Special Issue
週刊BCN 特別連載企画<最終回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
2025/05/29 09:00
週刊BCN 2025年05月26日vol.2060掲載
愛知エリア
自動車やエネルギー分野でIT活用が進む 県が中心となり行政での事例も増加
拠点エリア 中部エリア拠点データ 名古屋第1・第2・第3・第4支店
住所:愛知県名古屋市中区錦2-13-30(名古屋伏見ビル2F)
電話番号:052-202-6371(名古屋第1支店)052-202-6372(名古屋第2支店)
052-202-6378(名古屋第3支店)052-202-6381(名古屋第4支店)
愛知県は東海地方の主要都市として栄えてきました。県庁所在地の名古屋市は、中部・東海地方で最大の人口を有しており、経済の中心である一方で、街はコンパクトにまとまっており、少し離れると自然があるため住みやすい地域です。熱田神宮や名古屋城といった名所や、ひつまぶし、みそ煮込みうどん、手羽先などの「名古屋めし」を目当てに多くの観光客が訪れます。

名古屋第1支店 竹下耕平 支店長、名古屋第2支店 水野貴志 支店長
名古屋第3支店 市橋健二 支店長、名古屋第4支店 戸田佳孝 副部長
産業の中心は製造業であり、製造業出荷額は全国1位です。特に豊田市には、日本最大の自動車メーカーの本社があるため自動車関連の企業が多く集まっています。また、農業や水産業も全国上位の出荷額となっており、地域経済を支える柱となっています。
IT活用で取り組みが進んでいるのは、自動車産業、エネルギー業界です。大手自動車メーカーでは、AIやIoT技術を活用した製造プロセスの効率化や品質管理、情報科学に基づいた材料の研究開発などを手掛けています。電力会社では、スマートグリッド技術を導入し、効率的な電力供給を実現しています。しかし、ITシステムと生産管理部門との統合が難しいといったことを理由にデジタル化が遅れている製造業も少なくありません。県内の中小企業においても、デジタルツールの導入による業務効率化に取り組めていない状況があるため、課題を解決できる仕組みづくりが重要だと感じています。
愛知県は、2021~25年度を期間に「あいちDX推進プラン2025」を策定し、デジタル技術の普及とAIやクラウドサービスの活用を推進。行政サービスのデジタル化を進め、オンライン手続きの利便性を向上させる豊田市や、大学や地域企業と連携してスマートシティーモデル事業を展開する春日井市などの事例が生まれています。このほか、24年10月には国内最大規模のスタートアップ拠点「STATION Ai」が名古屋市にオープンしており、新たなイノベーションの創出が期待されます。

おひつのご飯に細かく刻んだウナギのかば焼きを乗せた郷土料理。
薬味や出汁を加えて、様々な食べ方で楽しめるのが特徴で、人気店には長蛇の列ができる。
関西エリア
ITで日本の新たな“極”に スマートシティーの事例広がる
拠点エリア 関西エリア拠点データ 本社
住所:大阪府大阪市北区中之島3-2-4
(中之島フェスティバルタワー・ウエスト10F)
電話番号:06-4707-8000
日本第2の都市である大阪では再開発が加速している。東京一極集中が課題となる中で、大阪を中心とする関西エリアは、新たな”極”としての発展が期待される。その大阪に本社を置くDISは関西でのIT活用の状況をどう捉えているのか。西日本営業本部の吉川晃平・副本部長と難波祐介・関西営業部長に聞いた。
──大阪をはじめとした関西エリアの特徴を教えてください。
吉川 関西エリアは日本における商業の中心地でありながら、歴史や自然を感じるスポットが多数存在し、昨今では外国人観光客もよく目にするようになっています。産業面では、大阪は中小企業による精密機械、化学、金属加工などの製造業が経済の柱の一つとなっています。関西エリアをみると、京都の伝統工芸やハイテク、兵庫の医療・バイオといった産業も特色としてあります。

吉川晃平 副本部長兼中央大阪営業部長
難波 観光で言えば、大阪だけでなく京都や奈良、兵庫、和歌山、滋賀と歴史と自然に優れた資源がある地域がコンパクトにまとまっており、観光客にとって楽しみやすいエリアになっていると感じています。

難波祐介 部長
──中心地である大阪の現状をどう捉えていますか。
吉川 先日開幕した大阪・関西万博や、今後の開業を計画する統合型リゾート(IR)を見据えた再開発が進んでいます。再開発というと、局地的に新しい建物をつくるイメージがありますが、大阪ではエリアを面的に整備し、いわば「街をつくる」ような統合的な動きのように感じています。
例えば、大阪駅北側の「うめきた地区」におけるプロジェクト、「グラングリーン大阪」では、巨大な複合商業施設と約4.5ヘクタールの都市公園が一体となった空間を構築するとともに、鉄道の地下化といった都市基盤整備事業も実施され、2027年の全面開業に向けて、進化を続けている最中です。このグラングリーン大阪には、大企業が本社や関西の拠点を移す動きもあり、ビジネスの新たな中心地にもなりそうです。
──エリアにおけるIT活用の様子はいかがでしょうか。
吉川 こちらも万博をきっかけにスマートシティーの構想が急速に具現化しています。大阪メトロは3月、ほぼ全駅にあたる130駅で顔認証改札サービスを始めました。デジタル乗車券と専用のアプリケーションに登録した顔情報をひも付け、歩くだけで改札を通過できる仕組みです。
また、先述のうめきた地区で先行して再開発が行われた「グランフロント大阪」では、企業、大学、行政が連携する「大阪スマートシティパートナーズフォーラム」を通じて、スマートシティーの実証実験が展開されています。AIカメラによる混雑状況の可視化や、防犯・見守り機能を備えた街路灯などを通じて、都市の利便性や安全性の向上を目指しています。未来型の都市づくりを実現する実証フィールドとして、大阪の都市力とイノベーションが融合した先進事例と言えるでしょう。
難波 教育でもITが広がっています。ICT機器を活用して分野横断的に学びを深めることを目指す 「STEAM教育」の担い手である教員の育成に取り組んでいる大学もあります。GIGAスクール構想は、機器の普及段階から、「それをどう使うか」に主眼が移っており、教員の皆さんをいかにレベルアップできるかという観点に立って取り組みが進んでいる点は特徴的だと思います。
──ITを通じた地域発展に向けてはどう考えますか。
難波 他地域と同様に、デジタル人材をどう育成するかが課題となっています。特に、専門知識やリソースが限られた中小企業では、デジタル化による効率化や生産性向上が進まないため、競争力が低下しています。多くの企業が手軽に導入できるITツールや支援を求めており、支援体制の強化が急務だと考えます。デジタル化を促進するための支援を充実させることも重要になります。
吉川 東京への一極集中が問題視される中で、大阪を核とした関西エリアは、東京に並ぶ存在としてさらに発展する可能性を秘めています。大阪で加速する再開発も、大阪を新たな”極”として成長させるための要素であり、その中でいかにITを取り入れていくかが重要になってきます。私たちも地域発展のために少しでも貢献できるよう努めたいです。

大阪城公園は、園内に約3000本の桜を擁する関西屈指の桜の名所で、花見シーズンには大勢の見物客が訪れる。
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