特別講演では、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)プラットフォーム研究グループ主任研究員/研究プロデューサーの小林奈穂氏が登壇。「アフター・コロナ時代に個人と組織の創造性を高めるための分散型ワーク・マネジメント」について講演した。

プラットフォーム研究 グループ主任研究員/研究プロデューサー
小林奈穂氏

 コロナによって、日本でもテレワークが急速に普及しつつある。テレワークは公衆衛生のための手立てや事業継続のための重点経営戦略の一つとして評価されるようになった。人々の満足度も高く、テレワークによる生産性向上効果を実感している人も少なからず存在する。

 では、3~5年後にテレワークにはどのような役割が期待されるのか。小林氏は「ウイルス対策という役割はやがて飽和点に達し、次のキーワードとして、イノベーションを生み出す原動力としての創造性が浮上してくる」と指摘する。なぜなら、テレワークによって人が時間と場所の制約から解放されると、仕事への自律性と主体性が向上する。その結果、創造性が高まり、中長期的な成果としてイノベーションが生み出されるからだ。

 また、この考え方に基づいて創造性を高めるには、人が創造的にイノベーションに取り組めるためのビジネスモデルやビジネス環境を作り出すことが組織マネージメントの課題になる。その際に心がけるべきポイントとして、小林氏は、(1)自分から、仕事を楽しむ、(2)プロジェクト化する、(3)気軽に、細やかに、コミュニケーションを図る、(4)本来の自分をさらけ出せるような雰囲気を作る、(5)コミュニケーションスタイルの違いを生かす、(6)リーダー自らが高い目標に取り組む、(7)快適で機能的な空間で働く、(8)ビジョンを語り、すり合わせる――の八つの点を指摘。「イトーキと国際大学GLOCOMが共同で行った研究では、創造性が高い組織はこの“八つの作法”を実践している」と解説した。

 さらに、創造性を発揮できる人となるには、建前なしの本音で生きることが重要。小林氏は、「その第一歩は、『うれしい』『楽しい』『おもしろい』『幸せ』と感じたときの気持ちを言葉にすること」とした。また、組織マネージメントでは、組織外の人と協働を促してイノベーションの種を育てることが重要。経営指標(KPI)も、経済成長と経済合理性を測る「効率性」から、社会善と持続可能性をもたらす「創造性」へと変わっていくことになる。

 このほか、ITに期待されている役割も大きい。「創造性を高めるためのITサービスが存在するとしたら、その市場は巨大」と小林氏は指摘。感性を言語化できる人がITを活用して日本のイノベーションが進むことに期待したいと述べた。