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週刊BCN 特別連載企画<第19回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は

2025/05/01 09:00

週刊BCN 2025年04月28日vol.2057掲載

 ダイワボウ情報システム(DIS)は、国内最大級のディストリビューターとして国内96カ所に拠点を置くことで地域に密着した支援体制を整え、約1万9000社の販売パートナーとともに全国のITビジネスを支えている。少子高齢化への対応などが国全体の課題となり、デジタル社会の実現が急務になる中、ITが果たす役割はこれまで以上に重要になっている。コロナ禍をきっかけにDXの機運が高まる中、各地域の企業などは、どのように動いているのだろうか。DISのエキスパートの声から、国内のIT利活用の実態を探る。

石川エリア
災害復興と防災DXの実現に先進的な取り組み 中高生向けの「IT部活」も

拠点エリア 中部エリア
拠点データ 金沢支店
住所:石川県金沢市昭和町16-1(ヴィサージュ13F)
電話番号:076-263-2461 

 北陸地方の石川県は、2015年に北陸新幹線が金沢まで開業したことで首都圏とのアクセスが大変良くなりました。加賀百万石の歴史と文化を背景に工芸品が多く、加賀友禅、輪島塗、金箔などが有名です。兼六園や21世紀美術館といった観光資源が豊富で、カニや能登牛などのグルメの魅力も相まって、国内外からの多くの観光客でにぎわっています。観光業は地域を支える大きな収入源で、ほかにも農業、水産業、林業、工業などが盛んです。
 
東日本・広域営業本部 関東北信越営業部
金沢支店 伊藤大輔 支店長

 24年1月の能登半島地震、半年後の大規模水害で能登地域は大きな被害を受けました。石川県は、大手通信各社と包括連携協定を締結。災害からの創造的復興と防災DXの実現に向けた先進的な取り組みを行う方針を示しています。

 ITの取り組みとして、中高生を対象とした「金沢IT部活」があります。金沢市と石川県情報システム工業会が、次世代を担う子どもたちを対象にAI、ロボット、IoTなどを活用して課題解決につなげる考え方を身に付けてもらう活動です。授業ではなく放課後の部活動として、自主性を育みながらIT人材を育成しています。自治体では、加賀市が特徴的です。デジタル田園健康特区の認定を受けており、医療データと健康データを連携させ、市民の健康増進に活用する取り組みを進めています。

 伝統工芸品の製造現場でDXを進めている事例もあります。加賀市の製造メーカーは、デジタル技術を取り入れることで「1000回落としても割れない」「環境にやさしい新素材」といった時代のニーズに適した新食器雑貨ブランドを立ち上げました。AIやロボット導入により生産性が飛躍的に向上するなど、成果を上げています。

 現在、石川県は力強く復興を目指しています。その中で、DXによる取り組みが一助となれるよう、支援を続けていくのが大切だと感じています。災害はどこのエリアでも起こり得ることで、石川県は災害に強い地域づくりの先進地になると思います。それがITの活用によってより進んでいくことを願います。
 
金沢を代表する観光地、兼六園。日本三大名園の一つとして知られる。
特に際立つ美しさと静寂を楽しめるの冬の時期。
重い雪から木々の枝を守る伝統技術「雪吊り」が施される。
雪が積もると幾何学的な美しさを見ることができ、多くの観光客が訪れている。

三重エリア
ものづくりで高いIT需要 県は課題解決に向け「みえデジプラン」を推進

拠点エリア 中部エリア
拠点データ 四日市支店
住所:三重県四日市市鵜の森1-3-20(萩ビル5F)
電話番号:059-352-0448

 三重県は、伊勢湾の西側に位置しており南北に長い地形が特徴です。北部は工業や商業が、南部は風光明媚な伊勢志摩の自然環境を生かした観光業が盛んです。北部は県内で人口が最も多い四日市市や有名温泉リゾート施設が、南部には伊勢神宮をはじめとした複数の名所があります。交通面では近畿日本鉄道が南北に通っており、名古屋や大阪からの交通も便利です。
 
西日本営業本部 中部営業部
四日市支店 高橋洋介 支店長

 三重県は全国平均と比べて製造業の割合が高く、ものづくりが盛んな地域です。四日市市近郊には全国的に有名な石油化学コンビナートが集積しており、NAND型フラッシュメモリーなどを製造する大手半導体メーカーの工場があります。鈴鹿市は鈴鹿サーキットの所在地としても有名です。そのため、自動車産業と密接な関係にあり、自動車部品製造が盛んです。そのほかにも松阪市は建築資材メーカーが多数あるなど、地域ごとに異なる強みを持ちます。

 ITの活用では、北部と南部と傾向に違いが見られます。北部は大手製造業ならびに取り引き関係にある地場の協力会社のIT需要が高く、南部は県庁所在地の津市があり官公需が見込めます。三重県では「みえのデジタル社会の形成に向けた戦略推進計画(みえデジプラン)」を推進しており、ITやデータの積極的な活用により、行政運営の効率化や県民の利便性の向上、さまざまな社会課題を解決する取り組みを進めています。こうした施策が展開されることで、三重県が掲げる、県民一人一人の想いを実現しやすくする「あったかいDX」がより進むのを期待します。

 三重県は東海地方と関西地方の文化的な境目にあり、名古屋や大阪のトレンドの影響を受けやすく、人材交流も盛んで、外部の人をあたたかく迎え入れる土地柄です。大学や高等専門学校などの教育機関も充実しているものの、最新のAIやDXを推進する高度人材はほかのエリアと同様に不足しています。人材育成に役立つ教育サービスを拡充していくことで、デジタル社会の成熟度を高めていけると思います。
 
伊勢神宮は主要な神社の一つで、内宮と外宮から成り立っている。
名古屋からのアクセスが良いことなどから、通年で多くの参拝者が訪れる。
近年では訪日外国人観光客の姿も多く見られる。

奈良エリア
行政手続きの電子化や観光CRM活用を推進 起業家への支援体制強化

拠点エリア 関西エリア
拠点データ 関西第1支店
住所:大阪府大阪市北区中之島3-2-4
(中之島フェスティバルタワー・ウエスト10F)
電話番号:06-4707-8138

 奈良県は、古代に都が置かれていた都市として歴史的な文化財が多くあります。東大寺や法隆寺、春日大社といった多くの世界遺産を有し、修学旅行生や訪日外国人など多くの観光客が訪れます。平城京の跡地にある朱雀門ひろばの、広大な敷地や復元された朱雀門は圧倒的な存在感を放っており、初めて訪れる方はスケールの大きさに驚くのではないでしょうか。
 
西日本営業本部 関西営業部
関西第1支店 村田直樹 支店長

 県内の産業構成は、名所が豊富なことから観光業が中心です。製造業も盛んで、食料品やプラスチック製品などが主要な分野となります。農業では柿やイチゴが特産品として有名で、特に柿は奈良県の代表的な農産物として全国的にも高い評価を受けています。

 IT活用では、自治体において先進的な事例が生み出されています。奈良県は、「奈良スーパーアプリ」を導入し、さまざまな行政手続きを一つのプラットフォームで行えるようにしています。例えば、県立高校の出願手続が電子化されており、今後も機能は拡充される予定です。県民がデジタル技術に触れることで、IT活用の敷居が下がるきっかけになると期待しています。また、奈良市では観光CRMアプリ「SHIKA no ASHIATO」によって観光客の行動データを収集してマーケティングに活用し、リピーターを増やすといった取り組みがされています。

 奈良県と奈良市は、起業家を支援し事業成長を加速させるプログラム「NARA STAR PROJECT」を共同で主催しています。奈良県は大阪や京都といった大都市へのアクセスのしやすさから、ベッドタウンとしても栄えています。一方で、多くの若者が都市部に就職するため、人口流出が深刻な課題です。同プログラムにより、県内企業が育ち、産業が盛り上がれば県内に働き手が集まることにつながるでしょう。

 県の面積自体は広いものの、南部には山間部が多いという地理的な特徴もあります。こうした地域に対してはネットワークの整備や保守に人手がかからないクラウドの活用などを積極的に進める必要があると感じています。
 
奈良公園の鹿は、国の天然記念物に指定されており、
多くの人に愛される奈良のシンボルマークの一つだ。
春日大社の神が白い鹿に乗っていたという伝説があることから、
古くから神の使いとして保護されてきた。
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