6月5日のBCNセッションには、「週刊BCN」編集長の日高彰が「どうなるSI業界?『週刊BCN』上半期紙面から読み解く市場トレンド」と題して講演。週刊BCNの2026年上半期の注目記事を振り返り、今年後半以降のIT市場の展望とSI業界の行方を、主に四つのトピックからひも解いた。
週刊BCN 編集長
日高 彰
第1のトピックは、業界を騒がせているメモリーの価格高騰だ。米国のクラウド事業者、生成AI事業者による生成AIデータセンターへの投資が加熱した。その結果、AI専用メモリー(HBM)に多くの生産リソースが割かれ、昨年10月下旬ごろから一般的なDRAMやSSDの供給不足が顕在化し、価格の大幅な高騰を招いており、その影響はHDDにも波及している。「実需から少し離れた需要による値上りとなると、これは人々のマインドの問題なので、影響がいつまで続くのか正確に見通すことが非常に難しい」と指摘した。この問題は、(EOSに伴う)サーバー更新にもかなりの影響が出始めており、SIerには、ユーザーに対してクラウド移行の提案をはじめ、新たな提供モデルの検討が求められている。
第2のトピックは、「SaaS is Dead」というフレーズだ。ソフトウェアの利用形態は大きな変革期を迎えている。生成AIやAIエージェントが業務を代行するようになると、仕事のかたちが根本的に変わり、AIと対話するだけで業務が完結できるのでSaaSが不要になるというものだ。だが実際は、変化は起こるが一気にSaaSが不要になることはなく、時間をかけて変化していくと予測する。新たなソフトウェアの在り方が問われる中で、今後のかぎとなるのが「データと成果」だと強調。ユーザーが重要な判断をする上でその根拠となるデータを持つベンダー、ユーザーが求める成果を出せるベンダーやSIerが生き残っていけると語った。
第3のトピックは、IT人材不足を背景とした「AI駆動開発」「仕様駆動開発」の台頭だ。あらゆる企業が採用難に直面する中、「旺盛なIT需要に対応するには、やはりAIの手を借りるしかなく、AIを活用した開発は不可避だ」と強調する。また、AIがコードを生成する時代になると、そのシステムの品質の担保にも新たなアプローチが必要となる。仕様書をもとにAIがシステムを構築する「仕様駆動開発」や、顧客の業務課題を解決する上流工程のスキルがより重視されるようになる。
第4のトピックは、26年度中に開始予定の「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」。「SCS評価制度の開始で、製造・流通・金融・インフラなどの業種では、大企業のみならず、中小企業も『星3』『星4』の指標をクリアしていないと、もう取引できない、と言われる時代が到来する可能性が高い」と語る。そこで、SIerには、顧客への制度適合支援や有資格者によるサポートの提供が求められるとした。