「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の基調講演では、アプライド・マーケティング代表取締役の大越章司氏が登壇、DXの課題を語った。大越氏は、「現状はDXの定義が曖昧で具体的に何をすればいいか分からず、受け取る人によって、解釈や認識、評価が異なっている。そのため、取り組んでみたものの実案件に結びつかないなど、DX疲れやPoC貧乏といった混乱が生じている」と指摘。混乱の原因は、デジタルによってサービスやビジネスモデル、企業風土を変革するなど、つかみどころのないイメージが先行していることにあるという。

アプライド・マーケティング 代表取締役 大越章司氏

 また、大越氏はUberやAirbnbなど、デジタルネイティブのディスラプターに対抗するためにDX化が必要である風潮にも異議を唱えている。デジタルネイティブは既存事業のしがらみがないことから新しいことが始められるが、既存企業は多くの資産を持ち、すでに隅々まで業務プロセスが効率化されているからだ。大企業や歴史のある企業ほど一部だけを変えてもうまくいかないといったことが生じてしまう。同じように真似はできないし、お手本にすべきではないことから、「DXの三つの課題、すなわち経営者、業務プロセス、現場の抵抗をクリアしなければみんながハッピーになるDXはできない」と強調した。

 さらに、大越氏はDXの目標を再設定するべきだという。「DXという言葉にとらわれず、個々の顧客の現状に合ったデジタル化を進めたり、現場を巻き込んだ組織改革を並行して進めることが重要だ」としている。SIerによるこれからのDX提案におけるキーワードとして、「サービス(モノからコト)」「デジタル」「スピード」の三つを挙げた。

 サービスは、必要なときにだけ利用できる「as-a-Service」であるべきという。モノの提供ではなくサービスを提供するという意識を組織全体で共有することが不可欠だが、これらは既存のビジネスを残しながら転換が可能でなければならない。そこで重要なのが「デジタル」で、「データを活用して常に高品質な顧客体験を提供していくこと。しかも、最新のデジタル技術を駆使してサービスを提供すること」の必要性を大越氏は訴える。

 スピードでは、ビジネススピードを最大化するため、クラウドの活用、組織・プロセスの変革、アジャイル/DevOpsの導入を挙げる。フィードバックを元に、迅速にサービスの改善を行うことが必要だが、Amazonは数年前の時点で1分間に95回もデプロイしていた。このようなことを含めて、最後に四つめのキーワードとして「優れた顧客体験」の提供を挙げ、「仮説検証型サービスを開発していかなければならない」とした。