最終日のテーマは「ニューノーマルな働き方を支えるソリューション」。基調講演には早稲田大学大学院早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏が登壇し、「世界の経営学からみるDXへの視座」と題して講演した。

早稲田大学大学院
早稲田大学ビジネススクール教授
入山章栄氏

 冒頭、入山氏が強調したのがデジタルが目的ではなく手段だということ。「DXに取り組む企業は多いが、それ自体は目的ではない。デジタルだけを入れても課題解決の魔法の杖にはならない。また、CX(コーポレートトランスフォーメーション)ありきのDXでないと機能しない」

 CXとは会社全体を変えることだが、日本企業の「失われた30年」の最大の理由は「経路依存性」。つまり、過去の経緯や歴史で決められたさまざまな仕組みにしばられ、時代に合わないからどこか一つ変えようとしても変えられなくなっている。

 「その状況がコロナで一気に強制的に変化しつつあり、かつてないビッグチャンス。第一次の世界デジタル競争に日本は負けたが、第二次の競争(IoT=モノ、IoH=ヒト、IoA=動植物)では日本にも勝ち筋がある」としている。

 次いで、手段としてのDXがもたらす二つの大きな可能性として「デジタルで新しいものを生み出す」「デジタルをインフラにする」があるとした。デジタルで新しいものを生み出すとは、既存リソース+デジタルで新しい顧客を開拓すること、既存顧客にデジタルで新しい価値を提供することだ。

 一方、デジタルをインフラにするとは、イノベーションの本質である「知と知の組み合わせ」。具体的には、できるだけ遠くにある知を幅広く見て(知の探索)、ここが儲かると判断したら徹底して深堀りする(知の深化)。この二つのバランスがうまくとれる企業はイノベーションを起こすことができるという。

 知の探索は無駄や失敗が多く、人でないとできない作業。知の深化は、デジタル(RPA、AI)が代替できる。だからこそ、知の探索に多くの人材を振り向けるべきだと訴えている。

 最後に、入山氏はDXの大前提としての重要な点としてセンスメイキング(腹落ち)理論を挙げた。不確実性の高い現代においては、データなどに基づく未来予測の「正確性」よりも「納得性」を重視すべきで、何のためにDXをやり、その先で何を目指すのかという会社の方向感への共感・腹落ちをトップから全社員までが持たなければならないとした。