特別講演では、ITコーディネータ協会会長の野村真実氏が登壇。「今、求められているIT業界の変革とトランスフォーメーション成功の秘訣」をテーマに講演を行った。


　野村氏は、まずデジタルトランスフォーメーション（DX）を「儲ける仕組みを変えること」と定義。IT業界にも、これまでとはまったく違う価値を顧客に提供することが求められていると指摘した。

　では、何を実行すれば企業はDXを達成することができるのか。野村氏は「データとデジタル技術を活用するだけでなく、組織風土を改革し、ビジネスモデルと製品／サービスを変えることによってビジネスプロセスを変革する必要がある」と述べ、顧客価値の増大と競争優位性の獲得が製品／サービスの変革でもたらされることを説明した。

　DX成功の道筋には二つのベクトルがある、と野村氏はいう。一つめのベクトルは新しいビジネスモデルへのチェンジで、成功要因が失敗を許容する「探索」。もう一つのベクトルは最新のITによるビジネスの高度化・効率化で、成功要因がボトルネック改善などの「深化」という。DXはビジネスモデルを変革するための取り組みなので、それを実現するには探索と深化の両方を積み重ねることが必要となる。

　ビジネスモデルの変革を実現したデジタルプラットフォームは、すでにさまざまな業界で実際の業務に使われている。例えば、アパレル業界ではブランド・デザイナー・資材メーカー・パタンナー・縫製・小売りを結ぶ衣服生産プラットフォーム「sitateru CLOUD」で多重構造のコミュニケーションミスを削減する。介護業界では、医療介護連携プラットフォーム「DoctorMate」を使って医者や看護師の慢性的な不足に対処しているという。

　また、ITコーディネータ協会は中小企業庁の「中小企業共通EDI」事業を関係団体と協力して推進している。使いやすいデジタル受発注ネットワークを中小企業に提供することによって、紙やファクスでの発注をなくそうとしている。

　ところが、現実にはDX推進を妨げる要因はたくさん存在する。特別講演で示されたのは「ルール通りに仕事をこなそうとするあまり、デジタル化で組織を良くしていこうといった考えが及ばない」「チームの他のメンバーにどう思われるかが気になって、デジタル化に着手することができない」など、9種類の阻害要因を指摘。「変革を起こすためには、三つのCHA（Chance、Change、Challenge）が重要だ」と述べて、野村氏は講演を締めくくった。