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インターネットイニシアティブ IoT、M2Mなどの多彩な用途に最適なモバイルデータ通信サービス ―「フルMVNO」ならではの柔軟性で細かなニーズに対応―

2018/05/24 09:00

週刊BCN 2018年05月21日vol.1727掲載

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は3月15日、法人向けモバイルデータ通信サービス「IIJモバイルサービス/タイプI」の提供を開始した。本サービスは、MVNO(仮想移動体通信事業者)ながら加入者管理機能などを自社でもつ「フルMVNO」であることが最大の特徴だ。フルMVNOならではの高い自由度を生かしたサービス内容について、安東宏二・MVNO事業部副事業部長に話を聞いた。

日本のMVNOの先駆け
法人向けでスタート


 MVNOは、基地局などの無線通信設備をもたず自社ブランドのサービスを展開する移動体通信事業者の総称で、無線通信設備をもつ移動体通信事業者(MNO)の設備を利用することで通信サービスを提供している。MNOとの競争などもあって安価なサービスを提供するため、「格安SIM」などと呼ばれる。近年ではコンシューマ市場で人気が上昇しており、事業者も急増。今後は淘汰が進むといわれている。

 そんな日本のMVNO市場の「先駆け」となったのがIIJだ。2008年からサービスを提供しており、18年3月末時点で230万回線を突破するまでに成長し、市場を牽引してきた。また、他のMVNO向けに設備・機能などを提供する役割を担うMVNE(仮想移動体サービス提供者)としても展開しており、MVNO市場の活性化に貢献している。
安東副事業部長は、「当社のMVNOサービスは法人向けでスタートした。個人向けのサービス『IIJmioモバイル』も提供しており、そのシェアや満足度なども高く評価されている一方で、個人向け市場は過当競争状態になりつつあり、特徴を出しづらくなってきている。そのようななかでも、多様化するニーズや利用シーンにおいて特徴を生かしたサービス拡張を実施し続けていくことが重要なテーマとなっている」と説明する。
 

M2MとIoT市場も重視


 サービスを開始した08年といえば、モバイルワークが流行り始めた頃。当時はPCなどの機器に接続して通信するUSBドングル型のデバイスが主流だったものの、モバイルWi-Fiルータも登場しており用途が多様化している。安東副事業部長によれば、M2M(Machine to Machine)用途が立ち上がってきたのもこの頃だという。

 M2Mは、人間とのコミュニケーションを主の目的とした利用ではなく、リモート機器の情報の収集や制御を目的として機器と機器の通信を活用した利用のことを指す。移動体通信によるM2Mは十数年前から普及し始め、自動販売機の運用管理、商用車などの運行管理といったさまざまな用途に広まってきた。移動体通信サービスの普及にともない、多くの機器がネットワークにつながっていくことが一般的になっている。まさにIoT時代の到来である。IIJはモバイルM2M/IoT市場も重視しており、さまざまな利用シーンを想定したサービスメニューを提供している。M2M/IoT向けのサービスである「IIJモバイルM2Mアクセスサービス」は、データ通信が可能な時間帯が夜間限定の「プランA」、下り通信速度を制限した「プランB」、接続帯域を設定して契約する「プランC」があり、利用頻度などに応じたプランの選択が可能なサービスだ。さらに、閉域接続機能などの付加機能も提供し、多様化した機器の通信に最適なサービスの提供も実現している。

 一方、スマートデバイスなどのための法人向けサービスにおいても、「IIJモバイルサービス/タイプD、タイプK」があり、多彩なラインアップを提供。閉域接続やリモートアクセスなど、IIJの他のサービスとも組み合わせて柔軟な利用形態に対応できるようになっている。
 

MVNOの制約を
「フルMVNO」でなくす


 しかし、それでもすべてのユーザーニーズを満たすには十分ではなかったようだ。「IoT/M2Mでは、用途により1年間のうち特定期間だけ使いたいといったニーズも少なくない。例えばIoTで農地を管理する場合、使うのは特定の季節だけということもあるだろう。ところがMVNOは、回線を一時休止してもサービス料金は発生してしまい、利用障壁となることが課題となっていた」と安東副事業部長は説明する。法人の業務利用において、モバイルワークを行う従業員の増減が頻繁にある業務体系などでも、やはり一部の回線を休止させたいというニーズが考えられる。しかし、ほぼすべてのMVNOにはこの回線休止中の扱いにさまざまな制約があるという。また、SIMはMNOからの貸与品のため独自に製造することができず、調達や在庫などの制約があるほか、ローミング先などもMNOに依存し料金や通信サービスで独自の選択肢はとれない。

 そこでIIJが取り組んだのが、「フルMVNO」になることだった。フルMVNOとは、国際的な移動体通信の識別子である「MNC(Mobile Network Code、移動体通信事業者を国際的に識別するためのID)」および「IMSI(International Mobile Subscriber Identity、通信の利用者を識別する番号)」を有する独立した事業者のことだ。IIJは今回、コアネットワーク設備の一部である加入者管理機能を自社で保有・運用することで、NTTドコモの3G/LTE網を利用する国内初のフルMVNOとなった。この独自の加入者管理機能を用いたのが、新たに提供を開始した「IIJモバイルサービス/タイプI」だ。

 当然ながら、加入者管理機能を自社で構築・運用するには相当な設備投資や開発期間が必要となる。「NTTドコモの技術仕様に合わせるのも、かなりハードルが高かった」(安東副事業部長)という。だが、そうしたハードルを乗り越えた結果、IIJでは独自のSIMを発行し、利用者や管理者が各回線の開通(アクティブ)/中断(サスペンド)状態を柔軟に変更できる「SIMライフサイクル管理」を可能にした。サスペンド時の料金を極めて安価に設定できるのも、フルMVNOならではのメリットだ。

 独自SIMとしては、IIJオリジナルデザインのマルチFF(フォームファクター)SIMを標準で用意しているほか、基盤上にハンダ付けで実装する「チップSIM」も個別要件に応じて提供していくという。チップSIMは非常に小さいうえに振動や衝撃にも強く、通常のSIMよりIoT/M2Mデバイス、さらにはウェアラブル機器などにも適した形態となっている。

 「タイプIなら在庫中はサスペンド状態にしておき、エンドユーザーの手元に届いてからアクティブにする。また、メンテナンス時のみアクティブに、レンタル機器なら貸出中のみ回線をアクティブに、といった使い方にも対応できる。SIM内アプレットにより独自の機能を追加することもでき、例えばSIM認証によるセキュリティ強化や、SIMベースの位置情報サービス対応など、さらなる付加価値をつけることも可能だ。今後は通信サービスに必要なプロファイルを遠隔で変更し差替不要な『eSIM』への対応も視野に入れており、規格の動向や機器への普及を見極めつつ技術検証を進めていく」と安東副事業部長は説明する。
 

フルMVNOのメリットは
M2M/IoTだけにとどまらない


安東宏二
MVNO事業部
副事業部長
 MNOに制約されることなくさまざまなネットワークに接続できる点も、フルMVNOならではのメリットだ。例えば、海外MNOとのセキュアな接続により、国際閉域ネットワークを構築するといったことも難しくない。IIJがもつ固定回線WANサービスとも組み合わせ、柔軟なネットワークを実現できる。

 IIJではタイプIに非常に多彩な料金プランを設定、モバイルワークもIoT/M2Mも含む多様な利用形態に一括で対応可能なサービスとして提供している。それぞれの用途にはSIMごとに設定する「開通トリガー」の違いで対応(初期費用や基本料金が異なってくる)しているものの、例えば、高速データ通信量を複数回線でシェアする「パケットパック」は、モバイルワーク用とIoT/M2M用の回線を区別することなく、同一契約内の全回線に適用されるという内容だ。

 フルMVNOならではの自由度の高さは今後、タイプI以外のサービスにも生かされ、さらなる活用のアイデアも実現可能になると期待される。例えば、SIMベースの位置情報サービスを生かした新サービスとしてインバウンド旅行者向けのプリペイドSIMにロケーションベースの付加価値提供や匿名化した位置情報をマーケティングデータに活用するということも考えられる。

 「また、フルMVNOにより接続先のネットワークにとらわれることもないことから、特定地域のみ利用可能なプライベートLTE環境を構築し特定施設でのみアクセスできる限定コンテンツを提供することもできる。われわれとしては、『活用のアイデアはユーザーとともに生みだしていく』と考えており、用途に限らず使っていただき、新たな可能性を広げていくサービスを目指す」と安東副事業部長は語る。

 フルMVNOとなったことで、MNOのインフラやサービスをもとに制約のあるなかで設計されたMVNOのサービスから、MNOのインフラを生かしつつ制約から解放され自由な発想のMVNOのサービスを実現できる。今後もIIJでは、ユーザーとともに創りだす自由なサービスへ拡張し、提供していく構えだ。

 
「IIJモバイルサービス/タイプI」無料トライアルキャンペーン実施中

IIJモバイルサービス/タイプIの提供開始を記念して、「無料トライアルキャンペーン」を実施中。概要は以下の通り。
期間:2018年3月15日~6月30日
対象:新規でIIJモバイルサービスを契約の企業(先着1万回線まで)
キャンペーン内容:IIJモバイルサービス/タイプIの初期費用が無料、月額費用が最大3か月無料

※トライアル期間終了後も、そのまま利用可能。
※オプションなど一部の費用は無料の対象外。また1回線あたり10GBまでの通信容量が対象。
※その他、キャンペーンへの適用条件あり。詳細はお問い合わせください。
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外部リンク

インターネットイニシアティブ=https://www.iij.ad.jp/