東京五輪後の日本経済は厳しい景気後退に見舞われると予想される。IT業界も例外ではなく「ポスト2020」に向けて、今何に取り組むべきかが多くの経営者の関心事になっている。基調講演では、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の参与で景気循環研究所長を務める嶋中雄二氏が「第3の超景気 ~ゴールデン・サイクルで読み解く2025年~」と題して、景気循環論、とくに複合循環論の立場から、25年までの日本経済の行方について解説した。

米国の景気後退と消費税が重なる2019年後半は警戒が必要

嶋中雄二
参与
景気循環研究所長
 嶋中氏は、はじめに景気循環の長期の波について解説した。一つはインフラ投資循環であるコンドラチェフ・サイクル(周期56年)で、前回の東京五輪から2020年の東京五輪までの期間に相当する。そして、もう一つが建設投資循環ともいわれるクズネッツ・サイクル(周期25.6年)で、今はその二つの波が共に上昇する3回目の良い時代に入っているという。

 「明治時代からその二つの波を見ていくと、日本経済は11年の東日本大震災を底として、25年に向けて『第3の超景気(Super Business Cycle)』を迎えている」と嶋中氏は強調した。

 次いで、その裏付けとなる足元の経済状況を取り上げ、特に世界経済に大きな影響を与える米国経済の動向を解説した。

 それによると、米国の景気動向指数(CI)の先行指数の推移からすると、18年4月に「黄金の60年代景気」(106カ月)を超えた米国の景気拡大は、今後、少なくとも19年7月頃までは続く見込み。だが、中間選挙などを終えて政治的イベントが無い19年は、経済対策などを取らないため年後半に景気後退の可能性がある。その主な原因となるのが米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めである。日本でも同時期(19年10月)に消費税引き上げがあり、実質経済成長率を0.3%ポイント低下させることから、「東京五輪前に減速が始まるだろうと予測しており、警戒が必要になる」と分析した。

 日本は人手不足の中で限界需給バランスと投資採算の改善もあって投資意欲は強く、設備投資循環は現在、上向きになっている。人口は減少しているが、26年までは生産年齢人口比率は上向きに推移していく。「だが、それ以降は心配だ。そこで今のうちに女性、高齢者、外国人の活用をしていくべきだ」とした。

 もう一つ注意すべき点として、インバウンドと為替動向の関係を取り上げた。これまでの円安傾向と規制緩和の効果で、訪日外国人客が17年は累計で過去最高の2869万人に達した。今後のイベントも多いため、インバウンドに一段と期待が高まっている。政府は20年の東京五輪に向け3000~4000万人を目標としているが、「インバウンド増加に対する最大のリスクは円高。10円の円高で訪日外国人客は92万人減少し、一人当たりの消費額も現状の15万円から1割減る。今、観光産業はGDPの約4%を占め、自動車産業を上回る規模だけに影響も大きい」という。

 株価については、過去7回の日経平均急落時と18年2月からの日米株価急落ショックの比較からすると、足元はまだやや低い水準だが、今後の日経平均は2万7000円を目指す可能性があるとした。
 

大阪万博の決定やリニア新幹線開通に期待

 最後に嶋中氏は、「ゴールデン・サイクル」について説明した。ゴールデン・サイクルは短期のキッチン(4.9年周期)、中期のジュグラー(9.6年周期)、長期のクズネッツ(25.6年周期)、超長期のコンドラチェフ(56年周期)の4サイクルすべてが上昇局面になることであり、日本経済は、17年から18年にかけて明治以降で6回目、高度成長期のいざなぎ景気以来、ほぼ50年ぶりのゴールデン・サイクルに突入しているとみられる。米国も短・中・長・超長期4サイクルの循環が17年から18年にかけてゴールデン・サイクルに突入しており、今は日米同時に超景気の状態にある。

 だが、日本ではこの流れが18年中は続くものの、中期のジュグラー・サイクルが下降に転じる19年は、やや注意が必要になる。米国も無冠状態となる19年以降はやはり注意が必要だという。

 「日本経済は、前述したように19年10月から調整期になるだろう。そして20年、21年は特に注意すべきだ。その後に、22年、23年と上昇に向かい、25年の大阪万博開催が決定(18年11月投票)していると好景気になる。もし、万博がとれなくても27年にリニア新幹線の開通予定があるため、その時に景気がよくなるので、それを目指して皆さんには頑張っていただきたい。景気は循環するので、落ちたものはまた上がる。基本的には、楽観的にみていいだろう」と展望を語り、講演を締めくくった。