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「Zoom Phone」自社導入で約1000万円コストカット 日商エレクトロニクスとZVC JAPANが販売する新しい電話システム

2023/09/20 09:00

 コロナ禍を経て、新たなコミュニケーションインフラを提供するプラットフォームとなったZoom。提供元の米Zoom Video Communicationsの日本法人 ZVC JAPANではクラウドIP電話サービスの「Zoom Phone」によって、従来のテレコミュニケーションの在り方にも変革をもたらそうとしている。その中、日商エレクトロニクスはZoom販売パートナーとしてビジネスを手掛けるだけでなく、自らもZoom Phoneを全社導入し、大きなコストカットに成功した。両社のパートナー関係について、日商エレクトロニクスのコーポレート本部 渡邉仁志本部長と、ZVC JAPANの下垣典弘代表取締役会長兼社長に聞いた。

Zoom PhoneでWebコミュニケーションが進化する

 コロナ禍の数年で、多くのビジネスパーソンの働き方がアップデートされた。その際にテクノロジー面でのイノベーション的存在となったのが、リモートワークを支えるビデオ会議ツールである。中でも、ZVC JAPANが提供する「Zoom Meetings」は、シンプルな操作性と通信時の安定性が高く評価され、幅広いユーザー層を獲得している。

 ZVC JAPANは、近年コールセンター向けの「Zoom Contact Center」や営業向けの「Zoom Revenue Accelerator(旧Zoom IQ for Sales)」といったポイントソリューションも提供し、製品ポートフォリオを広げている。その中でも、Zoomのコンセプト自体を進化させるソリューションとして特に注力しているのが、クラウドPBXサービスの「Zoom Phone」だ。

 Zoom Phoneは現在世界47カ国・地域でサービスを展開し、2019年のリリースからわずか4年で世界550万ライセンスを獲得した。これは業界最速のことである。日本では2021年から正式にサービスを開始した。

 ZoomはこのZoom Phoneによって、あらゆる通信手段を包括するユニファイドコミュニケーション(UC)ツールへと進化する。従来のITとテレコミュニケーションを統合し、Zoomという1つのアプリケーションプラットフォームの中でビデオ会議、電話、チャットなどの機能を提供する。アプリ上のタブを切り替えるだけで各機能を利用でき、ユーザーは複数のデバイスを持ち歩く必要がなくなる。

 しかし、国内の一般企業がコストや品質、効率化を理由にして旧来の固定電話をIPベースへとリプレースするのは難しい。多くの企業では03や06などの市外局番から始まる代表番号(0ABJ番号)を現在でも重視しているからだ。また、電話会社との間で契約年数の縛りもあり、簡単にはリプレースできない。そのため、米国では60%以上がクラウド電話を利用している(ZVC JAPAN調べ)一方、日本では電話環境の多くは旧来のままであるのが現状だ。

 これらの課題を解決すべく、ZVC JAPANはサービス体系を整備し、今年から日本でのZoom Phone販売を本格化した。既に事業を始めて2年が経ち、導入数は数万ライセンス超えという勢いだが、改めてエンタープライズ領域に狙いを定め、パートナー企業と共に本腰を入れていく構えだ。そして、このZoom Phoneを販売するだけでなく自社でも導入し、自らの課題解決とさらなるビジネス展開につなげているのが、日商エレクトロニクスである。

自社の問題解決とビジネス展開を視野にZoom Phoneを全社導入

 日商エレクトロニクスは、「Innovation-Leading Company」として、50余年に渡り世界の最先端ICTを日本のお客様に提供している。同社は、数多くの実績を持つ「ITインフラ」や「ネットワークインフラ」の提供のみならず、「アプリケーション」、「クラウド」、「データ活用」の分野でお客様のデジタルトランスフォーメーションを支援している企業である。しかし、実はコロナを受けて社内でコミュニケーションインフラの個別最適化が進んでしまい多くの課題を抱えていたと、同社 渡邉仁志 コーポレート本部 本部長は明かす。

 「コロナ禍で在宅勤務の必要性が生じたため、約1000人いる社員にスマートフォンと、外出時用のモバイルWi-Fi端末を追加配付した。一人の社員がPC、スマートフォン、モバイルWi-Fiの3端末を保有する状態となり、コストも膨らんでしまった」(渡邉本部長)

 感染拡大を防ぐため、会社方針としてはリモートワークが推奨されていた。しかし、オフィス内の電話システムは従来のままであったため、代表電話の応対のために一部の社員のみが交代で出社しなくてはならず、不平等な状況が続いていた。
 
日商エレクトロニクス
渡邉仁志
コーポレート本部 本部長


 これらの課題を解決すべく、同社では2022年11月にZoom Phoneの全社導入を決定。Zoom Phoneを選定した理由は、(1)Zoom Meetingsと同様に高品質な通話が可能で、企業の電話として十分に利用できる、(2)既に全社的に導入しているZoomのアプリケーションから外線/内線電話の発着信が直接できるため、現場に対する導入のハードルが低い、(3)既存の電話の解約で違約金が発生するが、移行期間中のディスカウントプランを提示してくれた という三つの利点があったからだ。

 また、電話は企業インフラの一つであるため、サービスが停止することなく安定して提供されることも選定にあたって重視した。同社は24時間365日で提供するヘルプデスクサービスを設けているため、万が一電話を利用できない状況に陥ると機会損失や業務停止につながってしまう。Zoomは日本国内の複数のデータセンターで冗長構成が組まれており、高い稼働率を実現していることは大きなポイントだった。

 まず2023年1月に内線のZoom Phoneへの移行を開始した。一定期間は従来の電話サービスも併用しながら、3カ月かけて移行を促した。その際に内線電話の利用方法について社内説明会を実施したが、「以前からZoom Meetingsを活用していたため、社員たちはすぐにZoom Phoneへ適応した」と渡邉本部長は振り返る。また内線電話の移行にあたっては、元々利用していた4桁の内線番号をそのままZoom Phoneで利用できるように設定したため、混乱が起こることなく内線の移行を進められた。

 社員が内線の利用に慣れた後は次のステップとして、050から始まる外線番号を社員個人に対して段階的に付与している。それにあわせて名刺の番号も携帯電話からZoom Phoneの番号に更新した。また、従来の内線網を停止して本社の固定電話機をなくし、外出が少ないバックオフィスの社員に配布していたスマートフォンやモバイルWi-Fiの回収を始めている。スマートフォンや固定電話ではなく、PCで内線・外線の発着信を行う運用にして、外出が多い営業など一部の従業員のみにデータプランのみのスマートフォンを支給する形に変更した。

 その結果、スマートフォンの配付数を1000台から500台に削減でき、モバイルWi-Fiもほぼすべて解約。スマートフォンの回収は、端末の紛失による情報セキュリティ・インシデントの発生リスクを大幅に軽減できる。また、今後3年間でコミュニケーションインフラに関連するコストを約1000万円カットできる見通しだ。さらに、ビデオ会議と電話がシームレスに連携できるようになり、生産性の向上も期待できる。グループ通話や電話からビデオ会議へのワンクリック移行が可能になるほか、Zoomでよく連絡をとるメンバーをお気に入りに登録したり、相手がビデオ会議中か電話中かをステータスで確認できたりするため、コミュニケーションの高度化・効率化も見込める。
 
 

製品を自社導入した経験を活用して拡販に取り組んでいく

 日商エレクトロニクスでは自らの導入経験を今後のZoom Phoneビジネスにつなげていく構えだ。「これまでも海外のスタートアップ企業や最新のITソリューションを発掘して日本に展開するビジネスを手掛けてきた。自分たちでまずは使ってみて、その上で開発元のベンダーと協力し、お客様の課題解決をお手伝いしていくことが重要だと認識している」と、渡邉本部長は同社の事業方針について語る。

 ZVC JAPANがZoomの事業を展開するにあたって欠かせないのが、このような販売パートナーの存在だ。ZVC JAPANの下垣代表取締役も「日本では2018年の発足以来パートナー様に支えられつつ事業を展開している。特に日商エレクトロニクス様は、我々の新しい取り組みに対して常に先駆けて対応してくれる信頼のおけるパートナーだ」と評する。実際に日商エレクトロニクスは、ZVC JAPAN立ち上げの2018年からパートナーとしてビジネスを開始し、Zoom Phoneも含めたZoom全ラインナップをワンストップで提供している。実績も豊富で、これまでに企業向けの契約にて1200社以上に製品を提供し、現在も導入社数を伸ばし続けている。
 
ZVC JAPAN
下垣典弘
代表取締役会長兼社長

 新しいテクノロジーは、いくらメリットを得られるとしても、市場へすぐに受け入れられるわけではない。特に電話市場は長年の慣習があり、なかなか手を付けにくい状況にある。新参のZoom Phoneはスタートアップや柔軟に動ける中小企業ではすぐに採用できても、しがらみや制約が多い中堅・大企業だと採用までの障壁が多い。そこで存在感を発揮するのが、日商エレクトロニクスのような自社での導入経験を持ったパートナー企業だ。

 「Zoom PhoneはオンプレのPBXに比べて運用コストを確実に抑えられるし、通話の品質も良い。ZoomユーザーがZoom Phoneを導入すれば、新たな通信手段を手軽に追加できる。しかし、それらを我々の口から語ると、単なるポジショントークに聞こえてしまう。だからこそ、自社導入していただいたパートナーに、その成果と共に語っていただくことが重要だ。説得力が生まれ、ユーザーも抵抗なく導入できるようになる」(下垣代表取締役)

 このように日本でZoom Phoneビジネスを推進するにあたっては、日商エレクトロニクスのようなパートナーが前面に出て製品をユーザーの元に届け、実際の活用方法や導入時のポイントなどを紹介していく、という拡販戦略が非常に重要になっている。

進化を遂げるZoom製品群と世界で評価されるパートナーモデル

 Zoom製品は、Microsoft TeamsやSlack、Salesforceといった既存のクラウドサービスとの連携を実現している。既存環境を有効活用しながら導入できるため、パートナーとしても提案しやすい商材だ。今後はMicrosoft TeamsやGoogle、Zoomのカレンダーとも連携させ、そこから複数メンバーの日程を調整して自動でミーティングをセットできる「スケジューラー」機能も実装予定である。ZVC JAPANが提唱するUCaaSの世界観がますます広がっていくだろう。

 「スケジューラーのほかにも、AIを活用した新機能の実装も予定している。Zoom Contact CenterやZoom Revenue Accelerator、そしてZoom Phoneと、Zoom製品はあらゆる形でソリューションを広げているので、日商エレクトロニクス様にはぜひそれらも使っていただき、成功体験をユーザーに紹介してほしい」(下垣代表取締役)

 このような販売モデルは海外でも注目されている。製品を直販してきた米国でも、日本の影響を受けて最近はパートナー販売に力を入れるようになってきた。下垣代表取締役は「日本発のパートナーモデルがグローバルに広がってほしいと思っている」と期待を寄せる。

 「Zoomのライセンス販売だけでなく当社の電話スペシャリストがインテグレーション含めて提案できる体制が整っている。社内導入事例をもとに日本企業の働き方改革を支援していく」(渡邉本部長)

電話スペシャリストが明かす、日商エレ入社の理由と Zoom Phone の魅力|Zoom×日商エレクトロニクス( nissho-ele.co.jp )

 
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外部リンク

ZVC JAPAN=https://zoom.us/

日商エレクトロニクス=https://www.nissho-ele.co.jp/