2014年7月にソニーから独立して発足したVAIO。日本のものづくりを強みとして、法人ビジネスを核に据えて着実な成長を遂げてきた。今年6月1日には同社の事実上の筆頭株主である日本産業パートナーズから、山野正樹氏が新社長として就任した。総合商社出身で、IT業界を中心とするグローバル事業開発の経験が豊富な山野社長は、今後、どのようにVAIOのかじ取りをしていくのだろうか。営業体制、製品展開、パートナー戦略を聞いた。

VAIOのDNAを強みとしてグローバルを視野にビジネス展開

――社長就任から3カ月弱が経過しましたが、手応えはいかがでしょうか。また、中に入られてVAIOの強みについて、改めて感じたことはありますか。

山野 VAIOの社風は一言でいえば自由闊達。私自身、何年も前から居たかような居心地の良さを感じます。社員のみんながよく話を聞いてくれるし、課題に対しても率直に意見を寄せてくれるので、コミュニケーションはうまくいっています。すでに私なりに課題に対する手を打ち始めていますが、その実行も順調に進んでいます。

 VAIOの強みは、ソニー時代から変わらない品質と技術への強いこだわりにつきます。一方、現在は4分の3を法人向けビジネスが占めているものの、一般の方にはまだコンシューマー向け製品のイメージが残っているので、そこは変えていきたいと思います。
 
山野正樹
代表取締役
執行役員社長

――山野社長は、総合商社の出身で、IT業界を中心に多くのグローバル事業を手掛けられました。その経験、知見をどう経営に反映させていきますか。

山野 商社は売り手と買い手をつないでビジネスを創ることを生業としています。私自身、30年以上携わってきたので、ビジネスの勘所と付加価値を生み出すことについては、一日の長があると自負しています。VAIOは小さな会社ですから、さまざまな企業とアライアンスしていくことが、ビジネスを成長させる上で不可欠と考えています。

 もう一つは、グローバル経験を生かすことです。これからのビジネスは世界に目を向けないと淘汰される。前述した品質と技術へのこだわりはDNAのようなものですが、突き詰めすぎるとガラパゴス化する。大多数のユーザーからは、価格と比較した価値を認めてもらえないという方向に陥りがちです。そうならないよう、グローバル市場の価値観やパートナーの意見を取り入れた製品づくりを強化していきたいと考えております。

持続的成長の基盤は戦略、仕組みづくり、組織風土

――具体的な施策についてうかがいます。まず、営業体制の強化策を教えてください。

山野 当社の営業はVAIOの直販とチャネル販売の2本立てで展開しています。法人のお客様を念頭に営業部隊の強化を進めており、ソニーマーケティング様やディストリビューター・リセラー様のお客様のサポートもしっかり行っていきます。人員については、営業全体で30%程度の増員を計画しています。昨年までに拠点も大阪・名古屋・福岡へと拡大。これまで手薄だった西日本での販売体制が整いました。

――営業のやり方も変えていかれますか。

山野 私のミッションは、VAIOの持続的成長の基盤を創っていくことだと社員に話しています。2014年の設立から独り立ちし、安定して収益を出せるようになってきましたが、ソニー時代と比べたスリムダウンで成し遂げた面も強い。これからを見据えた成長投資、成長基盤は脆弱な部分も少なくないため、先を見据えた施策を打っていきます。

 具体的には、しっかりとした成長戦略を描くこと、営業効率を高める仕組みを作ること、そして社員のモチベーションを上げる組織風土を作ることの3点をあげ、それを成し遂げれば、無理をしなくても必ず成長できると言い続けています。

――今年はフラッグシップモデル「VAIO Z」「VAIO Pro Z」という象徴的な製品を発表されましたが、ラインアップ強化など製品戦略を教えてください。

山野 社内では、すでに3年くらい先までを見据えた製品のロードマップを考えています。 まだ時期は明らかにできませんが、近く法人向けに中上位に位置する製品をリリースする予定です。コンシューマー向けにも、新たなユーザー層やニーズの掘り起こしにつながるようなモデルを計画しています。

――昨今、世界的に半導体の供給不足が問題になっていますが、生産への影響は。

山野 難しくなっているのは事実ですが、今のところ当社の製品供給に影響は出ていません。海外メーカーに比べ、絶対的にボリュームが少ないことも有利に働いているようです。すぐにもPCをほしいというお客様のニーズを取り込みたいと思います。

――メイド・イン・ジャパンを謳う海外メーカーも増えていますが、どう差別化されますか。

山野 海外メーカーとは設計思想が根本的に異なります。きょう体をとめるビスの数、徹底した日本製部品の採用に加え、過酷な環境下でのテストを繰り返すことによって信頼性の高さを確保しています。キータッチの静粛性・快適性も特長です。ただし、こだわりは大切ですが、グローバル競争を考えた時、何にこだわるかが重要で、そこを間違えないようにと社内では言っています。

――サービス面での施策はいかがでしょうか。

山野 持続的な成長を考えた時、PC一辺倒では難しいため、PCが使用される環境を想定したソフトやサービスが重要になります。すでに、ソコワク(“そこ”は“ワーク”プレイス)という、Wi-Fiがあれば強固な個体認証でイントラに入れる安全・快適なリモートアクセスサービスを提供しています。高額な閉域網SIMを必要とせず、VPNより使い勝手が良く、エージェントをPCにインストールすることでさまざまな管理が可能になるので、第2、第3のサービスも企画中です。

――最後に、新たなアライアンスなど、パートナー施策について教えてください。

山野 SIerの方々と組んで、彼らのシステム提案にVAIOのPCをパッケージング化して、お客様に提供するというスキームができつつあり、これをさらに拡大していきます。私自身、そうしたビジネスを手掛け、ネットワークも持っているので、今はパートナー先を回って、アライアンスの形を模索しています。ソコワクも現在多くのディストリビューター様やSIer様から引合いをいただいており、今後こうしたパートナー様との協業を加速させ、取り扱いを拡大していきます。