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日本IBM、「IBM DXチャレンジ 2021」チャンピオンシップを開催

2022/03/17 09:00

 最新のデジタル・テクノロジーを活用したビジネスアイデアとその事業化プランを競うビジネス開発コンテスト「IBM DXチャレンジ 2021」。その全国大会イベントが2月18日に開催された。17チームによる決勝戦では、各チーム10分の発表時間でプレゼン&デモを実施。開催内容はWeb配信され、最優秀賞にオーイーシー(公共ソリューション開発事業部)の「『ごみ収集×DX』 ごみ収集支援カーナビゲーション」を選出した。

IBMのテクノロジーの活用で、社会・企業のDXをパートナーと共に実現

 日本IBMとIBMパートナーコミュニティである愛徳会が主催する「DXチャレンジ」は、2017年、18年に実施された「Watson Build Challenge」を継承するもので今回で5回目の開催となる。参加企業は、最新のデジタル・テクノロジーやIBM CloudおよびIBMテクノロジーを活用して全く新しいアイデアの新規事業を創出し、その事業化を目指すことで地域社会や業界の発展に貢献することを目的としたコンテストだ。

 日本IBMでは、長年パートナーとの協業に取り組んできたが、特に今回はパートナー戦略を大きく変換、「パートナー・ファーストへの変革」を強く打ち出すとともに、「テクノロジーを活用した共創パートナーモデル」を目指す姿に掲げている。具体的には、IBMテクノロジーをパートナーのビジネスやソリューションに組み込んでもらうことで、社会・企業のDXを、パートナーと共に実現していくというものだ。それだけに、「DXチャレンジ」は、まさにそれを具現化する重要な取り組みの一つとして位置付けられている。

 「DXチャレンジ 2021」は、2021年4月にキックオフ。参加企業には、日本IBMよりDX対応に求められる共創スキルや、アジャイル手法の習得といった人財育成の支援が提供され、約8カ月かけてプロトタイプを作成、プレゼンテーションをするもの。審査員は各地域の愛徳会会長が務めている。なお今回は、地区予選は開催せず、参加全チームの発表資料を「オンライン展示会」で閲覧できるようにした。

 今回のDXチャレンジは、新規アプリ開発だけでなく、パートナーがもつ既存ソリューションのDX化対応など、幅広く、かつビジネスにつながるような内容を目指して開催となった。昨年までは新しいソリューション作りがメインとなっていたが、今年からはIBM iとの連携アプリや既存ソリューションのコンテナ化対応というテーマが加わっている。

 全国大会では、出場17チームが1チーム10分の持ち時間で事前収録の動画と合わせてプレゼンテーションを実施。各地域の愛徳会会長が審査員を務め、ビジネスデザインとしての評価、ビジネスソリューションとしての評価、プレゼンテーション・スキルの評価の3項目について5段階評価により、最終順位を付けて4チームを表彰。最優秀賞にオーイーシー(公共ソリューション開発事業部)を選出した。また、部門賞として、ベストデザイン賞にセイノー情報サービス、ベストソリューション賞に日本電通、ベストプレゼンテーション賞に神戸デジタル・ラボをそれぞれ選出した。

最優秀賞 オーイーシー(公共ソリューション開発事業部)「ごみ収集支援カーナビゲーション」

 最優秀賞に選ばれたオーイーシー(公共ソリューション開発事業部)の「『ごみ収集×DX』 ごみ収集支援カーナビゲーション」は、自治体のごみ収集業務をIoT化し、環境対策への利活用を目指すもの。

 これまで、一般ごみの収集業務では収集ルートを紙で管理、個人のスキルに依存した収集、ステーションの収集漏れ、という三つの大きな課題があった。その解消を目指して、収集ルートをタブレット端末で管理し、収集員のノウハウをデータで共有、未収集箇所をシステムでチェックできるようにすべく開発した。一般のカーナビは、収集場所の設定数やルートに収集場所が無い、ルートを細かく指定できないなど機能に限界があるため、業務用カーナビSDKをもとに、独自のアルゴリズムを組み込むことで課題を解決している。

 実証も進んでおり、DX前は収集前に10もの工程を必要としたが、DX後は半分以下に削減。1ステーション当たり2時間の登録・印刷作業を削減可能となり、月換算で120時間、40万円のコスト削減を達成している。

 今後については「すでに商品化を終えており、22年度4月から実用化する。当社としては、この製品をさまざまなシーンで利用できるものだと確信しており、IBMのビジネスパートナーを通じて、いろいろな会社と共創できることを期待している」と抱負を語る。
 
オーイーシー(公共ソリューション開発事業部)のメンバー
■お問い合わせ先
株式会社オーイーシー
公共営業部(担当:阿部/山本)
TEL:097-537-9555
MAIL:resource@oec.co.jp

ベストビジネスデザイン賞 セイノー情報サービス「AIで物流クライシスを乗り越える」

 ベストビジネスデザイン賞に選ばれたセイノー情報サービス スマート物流推進室の「AIで物流クライシスを乗り越える」は、物流の2024年問題(トラックドライバーの時間外労働の上限規制適用などを背景とした物流危機)を乗り越えるためのソリューション。

 トラック輸送の需給ギャップは年々拡大、2030年に11.4億トン(35.9%)が運べなくなる見通しだ。この危機を乗り越えるには、今まで以上に車両リソースを有効活用する必要があり、それには業界の壁を越えた共同輸配送が鍵となる。

 セイノー情報サービスでは、配送計画と運送会社をひも付けし、AIを利用して仕事量と売上の平準化を実現する配車計画の作成に適用。共同輸配送実現のための社会実証(SIP地域物流)では、集配の積載効率約20%の向上を確認している。

 「人手不足(ドライバー離れ)を食い止めるためには、各運送事業者が公平感を感じられる環境作り(サービス作り)が必須と考え、仕事量と売上を平準化するアイデアを思いついた」という。「公平性」を担保(平準化)するため、「遺伝的アルゴリズム」というAIを利用した最適解を探す手法を採用しているが、これには解(2種類の項目間の組み合わせ結果)を求める道筋を固定する必要がないため、「物流業界に限らず、平準化を必要とする業務の作業負荷軽減を目的としたソリューション提供も検討していく」という。
 
セイノー情報サービスのメンバー

ベストソリューション賞 日本電通「Oresse Vision(オレッセビジョン)」

 ベストソリューション賞に選ばれた日本電通の「Oresse Vision(オレッセビジョン)」は、同社が20年にわたって開発してきた無人受付システムの知見をもとに、インタラクション要素や非接触操作技術をかけ合わせることで生まれた、新しい価値をもつ無人受付システム。

 コンセプトは、デザイン・接触・プロセスからの「解放」で、映像投影(プロジェクションマッピング)によりあらゆるものを受付端末にすることができる。訪問者は、事前に発行されたパターンをスマホに表示して、カメラにかざすと受付ボタンを操作せずに直接、担当者を呼び出せる。パターン認証にはエッジAIカメラを利用、非接触モーションコントローラーによりオブジェクトなどに触れずに操作可能で、呼び出しも受話器を使用せず行える。各システムの連携を行うために、IBMクラウドとNode-REDを利用してデータ送受信の制御を行っている。

 「ユーザーインターフェースの操作にこだわり、どのようにすれば直観的な画面操作を提供できるのか、チームでさまざまな手段を検討した。今回は非接触の無人受付業務を紹介したが、非接触ソリューション市場は拡大を続けていることから、このユーザーインターフェースを活用して、感染対策に役立つシステムの提案をしていきたい」と展望を語る。
 
日本電通のメンバー

ベストプレゼンテーション賞 神戸デジタル・ラボ「ロスso分け 残り物には福がある!」

 ベストプレゼンテーション賞に選ばれた神戸デジタル・ラボの「ロスso分け 残り物には福がある!」は家庭における食品ロスをテーマとしたLINEアプリ。システムは、IBMクラウド上で、IBM WatsonとコンテナのKubernetesを活用、マイクロサービスとして構築している。

 具体的には、各家庭で使いきれなかった食材を持ち寄って登録し、ユーザーの気分や料理の好みも登録する。集まった食材と利用者データを機械学習で分析し、料理人が作れるメニュー中から最適なメニューをAIが提案。使いきれなかった食材が美味しい総菜や弁当としてユーザーの食卓に並ぶという仕組みだ。食材を提供した従業員にはポイントが付与され、ポイントで総菜や弁当の購入もできる。企業という単位を活用し、また地域の飲食店を巻き込むことで、地域の活性化につなげる点にこだわったという。

 「日本の食品ロス量の約半分を占める家庭の食品ロスの中でも、3大食品ロスに含まれる手つかずの食品の廃棄に着目し、使いきれなかった食品を必要とする誰かに利用してもらうマッチングによって、食品ロス削減ができないかと考えた。同時に、私達が家庭での食品ロスをなくす意識を持ち、会社全体でSDGsに取り組む事が必要だと考えアプリ開発に至った」と説明する。まずは、同社が経営する沖縄料理店で実証実験をスタート。最終的には、世の中の企業に向けて展開していく方針だ。
 
神戸デジタル・ラボのメンバー

2月18日の全国大会Webイベントに出場した17チーム(敬称略)

・北信越地区

中橋システム
「Expert-Ns @DXチャレンジ」

・関東地区

日販テクシード
「もっとIBM i」

JBアドバンスト・テクノロジー
IBM i連携「IBM iとクラウドサービスを『繋ぐ』APIエコノミーでお客様のDXを加速させる」

SCSKMinoriソリューションズ
「交通費申請システム(kintone)と会計システム(IBM i)の連携サービス ご紹介」

情報技術開発
コンテナ対応「コンテナ初心者が3か月でOpenShiftのクラスタを構築した話」

ライトウェル
「リモート通話における不適切なコミュニケーション抑止」

JTP、SMSデータテック
「SMART議員」

ラック
「雑談の場を楽しくするチャットボット BaBot」

・東海地区

セイノー情報サービス
コンテナ対応「AI動画解析のエッジ環境コンテナ化」

SBS情報システム
「無人販売所運営・集客支援パッケージ おっくる」

セイノー情報サービス
「AIで物流クライシスを乗り越える」

・関西地区

日本電通
「Oresse Vision(オレッセビジョン)」

神戸デジタル・ラボ
「ロスso分け 残り物には福がある!」

・中四国地区

田中電機工業
「API連携によりIBM iでDXを推進」

ケーオウエイ
「IBM Cloudによるアプリケーションのコンテナ化」

・九州地区

オーイーシー(公共ソリューション開発事業部)
「『ごみ収集×DX』 ごみ収集支援カーナビゲーション」

オーイーシー(DX推進事業部)
「Shitei 職人(師匠)とユーザー(弟子)を結ぶ相互発信型ソリューション」

DXチャレンジから製品化されたアプリも登場

 愛徳会会長で審査委員長の河野靖氏は、「今年は17チームのうち3チームがコンテナ、OpenStack、OpenShiftで、5チームがIBM i連携、9チームが新ソリューションであった。プロトタイプあり、すでに製品化されているソリューションもありということで、審査する側も大変で頭を悩ます内容だった。また、イベント当日の参加メンバーも130人と多く、関心の高さを知ることができた」と語った。

 日本IBMの猿渡光司氏(テクノロジー事業本部パートナー・アライアンス事業本部事業戦略部長)は、「今年も新しい取り組みに参加いただいた全てのパートナー様、イベント運営を支援いただいたパートナー様およびIBMコミュニティ「愛徳会」の皆様に感謝申し上げたい」と述べた。加えて、「当イベントは『Watson Buildチャレンジ』からスタートし、今回で5回目となる。年々パートナー様のスキルが上がってきていることを実感している。ついにはDXチャレンジから製品化されたアプリも出たという連絡も頂戴したり、また今回からの新しい応募部門として単体のアプリ開発だけでなく、パートナー様にはなじみの深いIBM iと新しいアプリとの連携をイメージしたソリューション作りや、既存ソリューションをコンテナ化対応する活動にも前向きに取り組んで頂きましたことを、とても嬉しく思う。現在、市場やお客様の状況も、テクノロジーの変化に伴いIBM自身も変革の真っ只中。この取り組みを通じてパートナー様との新しい価値の共創を継続して参りたい」と総評した。

 猿渡氏が触れたように、19年のコンテストで優勝した情報技術開発(TDI)の聴覚障害者向け支援アプリ「Sound Display」が商品化されるなど、DXチャレンジの成果が具体化している。IBMパートナー各社にとって、日本国内および世界中のIBMエコシステムパートナーとの連携や、販路拡大に向けたお見合いの場が活用できるなど、多くのメリットがあるだけに、次の「DXチャレンジ」にぜひ、参加してはいかがだろうか。

 なお、「DXチャレンジ2022」は今年4月に応募開始する予定だ。応募要項や詳細など詳しくは、以下より問い合わせしてほしい。
 
■DXチャレンジ事務局
dxdojo@jp.ibm.com
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外部リンク

日本IBM=https://www.ibm.com/jp-ja

「DXチャレンジ 2021」=https://www.ibm.com/jp-ja/partnerworld/resources/dxchallenge2021