既存のアセットを存分に生かせるのが大きな強み

 日本オラクルが、クラウドビジネスで攻勢を強めている。大手総合ベンダーとしてIaaS、PaaS、SaaSの全方位をカバーするソリューションを携え、市場でのプレゼンスを急速に向上させようとしているのだ。2017年6月には、オラクル・ドイツのバイスプレジデントだったフランク・オーバーマイヤー氏が執行役CEOに就任。経営体制も新たに、攻めの姿勢はより鮮明になった。同社でクラウドビジネスを統括する石積尚幸・執行役副社長クラウドプラットフォームソリューション統括に、現状の手ごたえと今後の戦略を聞いた。

IaaS、PaaS、SaaSの
全方位で進化

――まずは、日本オラクルのクラウドビジネスの現状について教えてください。
 
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石積尚幸
執行役副社長
クラウドプラットフォーム
ソリューション統括

石積 SaaS、PaaSを先行して提供していましたが、2016年、IaaSを発表しました。可用性、パフォーマンス、セキュリティにすぐれ、ミッションクリティカルなシステムにも強いという特性はやはりユーザーに安心感をもっていただいています。「Oracle Database」のユーザーが、IAサーバーの更新のタイミングで、オンプレミスのシステムをそのままクラウドにもっていく「リフト&シフト」での採用事例などはかなり増えています。ちなみに、最新の「Oracle Database 12c」はマルチテナント対応を実現していて、DBマシンの「Exadata」を使ってIAサーバーをオンプレミスでコンソリデーションするような場合でも、マルチテナント機能を利用して、「Oracle Cloud」とハイブリッドで運用できます。

 IaaSはコモディティだと思っている人もいますが、Oracle Databaseの性能を最大限発揮できるのは当社のIaaSで、先行するクラウドサービスと技術的に差異化できています。しかも、価格は安い。

――御社はIaaS、PaaS、SaaSと全方位でクラウドビジネスを展開している数少ないプレイヤーですが、DB市場での優位性を考えれば、PaaSはとくに競争力がありそうですね。

石積 Oracle Databaseが従量課金で使えるようになり、ユーザー層は確実に幅が広がりました。しかも、当社のPaaSは日々進化しています。リリースした3年半前は、わずか7種類のサービスで構成されていましたが、現在は50種類以上の豊富なサービスをラインアップしています。クラウドだからこそ必要になるセキュリティ・運用管理のツールがこの1年で充実し、まさにPaaSのフルラインアップが揃った感があります。パートナー様にとっては扱う商材の選択肢も増え、Oracle Cloudと独自の技術・製品を組み合わせて、さらに充実したソリューションをお客様に提案してもらえるようになりました。結果として、より幅広いお客様にオラクル製品の価値をお届けできる体制ができつつあります。

――SaaSへの投資も活発という印象です。

石積
 アプリケーションも、オンプレミスよりもクラウドのほうがすでにビジネスの規模が大きくなっています。当社のSaaSは従来の業務アプリケーションの範疇にとどまらず、ソーシャルリレーションシップマネジメントやデジタルマーケティングなど、非常に幅広くラインアップしている。オンプレミスのアプリケーションを担いでくださっているSIer様が、いままで手がけていなかった領域にビジネスを拡大する助けにもなっています。

パートナーに新しい
領域での商機も提供

――Oracle Cloudの最大の強みは何ですか。

石積 オンプレミスで使ってもらっている当社の製品、テクノロジーが、すべてOracle Cloud上で使えることです。例えば、世の中のデータの50%はOracle Database上にあるともいわれていますが、それだけ多くのパートナーが関連のSIビジネスで当社製品の導入・活用のノウハウやスキル、エンジニア人材といったアセットを蓄えてくれているのです。Oracle Cloudはパートナーの皆様に、そうしたアセットを無駄にせず、むしろ存分に生かしてクラウドビジネスを手がけていただく機会を提供します。

 また、お客様がOracle Cloud専用のハードウェア(運用はオラクル側が担当)を自社DC内などに設置し、データを手元に置いたうえでOracle Cloudをサブスクリプションで利用できる「Oracle Cloud at Customer」というサービスも提供しています。エンタープライズITで求められるクラウドへの多様なニーズに応えた柔軟な提供形態を用意できるのも大きな強みだと思っています。

――SMB(中堅・中小企業)にも顧客基盤は拡大しているのですか。

石積 クラウドのメリットを享受しやすいのは本来、SMBなのです。SMBへのクラウド提案や、当社の製品・サービスの導入に関するコンサルティングを行う「Oracle Digital」という新しい営業組織を発足させました。想定以上に、SMBのお客様からの引き合いはいただいています。

――「Oracle PartnerNetwork(OPN)Cloud Program」の認定パートナーを2017年までに500社まで増やすという目標を掲げていました。

石積 古くからおつき合いのあるパートナー様も多いので、数字自体は十分に達成できます。ただし、クラウドネイティブな新しいパートナー様へのリーチにはまだまだ課題があります。競合ベンダーのパートナーも含め、イベントなどを通じて、彼らにOracle Cloudを知っていただくための仕掛けを積極的につくっていきたい。知ってもらえさえすれば、価値を認めていただけるという自信はあります。

――6月には、オーバーマイヤーCEOが就任しました。Oracle Cloudのビジネスへの影響は?

石積 オーバーマイヤーが言っていることは非常にシンプルで、お客様以上にお客様のことを知り、そのうえでお客様のクラウドトランスフォーメーションを支援していかなければならないということです。ポジションを問わず、日本オラクルの社員一人ひとりがクラウドのエキスパートにならないといけないとも言っていて、だいぶ社内の意識も変わりました。まずは、現実的な目標として、お客様にとって最も信頼でき、クラウドの選択肢として最初に思い浮かぶサービスが、Oracle Cloudであるというところまでもっていかなければならないと考えています。