パソコン、ワークステーション、サーバーの製造、販売、物流、システム開発、サービス開発を基盤とするICT総合企業に成長したサードウェーブグループ。現在では、ITの枠を超えてeスポーツ事業にも積極的に取り組んでいる。「全国高校eスポーツ選手権」の開催とeスポーツ部設立を支援する「高校eスポーツ部支援プログラム」の実施。また、eスポーツイベントを開催できる設備を備えた施設「LFS池袋 esports Arena(ルフス池袋イースポーツアリーナ)」のオープンなど、ユーザーが活躍できる場を広げるべく取り組みを進めている。さらに、アライアンスも進めてエコシステム構築にも力を入れる。eスポーツにかける想いとその可能性について、尾崎健介社長に語っていただいた。

海外イベントで感じた
熱気と盛り上り

――今では、eスポーツの仕掛け人とも呼ばれる尾崎社長ですが、取り組むきっかけはどのような経緯からですか。

尾崎 eスポーツという言葉が日本で一般的になる10年以上前から、ゲーミングPCに力を入れていくという方針から、秋葉原でゲーミングPC「GALLERIA(ガレリア)」のプロモーションを兼ねたイベント「PCゲームフェスタ」の開催や、ゲーム大会をスポンサードするなどの活動を行っていました。
 
尾崎健介 代表取締役社長

 ビジネスでも、ゲーミングPCを製造するだけではなく、ユーザーの近くにいて、その人たちが楽しめるような環境を構築することで、ゲーマーの方々が活躍できる場をつくりたいという想いでした。しかし、当時の日本の事情は小さなコミュニティーの集まりに過ぎず、海外に比べて本格的な盛り上りではなかったため、本腰を入れて取り組める状況ではありませんでした。

――その状況が変わって本気で取り組もうと思われたのは、海外のイベント視察だったと聞いていますが。

尾崎 2017年5月に世界最大規模のeスポーツ大会「Intel Extreme Masters Sydney 2017」を視察したときのことです。イベントの盛り上がりや観客を含めた熱気に直に接したことで、大きな可能性を感じ、事業として取り組んでみようという気持ちになりました。日本に帰ってから早速、eスポーツ大会「GGC」(※当時はGALLERIA GAMEMASTER CUP、2019年からはGALLERIA GLOBAL CHALLENGE)を立ち上げました。

――海外と日本ではかなり状況が違っていたわけですね。

尾崎 他のスポーツと同様に、海外でも日本でも興行になって初めてビジネスが成立すると考えています。プレーヤー自身が楽しむだけのものなら、元々コミュニティーがいくつもありますから。大会の開催者がいて、きちんとした会場を借りて、司会やゲームの実況者がいて、という形にもっていくにはスポンサーの存在が不可欠です。そしてスポンサーが付くには、多くの人が大会を観戦して楽しめるものでなければなりません。

 日本ではまだまだ、市民権を得たとはいえませんが、海外ではすでにスポーツ(競技)として認知が進み、五輪種目を目指す動きもあり、関連ビジネスの市場規模も大きく拡大しています(Newzooの調査では21年に約1600億円に成長と予測)。少しでも海外に近づけていきたいという想いをもって取り組んでいます。

野球をモデルにすそ野を拡大
高校生支援に注力

――本格的な取り組みをスタートされて3年ですが、手応えはいかがですか。

尾崎 手応え自体は感じていますが、現段階では途上なので、まだまだですね。規模感、スピード感のいずれについても満足はしていません。もっと成長してもいいのにというのが実感ですね。
 

――その点からも、すそ野を広げていくために若い方を支援するため、毎日新聞社とともに「全国高校eスポーツ選手権」を開催されたり、高校のeスポーツ部設立を支援する「高校eスポーツ部支援プログラム」を実施されているわけですね。

尾崎 すそ野の拡大という狙いもありますが、プレーヤーの方々が確実に活動を続けていける環境をつくることに主眼を置いています。

――例えば、将来的にはプロにつながっていくプロセスを整備するといったことも。

尾崎 それもありますが、一つのモデルとして考えているのは野球です。最初はリトルリーグがあり、中学の部活、高校野球(甲子園)、大学、社会人、プロとつながっている。また、それぞれに管轄する組織があり、プレーヤーをサポートするコーチ、トレーナー、監督がいる。また、当たり前のように公共の野球場があって、安価に利用することができる。単に大きな大会が開催されるだけでなく、その競技を継続できる環境が整うことで、長期にわたり親しめるスポーツが、文化に育っていくものだと思います。

 こうした環境は当社だけでどうにかなるものではないので、いろいろな分野の企業の方々と組んでつくっていければと考えています。

――高校eスポーツ部支援プログラムを活用して、eスポーツ部を立ち上げた高校も順調に増えているようですが。

尾崎 高校eスポーツ部支援プログラムは、eスポーツを本格的にやってみたいと考えている高校生の想いに応えたものですが、2020年6月現在、約150校がプログラムを活用してeスポーツ部を立ち上げています。また、首都圏などに偏ることなく全国的に広くまんべんなく広がっています。全国高校eスポーツ選手権にも、ほぼ全ての都道府県から選手が出場しています。

――高校生のeスポーツに対する関心や捉え方をどのように見られていますか。

尾崎 競技と娯楽という二つの捉え方で考えています。高校の部活としてのeスポーツは教育の一環としての位置付けもあるので、真剣に取り組む競技という対象でなければならないと思います。もちろん、部が立ち上がったばかりの高校では、最初は楽しむことが優先かもしれません。しかしそのうち競技としての面白さが勝ってくる学校が大半です。やる以上は真剣に取り組む対象であってほしいと考えています。

――高校eスポーツ選手権への参加校も順調に増えているようですね。

尾崎 第1回、第2回と順調に参加校が増えていますが、スタートした当初に、3年間で2000校の規模にするという目標を掲げました。各都道府県から数十校ずつ出場するようになれば、地方大会のための組織も必要となり、それを各地のメディアが取り上げることで、スポンサーが付くくらい注目されるようにしたいですね。

 ある程度、ゲームは、はやり廃りが激しいので、同じゲームをやり続けられるようにすることも大切だと考えています。
 

地方で普及を目指して
アライアンスを進める

――高校生の支援だけでなく、大学やコミュニティーの大会支援もされており、プロゲーミングチーム「Rascal Jester」のオーナーにもなられていますね。

尾崎 はい。ただ、プロチームについていえば、まだ損益としては成り立たないところがほとんどです。まずは、自立できるようにしたいと思います。

――先ほど、eスポーツの普及に向けていろいろな分野の企業と組みたいという話がありましたが、具体的にどのようなアライアンスをお考えですか。

尾崎 地方での普及を視野に、一緒になって取り組んでいただける方々にパートナーになっていただきたいと考えています。最近では、JeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)愛知と愛知県出身の選手を育成するプロジェクトをスタートしました。また、地方の公共施設にGALLERIA(ガレリア)を設置するといった活動も進めています。

――ビジネスということでは、今後のビジョンをどのように描かれていますか。

尾崎 日本のeスポーツはまだ芽が出始めたばかりで、完成イメージからすれば1、2%に過ぎません。話題が先行している今の状態から、当たり前の話になるくらいにしていきたいですね。そのためにも、プレーヤー自身だけではなく、観客が各地域のプレーヤーを応援する、チームのファンになるなど、深いかかわりを持つことができるようにしていきたいと思います。

 もちろん、市場としての可能性は非常に大きいと考えており、今の小学生が高校生になる4、5年後には競技人口もかなり拡大するでしょう。そのときに業界を含めてeスポーツにかかわる人にやり易い環境を整えることが、われわれの役割だと考えています。そして、eスポーツそのものが文化に育っていくことで、ビジネスは後からついてくるものだと思います。