6月4日の基調講演では、経済産業省 商務情報政策局 サイバーセキュリティ課の小山智・係長が「サイバーセキュリティ対策強化に向けた経済産業省の取組」をテーマに、サイバー攻撃の現状と、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」について講演した。
経済産業省
商務情報政策局 サイバーセキュリティ課 係長
小山 智 氏
近年、ランサムウェア被害の拡大や、生成AIを悪用した攻撃の高度化が進み、事業停止に追い込まれる事案も多数発生している。小山氏は「サイバー攻撃通信は13秒に1回観測されており、もはや日常的な常在リスクになっている」と指摘し、ランサムウェア被害の約6割が中小企業で発生している実態を挙げた。その上で「自社には重要な情報がないから大丈夫という考え方は危険」と警鐘を鳴らす。大企業を狙う足掛かりとして、防御レベルが低い中小企業や取引先を踏み台にするサプライチェーン攻撃が増加しているためだ。
こうした状況下において、大企業などの発注元から取引先へのセキュリティ対策要請が高まっている。しかし、企業ごとに異なるチェックリストが乱立し、委託先にはその複数リストへの対応という負担が発生しており、発注元も評価の妥当性に課題を抱えている、と小山氏は指摘した。
この課題を解決するため、経産省が2026年度末頃に運用開始を目指しているのが、サプライチェーンにおける重要性を踏まえた上で満たすべき各企業の対策を提示しつつ、その対策状況を可視化する仕組み「SCS評価制度」である。評価は★3~★5の3段階で構成され、全てのサプライチェーン企業が最低限求められる専門家確認付き自己評価の★3、標準的に目指すべき対策が求められ、評価機関による第三者評価が必要な★4の検討が進んでいる。「SCS評価制度が普及することで、発注企業は★を共通のものさしとして必要な対策を明示できるようになる」と、その意義を語る。
これまで、中小企業におけるセキュリティ対策には「何をすればよいか分からない」「コストや人材の不足」という課題があった。その課題に対して経産省では、必要な対策がワンパッケージで安価に提供される「サイバーセキュリティお助け隊サービス」や自己宣言制度「SECURITY ACTION」、実践的な手順を示す「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」などの支援を展開。今後はSCS評価制度に向けて、すでにガイドラインの見直しを実施。情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)などの専門家による支援体制整備や、★取得を伴走支援する新しい「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を実証事業のうえ展開していく。
最後にサプライチェーンのセキュリティ強化に向けた対策要請に伴う費用について、受発注者間の対話・協議を通じて、必要に応じて価格交渉の対象となり得ることが説明された。あわせて、双方がパートナーシップに基づいて相互理解を深め、適切な合意形成を図ることの重要性も強調された。