岡山県を中心にさまざまな事業を展開する両備グループ。その中でICT部門を担う両備システムズは、全国の自治体や官公庁、医療機関から民需系まで幅広く事業を手がけている。データセンターやBPOセンター、コールセンター事業も展開しており、さらにAIやフィンテックにまで事業領域を拡大する計画だ。同社が2023年9月に主催するイベント「両備共創DX2023 ～ともに挑む、ともに創る。～」を前に、事業内容や今後の展望などを聞いた。

バス会社の給与計算システムから公共系ビジネスが拡大

　岡山を拠点に事業を展開し、総社員数は8300人を超える両備グループ。その中でICT部門を担うのが、20年にグループ会社5社を合併した両備システムズだ。
 
　売り上げは官公庁、自治体、病院などの公共系が7割だ。小野田吉孝・代表取締役COOは「60年ほど前に富士通のホストコンピューターを導入し、両備バスの給与計算に使用した。これを見た地元の自治体から税金の計算を委託され、そこから公共系の事業が拡大していった」と説明した。

　住民情報の管理や税の計算など基幹システムを構築してきた経験を元に、コンピューターが進化する中で周辺システムも開発してきた。市町村の健康情報管理「健康かるて」は1977年にリリースしたシステムで、現在は全国で約700団体が利用している。また、地図情報を使った固定資産税課税支援システム「マルコポーロ」は約50団体、小中学校向け校務支援システム「校支援」は全国約1200校の導入実績を持つ。

　「地図計算システムは地域による評価特性や土地の歴史などを考慮に入れた設計が必要となるため、ノウハウを持っている企業でないとなかなか対応できない。弊社でもオーダーメイドで対応している。それが評価され、政令市や中核市など多くの自治体にも導入していただいている」（小野田COO）

公共系に強い理由はLGWANにあり

　両備システムズでは、政府のガバメントクラウド導入に伴い、競合に先駆けて「健康かるて」のガバメントクラウドへの移行も進めている。しかしこの事例は一例に過ぎず、真の強みは同社のデータセンターにある。小野田COOは「全国の自治体をつなげる閉域ネットワークLGWAN（Local Government Wide Area Network）に強みを持ち、多くのクラウドベンダーと協業しサービスを展開している。各自治体は自治体標準化によるガバメントクラウドに取り組み、インターネットに接続することで大きな設備投資が必要となるが、LGWANを経由してガバメントクラウドに接続する方法や直接接続する方法でサービスを提供できるか検討を進めているところだ」と紹介した。

　なお、同社はセキュリティ事業にも注力し、ICカードや生体認証による多要素認証ソリューションや、セキュリティ診断やインシデント対応のコンサルティングサービスも提供している。

2030年に売上高500億円を達成するための「共創」

　20年のグループ会社統合からはじまり、小野田COOの指揮によって組織を再編してきた両備システムズは、30年までに売上高500億円（ICT部門連結）を達成することを目標に掲げている。小野田COOは「達成にはビジネスモデルの変革が必須。公共系はLGWAN連携などプラットフォームビジネスを拡充する。クラウドへの移行を進めつつ、ワンストップでサービスを提供する。民需系のビジネスの拡大も必要だ。その一環として、AIによる新たな価値の創出や業務システムの提供、そしてM＆Aやベンチャー投資を行っていく」と述べた。

　AIを使った新規ビジネスでは、為替予測や、内視鏡映像解析による胃がんの診断支援、製造業向けの外観検査などを進めている。業務システムでは、アパレル業界における受発注から生産・販売、在庫管理そして出荷の機能をワンストップにしたシステムの提供を開始した。

　こうした動きの中、同社は23年9月、自治体DXやヘルスケアなどの業務ソリューション、AIをテーマにしたイベント「両備共創DX2023」を開催する。コーポレートブランドコンセプト「ともに挑む、ともに創る。」の通り、ビジネスパートナーやベンチャー企業などとの共創を目標にしたイベントだ。「デジタル田園都市国家構想」における課題を解決するソリューションやAIを活用した医療システムなどを出展し、さらにゲストの登壇も予定している。「技術だけでなく、それを使う人間を深掘りしたイベントにしたい」と小野田COOはコメントした。