基調講演2には、教育テック大学院大学の教育情報・経営リーダーシップ研究科教授の松田孝氏が、「非認知能力を育む個別最適学習とAI」と題し、テクノロジーが高度に発達した未来社会で求められる人間の本質と、生成AIを活用した新しい学習モデルについて解説した。
教育テック大学院大学
教育情報・経営リーダーシップ研究科/教授
松田 孝 氏
松田氏はまず、「教育は、子どもの未来に必要な資質・能力を育む営み」であると強調した上で、現在の子どもたちが社会の中核を担う20年後の姿に触れた。2046年には、AGI(汎用人工知能)やASI(人工超知能)へと進化し、量子コンピューターが日常化する社会が到来すると予測されている。AIやロボティクスが生産性を担う「純粋機械化経済」において生存のための労働が不要になった時、私たちに突き付けられるのは「人間って!?」という根源的な問いだ。
また、人生100年時代の定年後の長い道のりを幸福に生き抜く原動力となるのは、自らの内なる情熱を社会にギフトとして還元する「創造的・利他的な精神」であり、これこそがAIには代替し得ない「非認知能力」だと力説した。
具体的な非認知能力とは、好奇心、自制心、粘り強さ、自己効力感、共感力などを指す。現在、非認知能力を可視化する研究が進む一方で、外側から数値化して管理することは主体性の本質と矛盾する危険性をはらむ。松田氏は、認知能力と非認知能力は「往還(相互作用)」しながら強化し合う関係にあり、知的好奇心などの「認知的動機」と「他者との関係性・身体経験」の積み重ねから育まれると説いた。
この非認知能力を育む上で、かぎとなるのが生成AIを活用した「個別最適な学習モデル」。特に松田氏が注目するのが「授業の振り返り」におけるAI活用だ。子どもが記述した振り返りに対し、AIが肯定的なコメントを生成する。しかし、それをそのまま返すのではなく、「教師と子どもがそのコメントを一緒に読み、話し合う」というひと手間が重要だという。AIの回答をうのみにせず、対話を通じて学びの方向性を確認することで、真に建設的な学びが実現する。
さらに、日々の振り返りの蓄積をAIに継続的に分析させることで、一人一人の非認知能力の傾向や「その子ならではの良さ」を見出すことが可能になる。松田氏は、このAIの分析結果をもとに「信頼できる他者である教師が、共感的な理解を持って子どもに伝える」ことの重要性を説く。教師からのフィードバックにより、子どもは適正な自己評価能力や自己効力感を育み、次の主体的な学びへと向かうことができる。AIの圧倒的な分析力と、教師の共感的な理解をつなぐ自己強化的な循環構造こそが、個別最適学習を実現し、非認知能力を育むAIエコシステムとなると語った。
松田氏は最後に、自身が教鞭をとる教育テック大学院大学の特徴について触れた。教育学、経営学、情報学の学際領域を実践的に学ぶことで、最新のテクノロジーを教育現場に実装する知見を身に付けることができると語った。