVxRailを盛り上げ、31%のシェアを50%にするのが目標。みなさんと一緒に市場を開拓していきたい」と参加者に呼びかけた。

 VxRailチャンピオンクラブについては、「VxRailのエキスパートを育成するために設立した」と説明し、「みなさんがHCI市場をリードするうえで、どれだけ中心的な存在になるか。誇りをもって活動できるように、このコミュニティで支援していく。そのためにも、みなさんの経験の共有もお願いしたい」と呼びかけた。HCI市場は、新興市場として急成長の最中にある。最後に渡部執行役員は、「この市場をリードできるような楽しいコミュニティにしたい」と語った。
 
 

前野貴裕
ネットワールド
マーケティング本部
ソリューション
マーケティング部
システムソフトウェア
ソリューション課

 VxRailチャンピオンクラブの会員規約と特典については、ネットワールドのマーケティング本部ソリューションマーケティング部システムソフトウェアソリューション課の前野貴裕氏が説明した。

 VxRailチャンピオンクラブは、最上層のプラチナから、ブロンズまでの4段階のランクを用意。プラチナに認定されると、Dell EMCのグローバルイベント「Dell EMC World(2018年5月)」または、ヴイエムウェアのグローバルイベント「VMWorld(2018年8月)」に招待されるという特典が用意されている。プラチナの認定には、10案件以上の販売・購入という実績が問われ、VxRailインプリメンテーション試験などに合格する必要があるなど、高いハードルが設定されている。

会員とともに市場拡大に注力

 次に「3社ExecutiveインタビューQA」と題し、各社の代表が登壇。公開質問形式で、VxRailチャンピオンクラブの役割などを説明した。

 まず、VxRailチャンピオンクラブ発足の経緯について、Dell EMCの渡部執行役員は「HCIというキーワードが盛り上がっているものの、当社が“売りたい”と一方的にアピールしても市場は広がらない。ユーザー企業が何を求めているのかを把握する必要がある。それには、パートナーのみなさんの力が必要。コミュニティがあれば、そうした情報を効果的に共有でき、新しい提案にも活用できる」とし、HCI市場の拡大にはコミュニティが必要だと語った。

 ヴイエムウェアの佐賀副本部長は、VxRailの強みについて「ITのインフラを考えると、サーバーやストレージに加え、ネットワークも含めた仮想化が必要になる。ネットワークもコンバージドできてこそのHCI。VxRailは、そこも含めた提案ができることを目指している」と説明。VxRailには高いバリューがあるとアピールした。

 ネットワールドの黒川執行役員は、「これまでDell EMCのストレージ、ヴイエムウェアの仮想化ソフトで多くの実績があり、VxRailについても他社に負けないノウハウをもっている」とアピール。また、同社の検証施設「プリ・インテグレーション・センター(PIC)」で実機を利用できるとし、「一緒にVxRailの提案力を上げていきたい」と会場に呼びかけた。
 

石塚智規
ネットワールド
SI技術本部
ストレージ基盤技術部
課長代理

 最後にネットワールドの石塚智規・SI技術本部ストレージ基盤技術部課長代理が、「Boot Up! ハイパーコンバージド!!」と題し、VxRailを取り扱うにあたってのポイントやコツを説明した。石塚課長代理は、VxRailチャンピオンクラブを運営していくにあたって、「企画はリクエストベースで決めていく。運営側からも企画案を出すが、みなさんの意見を重視する。企画立案には、みなさんの協力が必要」と参加者に呼びかけた。 VxRailについては「ストレージの拡張にすぐれている。設定に必要なパラメータが少なく、使いやすい。インストールは、1時間程度で完了する」と説明。Dell EMCとヴイエムウェアによるリモートサポートも用意されているといった運用面の差異化要因も紹介した。なお、VxRailチャンピオンクラブでは、実機を使ったワークショップや交流会など、月に1回以上のイベント開催を予定している。

編集長の眼
HCI市場は 正しい情報を求めている

 先日、大手食品メーカーのCIO(最高情報統括責任者)と話す機会があり、HCIについて聞いたところ、「複雑だと聞いているので、まだ検討はしていない。ITインフラはシンプルなほうがいい」との意見。HCI市場は、まだ発展途上。誤った情報がユーザーに届くことも容易に想像できる。「むしろ、シンプル化を実現するのが、HCIですよ」と紹介したが、そもそもHCIを誤解しているようだった。

 VxRailチャンピオンクラブは、HCIエキスパートを育成し、HCI市場の拡大を目指すとしているが、「正しい情報が得られる場」でもある。成功のカギは、コミュニティの活性化。HCI市場の開拓者であるネットワールドの取り組みに期待したい。
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