国家試験である「情報処理技術者試験」が2027年度から新制度に移行する。経済産業省はこのほど、試験の新設・再編をはじめ、免除制度や試験方法などに関する具体的な見直し案について発表し、制度改正の方向性を示した。
これまでの試験は、分業を前提とした開発体制に必要な特定の人材像を目指す試験区分体系だった。経済産業省の枝川慶彦・商務情報政策局情報技術利用促進課デジタル人材政策室デジタル人材政策企画調整官は、「土台としての幅広いスキルを身につけることで、AIも活用して新たな価値創造を行う人の目標となる試験区分体系へ見直す」と刷新の狙いを説明した。
経済産業省
枝川慶彦 調整官
ビジネスパーソン向けの試験としては「データマネジメント試験(仮称)」を新設する。AIの利活用において重要となるデータを活用可能な状態に整備、管理するのに必要なスキルを習得し、評価するための試験となる。ITパスポート試験の次のステップの試験として位置付ける。
ITパスポート試験は、DXのマインドやスタンス、データマネジメントの基礎に関する出題追加、AI時代に即した倫理の出題強化など、内容変更を実施する。
また、エンジニア向けの試験としては、既存の応用情報技術者試験と高度試験を統合・再編し、「プロフェッショナルデジタルスキル試験(PD試験)」として新設。試験は「マネジメント領域」「データ・AI領域」「システム領域」の三つの領域に分ける。3試験のうちいずれか一つの試験に合格することで応用情報技術者試験の合格と同等と見なすが、幅広いスキルを身につけるとの観点から、経産省は3試験全ての合格を推奨する。3試験全ての合格者に対しては、「AI時代におけるフルスタックスキル」のデジタル証明発行も検討している。
情報処理技術者試験刷新後の試験区分
(情報処理推進機構のWebサイトから引用)
新試験制度実施以降も現行制度と同等の免除制度を設ける姿勢を示しており、現行の高度試験や情報処理安全確保支援士試験における共通的知識科目の免除要件の枠組みを引き継ぐ。また、経過措置として、現行の応用情報技術者試験、高度試験、情報処理安全確保支援士試験において、免除要件を満たした場合は、一定期間PD試験や情報処理安全確保支援士試験の一部科目の免除を検討している。
試験実施方法についても見直しを図る。26年度からは、ペーパー方式で実施していた応用情報技術者試験と高度試験を、CBT(Computer Based Testing)方式へ移行することで、全ての試験区分でCBT方式の受験が可能になる。加えて、27年度の新制度以降は、これまで情報技術者試験と高度試験で記述式・論述式として実施してきた問題について、基本的には多肢選択式を中心とした出題に改めるという。
新試験制度は、27年度春頃にITパスポート試験、情報セキュリティマネジメント試験、基本情報技術者試験を、27年度夏頃から秋頃にデータマネジメント試験、PD試験、情報処理安全確保支援士試験の開始を予定する。
情報処理推進機構(IPA)では、26年度内を目処に、個人のデジタルスキル情報の蓄積や可視化のほか、スキル情報を労働市場で活用するための仕組みとなる「デジタル人材スキルプラットフォーム」の構築を目指している。保有スキルや情報処理技術者試験の合格情報などをデジタル資格証明として発行し、スキル情報を公的に証明できる機能を備える。試験刷新以前に合格した試験については、デジタル人材スキルプラットフォームに登録することで引き続き活用できるとした。(大向琴音)