幅広い分野で利用が拡大し、市場の成長が見込まれるデジタルサイネージ。Philipsブランドのデジタルサイネージ用ディスプレイを販売するMMD Singapore 日本事務所(MMD)では、新製品を相次いで投入し、ラインアップの刷新を進めている。商品戦略や販売戦略について、同社の冨板修一・営業部係長に話を聞いた。

常設型の大画面ディスプレイは
店頭だけでなくオフィスにも

 商業施設や交通機関、公共施設など、あらゆる場所で利用されているデジタルサイネージ。動的なコンテンツを流すことで人目を引くことができ、時間帯や状況に応じて内容を入れ替えることもできる。外国人観光客の増加に伴ってニーズが増加している多言語での案内表示にも容易に対応し、さらにはユーザーの操作に応じたインタラクティブな表示にも利用できるなど、多くのメリットが期待できる。

 近年、店舗業務の省力化を目的としたデジタルサイネージの活用も広まりつつあるという。労働人口が減少し、多くの現場で人手不足が顕著になってきているなかで冨板係長は、「現場の省力化につながるソリューションとしても期待されている。例えばファストフード店などの飲食店では、店内のメニュー掲示パネルをデジタル化する例が増えた。メニューを店員が入れ替える手間をなくすと同時に、朝や昼といった時間帯ごとのメニューを自動で表示できる」と、その効果を説明する。

 一般企業においても、来訪者向けの情報提供手段としてエントランスなどに設置するほか、オフィス内の常設ディスプレイとしても注目されている。会議の際にはプロジェクター代わりに資料などを表示し、通常は社内向けに共有したい情報、例えば業務に関連する最新データを表示させておくという使い方が可能だ。サイネージ用液晶ディスプレイは長時間連続稼働に耐えられるため、多目的に役立つ。

多様化するニーズに合わせ
豊富なラインアップを提供

 MMDが販売するPhilipsブランドのデジタルサイネージ用ディスプレイは、今まで主力だった業務用スタンダードモデル「Eライン」の後継機種となる、高信頼性と極薄ベゼルを実現したデザイン性が特徴の新モデル「Pライン」と、Android OSとWi-Fiを搭載してディスプレイ単体で外部コンテンツを表示できるウェブサイネージモデル「Dライン」が主力だ。このほか、価格を抑えたエントリーモデル「Qライン」や4K対応ハイクオリティ表示のプロフェッショナルモデル「Uライン」まで、4モデルが用意されている。画面サイズも55インチ型を中心に32インチから84インチまで幅広い展開となっている。また、Pラインと同時発売となる後述のタッチ専用モデル「Tライン」が4月からラインアップに加わった。
 

2018年新モデルのPライン これまでの業務用スタンダード「Eライン」に代わる
新たな主力という位置づけだ


 このうち主力のPラインは、HDMIやDisplayPortからDVI、といった多彩な入力に対応するほか、USB端子とメディアプレイヤーを搭載し、USBメモリからコンテンツを読み込むことができる。ACアウトレットや外部スピーカーを直結できる出力端子も搭載し、周辺機器の接続もサポート。金属きょう体・ファンレス設計で24時間365日連続稼働に対応する高信頼性、四方すべて6.5mm均一のナローベゼルなど、多彩な設置環境に対応できる点が特徴だ。

 Dラインでは、Android OSとWi-Fiを活用すれば内蔵ブラウザや追加アプリなどの画面を表示することができ、対応するアプリさえあればセットトップボックス(STB)やPCなどを使うことなくディスプレイ単体でコンテンツを配信できる。

 世界のデジタルサイネージディスプレイ市場は大きく拡大している。調査会社IHS technologyの調査結果データによると、市場規模は2014年で約255万台、15年で約272万台、16年は約308万台と年々拡大している。17年第三四半期時点でのシェア1位はサムスン(27.2%)、Philipsのシェアは5位(4.4%)という結果だった。
 

冨板修一
MMD Singapore 日本事務所
営業部 係長

 日本のデジタルサイネージ用ディスプレイ市場にPhilipsが参入したのは14年。17年には、第三四半期までの集計で国内シェア4.2%まで販売を拡大してきた。冨板係長は、「富士キメラ総研の調査によれば、日本市場は25年に向けて引き続き伸びが続くと見込まれており、当社でもそこへ向けた販売強化に取り組んでいく。分野別では飲食店や小売店、各種施設、一般企業といった領域で伸びが期待できるため、こうしたユーザーを見込んだ商品の強化を図っていく。販売戦略としては55型を中心に、販売台数の拡大を目指していきたい」と話す。

55インチ、Android OS搭載
タッチ対応ディプスプレイを発表

 18年4月には新たにPラインとTラインという2種類の新商品が発表された。まず目を惹くのはTラインだろう。Android OSおよびWi-Fi搭載など、基本的なスペックではDラインに近いが、最大10点のマルチタッチ操作に対応するタッチディスプレイとなったほか、厚さ4mm硬度8Hの保護ガラスも標準装備し、直径50mm・重さ1kgの鉄球を1mの高さから落としても割れない強度を備えたという。このTラインを、まず55インチから投入する。
 

2018年新モデルのTラインは、
Android OSに加えタッチパネルを搭載した新たなジャンルの商品だ

 今のところ、このクラスの業務用スペックをもつデジタルサイネージ用ディスプレイで、Android OSからタッチパネル、保護ガラスまで搭載する商品は珍しい。他社ディスプレイであれば、STBやタッチ操作パネル、保護ガラスなどを組み合わせて提供しなければならないところを、Tラインならディスプレイ本体を用意するだけで対応できる。

 「アイデア次第でいろいろなことが可能になるディスプレイ。案内用ディスプレイでも、例えば通常は広告を流しておき、人が操作したらインタラクティブな案内を開始するような運用スタイルも考えられる。55インチの大画面を生かし、案内表示を画面の半分にとどめ、残る半分で広告を表示し続けるようなことも可能だ。インテグレータの方と協力し合い、デジタルサイネージの新たな活用を提案していきたい」と冨板係長は説明する。

主力製品にもAndroid OS搭載
ユーザーへの提案の幅を広げる

 もう一つの新製品であるPラインでは、42/49/55インチの3商品を4月に同時発売した。これまでのEラインに代わる新たな主力ラインと位置づけられる。Eラインのもつ高信頼性や四方均一ナローベゼルといった特性をそのまま受け継いでいる一方、Android OSを搭載した点が大きな特徴だ。
 

Pラインでは、ユーザーが慣れ親しんだタッチ操作ができ、ディスプレイ単体で
「巨大なAndroidタブレット端末」のような使い方が可能になる

 「近年の動向としては、クラウドサービスなどが充実して、ユーザー自身でも手軽にコンテンツをつくったり配信したりできる環境が整ってきた。ユーザー自身が主導して導入するケースも増えてきている。そうしたなか、ディスプレイも単なる表示機器に終始していればいいという状況ではない」と冨板係長は話す。

 もちろん、ユーザー主導での導入という傾向は、決してインテグレータの仕事がなくなることではない。例えばPラインやTライン向けのAndroidアプリを開発し、新たな用途を提案するということも期待できる。アイデア次第でユーザーにさまざまな価値を提供できるということだ。その一例が、先述のファストフード店などのメニューにおける活用例だ。

 「店舗のメニューボードに表示するコンテンツを、本部から一括配信するユーザーが出てきている。店舗側からすればまったく手がかからなくなるため、接客などの本来の業務に専念することができる。店舗のスタッフができるだけ効率的に動けるようにする。そういったデジタルサイネージの提案も、ユーザーからは大いに期待されている」と冨板係長は一例を示す。

充実したラインアップを
安心のサポートなどで支援

 幅広いラインアップのPhilipsのサイネージ用ディスプレイ。その多彩さは、ユーザーにもさまざまなメリットをもたらす。ショッピングセンターなどの例でいえば、案内用にはTライン、テナントとして入っている飲食店のメニューボードなどにはPライン、小さめの画面が必要なところには32インチから用意しているDラインなど、施設全体をPhilipsディスプレイで揃えることができる。これにより、保守窓口が一本化されるなどのメリットが出てくる。

 また、これらのPhilipsディスプレイは、サポートについても、全商品が業界最長となる3年間標準保証(センドバック・オンサイト含む)となっている。これまで納品してきた顧客に大きなトラブルが生じていない信頼性、品質の高さもポイントである。メーカーとしても、今後さらに多様なニーズに対応した商品を準備していくとしている。